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【エッセイ】他人には他人のものさし

小学校の頃だろうか。
大人から「人にはそれぞれ、ものさしがあるんだよ」と初めて教えられたのは。

すぐにピンとくるほど、私は頭がいい方ではなかった。物理的に物差し=定規を持っている、という意味でないことも、比喩であることもわかったが、深い意味は理解できていなかった。

大人になった今は「ものさし=その人それぞれの価値基準」と解釈している。
それともう少しだけわかったことは、
「人それぞれのものさしがあることを、理解できない人もいる」
ということだ。

私は多くの大人から口酸っぱく教えられたことで、次第に理解できるようになったのだろう。教えてもらえることってありがたい。


ところで私は諺(ことわざ)が好きなのだが、ものさしの概念のように、それぞれ価値基準が違うことを表現した一般知名度の高い諺がパッと浮かばない。
猫に小判、豚に真珠辺りは「知識のない者には価値が分からない」という意味だろう。人それぞれのものさしがある、という解釈はやや曲解である。
「人それぞれ価値観が違う」という考え方自体、多様性が謳われ始めた近年になって形成された、ハイカラでナウい考え方なのかもしれない。だとすれば、ちょうどいい諺がないのも頷ける。

"ものさし"の概念も、あと数百年先すれば形が整って諺になるのだろうか。
来来来世でお目にかかれたら良い。


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