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【2022年振り返り】地下アイドルオタクの行動の裏側にある「因子」を見つける

本年も、大変良くオタクできました。

地下アイドルオタクのかべのおくです。


12月28日で今年最後の現場が終わり、やっと「今年も終わりなんだなあ」という実感が湧いてきました。

そこで気になるのは、「今年どれくらいのライブに通って、どれくらいのお金を使ったか?」でしょう。昨年度はオタク確定申告として使用金額の内訳などを公開しました。

しかし、去年と同じことをやるのでは面白くありません。そこで今年は昨年同様の分析以外にも、因子分析を導入したデータの解析を試みました。


本noteは2部構成となっています。第1部はオタク確定申告として、

  • データ収集方法の紹介

  • どれくらいのイベントに行って、チェキは何枚くらい撮ったのか

  • そこに行く過程も含め、どれくらいのお金を落としたのか

などについて分析します。


第2部はオタク因子分析として、収集したデータをもとに

  • 因子分析の方法を紹介

  • 各グループに対する消費行動には、どんな傾向があるのか

  • オタクの行動の裏には、どんな動機があるのか

などについて解析、考察を試みます。


第1部 オタク確定申告

まずはオタク確定申告として、今年度、僕がどれくらいの現場に行って、どんなお金の使い方をしたのかをご紹介します。

しかしライブ現場のお金流れを追う上で問題となるのは、ライブの予定と使ったお金を紐づけるサービスが少ないことです。そこでまずはデータ収集の方法を紹介します。次に、集めたデータの分析と、去年と比べてどう変わったか?についても考察します。


データの記録方法

データ集計にはNotionを用いました。ドキュメント作成やプロジェクト管理など、様々な事ができるワークスペースです。スプレッドシート・Googleドキュメンツの進化版だと思ってください。

Notionを用いる利点は、

  1. フィルター・関数などの機能が使える

  2. スマホ・PCのどちらでも編集できる

  3. ビューを切り替えたり、カスタマイズがしやすい

  4. なんか使ってるとカッコいい

などが挙げられます。


今回は以下のような情報を表にして、各ライブごとに収集しました。

  • ライブの種類(対バン・ワンマン・リリイベ)

  • お目当てのアイドル

  • チケット代

  • チェキ代

  • 交通費(往復)

  • チェキ枚数

データ収集の様子


少し見てもらうと、「あれ、同じ名前のライブがいくつかあるぞ?」ということに気づかれるかもしれません。これは、対バンで複数のアイドルを見た場合には項目を分けているからです。例えば次のような感じにしています。

対バンで複数のアイドルを見た際の記載例

この「TOKYO GIRLS GIRLS」では、4つのアイドル(FES☆TIVE、Jams Collection、chuLa、メイビーME)のライブを見て、チェキを撮りました。これを一緒くたに記載しては、あとから詳細に分析できません。そこで、これらのグループを別々の項目として記載しました。チケット代(8,400円)、交通費(880円)も4グループで均等にかかっているという計算にしてあります。これによって、対バンにおける各グループへの重要度を均等化しているのです。


ちなみに交通費について補足しますと、「遠征の費用はどうしてるの?」と思われるかもしれません。少し遠出するならもちろんのこと、海外遠征なら1回行っただけでも大変なことになります。しかし遠征はライブだけでなく旅行の要素も大きいので、ライブにかかる交通費としては「遠征先の最寄り駅からの交通費」としました。

以上のやり方で集計した結果について見てみましょう。


結果①イベント数・チェキ枚数

まず、2022年に参加したライブ数と、撮ったチェキ枚数についてです。

イベント(重複なし):149現場
チェキ:597枚

月ごとの内訳は以下のとおりです。

イベント数とチェキ数の月ごとの内訳

特筆すべきは、5月と10月の参加イベント数・チェキ数の増加です。5月はゴールデンウィークなどでライブが多く開催されていたこと、10月はグループの遠征のワンマンライブやその前後の対バンに参加したことが要因と考えられます。

また、7・8月の参加イベント数は1・2・3月と変わらないのに、チェキ数は増加しています。これは夏に関ヶ原・TIF・@JAM EXPOなどの大規模フェスが多かったため、1回のイベントで沢山のグループを回れたことが要因でしょう。


結果②グループ別消費割合

次にグループごとの参加イベント数、チェキ枚数を示します。ただしここでは見やすさのため、重複を許して今年10現場以上通ったグループをピックアップしています。

グループごとのイベント数(重複あり)・チェキ枚数

これを見ると、ライブ数・チェキ数ともFES☆TIVEが圧倒的です。しかも1現場あたり3枚程度のチェキを撮っていることが分かります。他のグループは1枚~2枚程度の割合なので、これも少し多めとなっています。とくに5月・12月のCDリリースの時期に数多くのリリースイベントに通ったことが、この数字を牽引していると言えるでしょう。


次に、ライブでの消費金額(チケット代・チェキ代・交通費・合計)についての割合を紹介します。今回は10現場以上参加したグループのみを対象にして、通った回数が10回未満だったグループについては「その他」としてまとめてあります。

チケット代・チェキ代・交通費・合計

これを見ると、チケット代と交通費はおおよそ同じ分布を示していることが分かります。これは今回の集計方法的に、行ったライブ本数とかかった金額が連動しやすいためと言えるでしょう。

ちなみに集計方法が違うのですが、昨年度の合計と見比べてみましょう。全体としては、多少の順位変動はあったもののFES☆TIVEが半分を占める大勢は変わらなかったと言えます。

2021年(左)と2022年(右)の合計額

しかし細かく見ると、アップダンス(ジャムズ・マイディア)、ライズ(アイマイ)など主現場のFES☆TIVEと事務所が近いグループの比率が上がっていることが分かります。オタクはやはり少しでも見知った環境の方が安心します。「○○ちゃん推しのオタクです」みたいな話題が通じることで、同じ事務所のアイドルを推すのはハードルが低いと言えるでしょう。


結果③ライブ1回あたりの消費額

ここまで真面目に分析してくると、もうちょっと色んなことを調べたくなってきます。そこで試しに、ライブ1回あたりの消費額を調べてみました。結果は以下のとおりです。

1イベントあたりの平均消費額

このグラフはイベント参加数が多い順に並んでいます。すると興味深いことに、参加するイベントが多いグループほど1回のライブで消費する金額も多いことが分かります。これはやはり、頻繁に通っている現場の方が居心地が良くなり、チェキの枚数も増えるからと予想できます。


まとめ

以上、2022年のオタク確定申告でした。

今年は149回ライブに参加し、597枚のチェキを撮りました。その半分は主現場であるFES☆TIVEで占められ、この割合は2021年と変化なしでした。一方で同系列のグループの比率も増加し、オタクとしての現場最適化が進んだ一年と言えるでしょう。

今年のデータ集計での問題点は、そのデータを集める目的がイマイチ明確でないことです。第2部での考察も踏まえて、来年はさらに効果的なデータ収集に取り組みたいと思います。


第2部 オタク因子分析

第2部では、第1部で紹介した方法で収集したデータを使った因子分析について紹介します。


そもそも、地下アイドルオタクはDDがほとんどで、色んなアイドルの現場を出入りします。これは各グループの実力が拮抗している、対バンライブなどで無料チェキなどの誘惑がある、そもそも周りもそうやっているので、他現場に誘われることが多いなどの要因があげられるでしょう。

ですが沢山のアイドルを推していても、それぞれのアイドルを推す理由は少しずつ異なるのではないでしょうか?

「曲が好きで、ライブが見たいから」
「事務所が同じで被るから」
「タイプの推しメンがいるから」
「仲のいいオタクがいるから」

等々、オタクがアイドルを推す理由はグループ、オタクによって様々です。 


そして、そういったオタクの思いは「少しでも前で見たいから前方チケットを買う」「推しのためにチェキを回す」などの消費行動の変化として現れると考えられます。

そこで今回は、データの解析手法として代表的な手法である「因子分析」を使って、オタクの行動の裏側にある因子を解き明かすことにしました。


そもそも因子分析とは

予め言っておくと、僕はデータ分析の専門家ではありませんので、数学的な話などはおいといてざっくりとした説明に留めます。

因子分析とは一言でいえば「特徴量に影響を与えている要因を突き止めること」です。沢山の変数を同時に扱う際、それを分かりやすく解釈するのに役立つ手法です。


因子分析によく出てくるのは次のようなテストの点数分析です。この図は以下の記事からお借りしました。

因子分析の一例

この例だと、「算数や理科が得意な人は『理系力』が高いんじゃないか?」「国語や社会が得意な人は『文系力』が高いんじゃないか?」と考えるのは普通なことです。

この「理系力」「文系力」のようなものが数値化できれば、各生徒の特性を理解するのが簡単になるでしょう。それを行うのが因子分析です。


最初に書いたように、オタクがアイドルを推す理由にはいくつかの因子があると予想されます。

  • ライブが見たい

  • メンバーと話したい

  • 対バンで見られたら嬉しい

こういったものを表す因子が、消費データから分かるのではないか?というのが今回のオタク因子分析のきっかけです。


オタク因子分析の方法

今回はPythonのsklearn.decomposition.FactorAnalysisを使って因子分析を実行しました。コードはVtuber「AIcia Solid Project」さんのGitHubを参考にしました。

因子分析にかけたデータは以下6つです。

  • 参加回数

  • チェキ枚数

  • チケ代

  • チェキ代

  • 交通費

  • 総額

それぞれのデータは、ワンマン・対バンごとに別々に集計してあります。なので今回は、合計で3×6 =18個の特徴量について因子分析にかけました。

データを作るにあたっては僕が行ったライブの中から以下の16グループについて集計して利用しました。

FES☆TIVE, chuLa, Jams Collection, ベンジャス!, STAiNY, ネコプラ, Task have Fun, MyDearDarlin', I MY ME MINE, Peel the Apple, 真っ白なキャンバス, #PEXACOA, elsy, W. (ダブルヴィー), パラディーク, #KATACOTO*BANK, FRUITS ZIPPER


結果①各因子とその解釈

それでは出来上がった因子の負荷量とそれぞれの解釈を見ていきましょう。今回は各因子についてプロマックス回転を行った後の因子負荷行列を示します。各列ごとに数値が高いセルが分かるように色分けしてあります。

各因子の負荷量と解釈

それでは各因子の負荷量を見ながら解釈を考えてみましょう。

まず第1因子(緑色)ですがこれはワンマンライブ関連の特徴量に0.5以上と比較的高い負荷量が与えられています。この因子得点が高い場合、ワンマンライブに行き、そこで使ったお金が多いことになります。そこでこれを「ワンマン因子」と名付けます。

アイドルにとって、ワンマンライブは投資費用を回収する場と考えられます。逆に対バンは新規のオタクを獲得するための狩猟場と考えられます。対バンライブでいかに気になってもらってワンマンライブに来てもらえるかがアイドルの生命線というわけです。

オタクからしてみれば、本当に好きなグループ・ライブを見たいグループならばそのグループの魅力に浸れるワンマンライブにいかないわけはありません。つまり、ワンマン因子得点が高い=グループへの帰属が強いという考え方ができます。


次に第2因子(青色)ですが、対バン・ワンマンに関係なくチェキ枚数、チェキ代金に大きな負荷量が与えられています。そこでこれを「チェキ因子」と名付けます。

チェキを沢山撮りたくなるということは、それだけ推しメンと話したいということです。つまりチェキ因子得点が高い=メンバーへの帰属が強いということになるでしょう。


第3因子(橙色)は第1因子と対象的に対バンライブの参加回数やチェキ枚数、交通費などに高い負荷量が与えられています。そこでこれを「対バン因子」と名付けます。

対バンライブに行こうか迷ったとき、「頻繁に通っているわけじゃないんだけど、見れたら嬉しい」となるグループは一定数あると思います。つまり対バン因子得点が高い=対バンに行く動機づけになることになるでしょう。


第4因子(黄色)は、第3因子に近い負荷量を持っています。しかし、対バンのチケ代だけが高い付加量が与えられています。また、チェキの枚数、費用に関しては極めて低い負荷量がついています。つまり「ライブ被ってたし、ついでにチェキ撮っとくか」くらいの感覚ということです。そこでこれを「ついでに因子」と名付けます。

アイドルを推し始めるには、運が重要な要素です。お目当ての1~2個前に出番だったグループを気になって、推し始めるようなことはありませんか?ついでに因子得点が高い=推しグループと被ることが多いと考えられます。


結果②主要グループの因子得点

以上のような負荷量を持った因子を使って各グループの因子得点を計算した結果が以下の通りです。

主要グループの因子得点

まあ、FES☆TIVEがどの数値でも圧倒的なのは仕方ないですね。しかし他のグループは2タイプに分けられそうです。


①ワンマン移行組・・・Jams Collection、ネコプラ、chuLa
ワンマン因子の得点が高いグループはこのタイプです。すでにグループの良さが分かっていて、ワンマンライブに優先的に行くことも多いです。つまり、だいぶ僕がだいぶ囲い込まれているグループと言えるかもしれません。

もっとも、その他の数値には少しばらつきがあります。例えばネコプラは対バン因子得点が高いのは事務所主催の対バン(アナフェス)が非常に多いからです。逆にchuLaは同じ事務所所属でありながら対バン因子得点は高くないのは、ネコプラとアナフェスで被る事が少なく、事務所外の対バンで見ることが多いからです。

また、Jams Collectionはついでに因子得点が高くなっています。これは、ジャムズはFES☆TIVEと事務所の系列が近いため対バンが被りやすいからだと言えるでしょう。


②対バン手探り組・・・My Dear Darlin'、ベンジャス!、I MY ME MINE
これら3グループは分かりやすく同じ傾向が見られます。つまり、ワンマン因子・チェキ因子の得点が低く、対バン因子・ついでに因子の得点が高いことです。

これらのグループはとにかくライブが熱く、見たら絶対に満足できるグループです。このため、対バンで見たいというモチベーションもそこそこ高いうえに、実際かぶっていることも多いように感じます。


まとめ

以上、2022年のオタク現場データを使った因子分析の方法と、その結果から見られる各グループの応援傾向を考察しました。

因子分析の結果、1年間の消費行動からは①ワンマン因子②チェキ因子③対バン因子④ついでに因子の4つが背後に隠されていたことを発見しました。そして、どうやら僕は①主現場②ワンマン移行組③対バン手探り組の3つに分けてオタ活を行っているようだ、ということが分かりました。

とはいえ今回の因子分析も決して満足いく結果とは言えません。例えば僕の場合、あまりにもFES☆TIVEの因子得点が高すぎてその他のグループの得点が霞んでしまうという事態に。本当はお金以外にもっと上手く評価できる特徴量があったのかもしれません。また、実際は各因子同士も関連付けされているように思われます。たとえばチェキ因子得点が高いことと、ワンマン因子が高いことにはある程度の関連性があるのではないでしょうか?本当はもっと解析できることはあったのですが、それはもう本質的に何の意味もなさなくなるので今回は行っていません。

ともあれ、「このグループいるなら対バン行きたいな」とか、逆に「高い金払って対バン行くくらいなら、ワンマン行ったほうがいいな」みたいに、今まで感覚的にしか分かっていなかったことを数値として見える形にできたことは大きな成果でした。この結果を活かして、来年のデータ収集方法などを検討していきたいと思います。


総括

以上、Notionを使って記録したライブ・特典会の行動データを分析・解析しました。

第1部ではオタク確定申告として、収集したデータから得られたグラフ等によって、時期ごと、グループごと、ライブごとの分析を行いました。第2章ではデータ分析の手法である因子分析によって、消費行動に影響を与える因子を分析しました。

結果として、自分自身のオタ活傾向には4つの因子が影響しており、それらの関係によって消費行動には違いが見られることが分かりました。


ここからは、来年に向けての改善点を述べておきます。

今年はメンバーごとのチェキ数については記録していませんでした。「グループごとの傾向が分かるのなら、推しメンごとにも傾向が分かるのでは?」と思ったので、これが分かって、集計できるようにNotionを改良しようと思います。

また、今回は対バンの場合、グループが増えた場合は項目を増やすようにしましたが、これは記録を残すうえでは使いにくいことこの上ありません。今回は「エクセル関数で、できることだけやる」を方針として進めましたが、結果としてデータの加工にかなりの時間がかかってしまいました。来年やるならVBAマクロやGoogle Apps Scriptを使って、Notionでの記録はもう少し手を抜こうと思います。

最後に何より大事になるのは「何のために記録をつけるのか?」です。ただ面倒くさいだけで特に面白くない、では意味がありません。できればNotionがライブレポも兼ねるものとして活用できたらと考えています。


2023年のオタク初めは「Newyear Premium Party 2023」を予定しています。来年も、色んなアイドルたちとの出会いを楽しみに、この日を迎えられたらと思います。


おわりに

まとめます。

オタクは納まっても、noteは納まらない。

以上です。


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