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【読書感想文】死んだ後には続きがあるのか -臨死体験と意識の科学の最前線-

人は死後どうなるのか、ジャーナリストである著者が調査した内容をまとめた一冊。
前半は臨死体験の体験エピソードや、その研究について。
後半の章では「意識」に焦点を当てる。

私は死を怖がっている方の人間だ。死んで何もかもなくなってしまうことが怖い。死後はきっと、そんな恐怖心すらなくなってしまう。
だからこそ幽霊とか、死後の世界とか、輪廻転生とか、そういうものがあれば「死んでも続きがある」とわかるだけでかなり心が軽くなるだろうと思っている。

その一方で、臨死体験には懐疑的であった。
「ただ単に生死の境を彷徨っているときに垣間見た夢なのでは?」と。
この本ではそうした疑問についても触れられている。それによると、臨死体験のエピソードは瀕死の人間が見る夢にしては鮮明で明瞭過ぎている、ということだ。本文ではさらに詳しく言及されている。
また、体験談の中には医学的に脳死状態と判断された状態で、本人が知り得ない情報を知っていたエピソードも紹介されている。

なお宗教によっても「死後どうなるか」の考え方は異なるが、本書で紹介されているエピソードはおおよそキリスト教の考え方に近い。天使や、神のような存在を見たというエピソードが多い。面白いのは、キリスト教を信仰していなくとも天使に出会った人のエピソードがあることだ。
日本人の臨死体験者エピソードには三途の川が出てくることが多いらしいが、その程度しか触れられていない。そこは残念だった。

さまざまなエピソードが紹介されているが、結びの文章で著者は「死後の世界や、臨死体験を信じるかは個人の選択だ」と述べた上で、「意識の存続を仮定して人生を見つめ直せば、生きやすくなるのは確かな気がする」としている。
死後の世界は存在する、と断定することもなく、可能な限り中立の立場を取ろうとする著者の姿勢に誠実さを感じた。

私のように死が怖かったり、「意識と体」の関係を考えるのが好きだったり、臨死体験そのものに興味がある人にオススメできる一冊。

     ***

余談。
藤子・F・不二雄の短編「じじ抜き」や、手塚治虫の『ブッダ』『火の鳥』に登場するエピソードは、臨死体験者のエピソードと重なる部分がある。両先生も多くの文献に触れていることと思うので、臨死体験についてのエピソードも多くご存知だったのかなあ、それが影響しているのかなあ、と。これはただの憶測。

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