読書⑥ 良いものにはコンセプトがある
株本事務所の運営哲学は職人の価値を高める仕事をすることです。
ここにおける職人とは、かたちのあるなしに関わらず「ものづくり」をする人たちです。
ものをつくる以上は、良いものをつくりたいはずです。
私もそうです。
では、なぜ良いものをつくりたいのでしょうか?
この問いかけから出発するのが、「コンセプト」なのです。
今回取り上げるのはこの本
一緒に、ものづくりを巡る「コンセプトワーク」の旅に出ましょう。
コンセプトとは、世界を良くする方法である
あなたが「良いもの」を生み出したとき、あなたと世界には何が起こるのか。
「あなた」が何かすると、「世界」はリアクションをします。
本書のなかでは以下のように「良いもの」を生み出す意義を唱えています。
あなたが世界に向けて「良いもの」をつくる
世界に「良い変化」が起こる
世界からあなたに「良い報酬」が届く
あなたに「良い変化」が起こる
良いものをつくりたい願うことは、世界に変化を起こす源泉になり、それは自分自身に起こる良い変化へと繋がります。
ここで良いものをつくりたいという願いとそれを実現する行動の間にかける橋が「コンセプト」なのです。
橋のかかった世界の向こう側は、今より良くなっているはずです。
コンセプトの挑戦権を得るには?
PoC(Proof of Concept)とは「概念実証」を意味し、新しい概念やアイデア、技術が実現可能かどうかを検証する工程のようです。
私は前職のベンチャー企業で、「PoCを弊社と一緒にやりませんか?」と大手企業に持ちかける法人営業を行っておりました。
また私は起業活動にて、「こんな仮説を持っているのですが、検証するためのリソース支援を受けられませんか?」とベンチャーキャピタルに事業案を持ち込んでいます。
つまり、コンセプトの挑戦をさせてもらえませんか?
と以前も今も言ってきたわけです。
では挑戦させてもらえるコンセプトとは何かを考えてみました。
コンセプト=ビジョン+アイテム
コンセプトは世界を良くする方法ですが、「ではどのように世界を良くするのですか?」「あなたにはそれができるのですか?」と聞かれるわけです。
この問いに答えるために必要になるのが
(A)何をしたいのかというビジョン
(B)何を用いるのかというアイテム
であり、
(A)+(B)=(C)コンセプト
という姿をかたちづくるのです。
(A)ビジョンを抽出する「生きるあなた」
ビジョンはいつも自分のなかにあります。
本書内では、ところどころで読者(や著者や登場人物)をドラゴンクエストのゲーム内の職業「遊び人」に例えています。
しあわせになりたい、したくないことはしたくない
死にたくない、お金がほしい
というシンプルな願いに沿って行動する職業としてそれを描写していますが、「誰のなかにも遊び人の人格がある」ということがポイントなのです。
ドラゴンクエストの職業も固定ではなく、変えることができるのです。
私たちも人格を必要に応じて変えることができます。
ここで話をビジョンに戻します。
ビジョンとはすなわち、遊び人による"素直な願い"なのです。
「あんなこといいな」「できたらいいな」の集合がビジョンとなっていくのです。
このように「あんなこといいな」と思う遊び人の自分こそ、「生きる自分」であり、その声に耳を傾けるのです。
(B)アイテムを獲得するプレゼン
一方でアイテムは自分のなかにはありません。
しかし「生きるあなた」の願いを叶えるには、思っているだけではだめで具体の行動が必要なのです。
この具体が「アイテム」です。
アイテムは外部から得る必要があり、ものによってはお金と交換、あるいは時間と交換します。これで願いを叶えるアイテムを揃えないといけませんが、なかなか大変でしょう。
そこで必要になるのが、自分以外の人を巻き込むためのプレゼンです。
本書では、桃太郎が鬼を倒す話を交えてプレゼンに必要な要素を紹介しています。これは桃太郎があなたに鬼退治への参加を促すピッチです。
鬼を退治する(=その先で世界を良くする)のがビジョンとすると、家来、吉備団子、ここには出てきませんが鬼ヶ島までの交通手段などがアイテムとなります。
桃太郎のピッチでは、あなた(=アイテム「家来」)が必要であり、他のアイテムはこれくらい準備できており、ビジョンが実現できそうであるということを伝えています。
この「ビジョンが実現できそうである」という伝え方が大事なのです。
なぜなら、プレゼンを聞く相手にも遊び人の人格
しあわせになりたい、したくないことはしたくない
死にたくない、お金がほしい
があるためです。
「したくない」ことを「したい」ことに変えさせる必要があり、そのため
「死にたくない」→「勝てるから死なない」
「お金がほしい」→「お金が手に入る」
ということを解像度高く表現するのです。
コンセプト再考:任天堂Wiiが革新的だった理由
コンセプトで人を巻き込む話をしましたが、改めてコンセプトとは「最初は自分しか良いと思っていないもの」なのです。それは「未知の良さ」であり、「隠れた真実」です。
「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」とはゼロから生み出すスタートアップの世界で問われ続けることです。
スタートアップとは、あなたが世界を変えられると、あなた自身が説得できた人たちの集まりです。
任天堂のWiiの話をすると(実はWiiのコンセプトを題材に書かれたのが本書)、当時のゲーム市場はスペックを競い合い、顧客はどんどんコアなゲーマーへと寄っている状況でした。小学生がゲームばかりやっていることに対して「ゲーム脳」というマイナスイメージの言葉が使われる時代でした。
そのなかで、ゲーム人口を拡大するというミッション(1)実現のため、「家族みんなで楽しんでもらう」という切り口(2)を提示し、「お母さんに嫌われないゲーム機」というコンセプトが生まれました。
*この(1)→(2)のコンセプトワークの流れが本書で紹介され、追体験ができます。
テレビゲームは部屋に籠もって1人でやるもの→リビングで家族でやるもの
お母さんに嫌われるもの→お母さんが率先してやりたくなるもの
大切な真実に気がつき、お母さんの説得に成功して世界中を巻き込んだWiiでした。
Wii本体の開発もドラマチックなものですが、そこに至るコンセプトの勝利でした。
*「本体の開発」についてはこちらの動画が短く面白くまとまっており、ためになります。https://youtu.be/SgxtOTdNDoQ?si=C7VUPKsxCMG7NaCS
まとめ:人生通してコンセプト
「あなたの人生の目的は?」と聞かれると意識高そうに感じてしまいます。
なぜならまだそんなに長く生きていないからです。
しかし、遊び人の私の素直な願いと、私だけが気づいているかもしれない真実の仮説はあります。
それに挑み続けることこそ、コンセプトワークで、人生そのものではないでしょうか。
良いものにはコンセプトがあり、良いものをつくろうという意思で、よく生きる。そうして世界に良い変化を起こしながら、自分に良い変化を起こしたい。
自分自身そうありたいと思っていますし、私をアイテムとして使ってくれる、そんな仲間も探します。
いつか、あなたにプレゼンをさせてください。
今回読んだ本
https://amzn.to/3RJDJq0
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