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君にしか見えない|#完成された物語

 家に戻ってきたら、君は確かに君にしか見えないのだけど、何かが違うのだ。違和感を感じる。家をあけていた間に男でもできたのだろうか。いや、裏切るような君じゃないことは分かっている。

「君は本当に君なのか?」
「何を言い出すんですか、本当に。」

 映画で観たことがある。宇宙人に侵略され、憑依される物語。宇宙人は元の人になりきろうとしているのだが、僅かな違和感によってバレてしまう。そう、敬語だ。宇宙人は敬語を使っていた。

「ご主人は、何らかの記憶障害と認知症に掛かっている可能性があります。もうお歳なので、病気と付き合っていくしかないですね。」

 何となく分かっている。この違和感は、僕の脳に原因があるということ。
「私は昔からあなたに対しては、敬語でしたよ。」
「迷惑を掛けるね。変なことを言い出したりして。」
「ええ、気にはしてません。SFの読みすぎじゃないですか。昔から変わってないですよ。」
「君にしか見えないね、本当の僕は。」

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