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詩集 ミルテの棺

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本詩集「ミルテの棺」は2006年頃シューマンの歌曲に感銘を受けて著したものです。
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記事一覧

【序詩】輝かせよ

君は病める僕を導く光 今は死の床に臥してさえ止まぬラッパの鳴り騒ぎ 君は凍える僕を温める太…

酒井花織
1年前
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【詩】異郷で

雲が逃げて来るよ 雲が逃げて来るよ 風は震え声をあげる 「怖いよ」と こちらへおいで こちら…

酒井花織
1年前
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【詩】風の便り

羊の形をしたひつじ雲は うたたねをしている間にいなくなってしまいました 「雲って消えたり現…

酒井花織
1年前
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【詩】てんとう虫

てんとう虫ってどう書くの? 天登虫って書くのかも ずうっと私の手のひらにいればいいのに 何…

酒井花織
1か月前
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【詩】雲の王国

街が壊れて 驚いたままの私 それきり何も言わなくなったあの子 二人で家を作るの 砂場で 積み…

酒井花織
1年前
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【詩】凍傷

初めて泊まったあなたの部屋 聳え立つ夕暮れの城 けぶる大理石のバスルーム 柔らかいあなたの…

酒井花織
1年前
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【詩】青と白の庭

白妙菊の葉は不思議 真夏の雪の結晶のよう 「老いた人」という名があるそうだけど あなたの庭にもあるかしら アゲラタムの花は不思議 陸に咲く珊瑚のよう 「老いない」という意味らしいけれど 私の庭にもあるかしら 私はあなたがどこにいるのか知らない あなたはあなたがどこにいるか知っている? 私が惹かれてやまぬのは 空の鳥でも籠の鳥でもなく 遠くで冬の訪れを告げる 姿も名前も知らぬ鳥 あの鳥は知るのでしょうか 私が望んだことを 四百円と二百円を出し合って お祭りで買った二つの

【詩】炎の爪

百合の花は食卓に置いてはなりません なぜならあまりに芳しすぎて 食べ物の匂いを消してしまう…

酒井花織
1年前
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【詩】二夜の月

スラム街の一角 おんぼろな部屋は糞尿だらけ まだおしめをつけた子もいる とうに捨てられた子…

酒井花織
1年前
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【詩】すみれは夢む

あなたたちは春の訪れを歌うのが好きね そんなに春は素敵なの? それとも冬が厳しすぎるの? …

酒井花織
1年前
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【詩】ダブルデライト

薄くまぶたを開いた どこにいるのか分からなかった ただあの人が側にいて 窓から射す光か あの…

酒井花織
1年前
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【詩】ノスタルジー

(※アイヒェンドルフ「月夜」の影響の強い作品です。あらかじめご了承ください。) 「あなた…

酒井花織
1年前
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【詩】佇む人

あなたは佇む人 永遠の夜の中ならば眠りなさい あなたは昼の夢を見るでしょう あなたは佇む人…

酒井花織
1年前
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【詩】神々のまどろみ

神話を読むと少しさみしくなる 星はなぜ生まれた 地はなぜこうある 人はなぜ 世界はなぜ 忘れ去られた心の真実 白樺のざわめきは今も語り伝え 純潔の天人花ミルテも知る 今は黄昏も終わり 夜が幕を下ろした 輝く星は彼らの想念 忘れ去られたから夢物語 誰も信じぬから美しい詩文 誰も語ることを禁じない その名で人を殺め穢されることもない 遠い未来までも輝く世界 この世に命ある日まで