司法書士にきいた!過払い金請求とみなし弁済の関係

みなし弁済は過払い金の被害が拡大した原因といわれています。現在では改正された法律にはなりますが、過払い金請求をおこなううえで重要なキーワードとなっています。ここでは過払い金請求に詳しい司法書士法人ネオの阿部先生に過払い金請求とみなし弁済の関係について詳しくお聞きしました。

先生。過払い金請求について調べてるとよくでてくるんですが、みなし弁済ってなんでしょうか?

みなし弁済は現在は改正されている法律で、簡単にいうと貸金業者が利息制限法の上限金利を超える金利を取ることを認めてしまう法律だよ。

みなし弁済って改正された法律なんですか?

そう。旧貸金業規制法43条がみなし弁済にあたるものだね。

過去の法律ってことは今は過払い金請求をおこなう人には関係ないことなんですか?

いやいや、みなし弁済は過払い金請求がうまれた原因みたいなものだからね。しっかり関係してくるよ。みなし弁済について詳しく話をしようか。

そもそもみなし弁済とは?


かつて旧貸金業規制法43条にみなし弁済という法制度がありました。
本来、利息制限法の上限を超える利息を取ることは禁止されています。しかし、例外として以下の要件を満たしている場合、利息制限法で定められている上限金利を超える利息を取ることを認めるという制度です。

【みなし弁済の要件】
・貸金業者であること(貸金業登録されている)
・貸金業法17条・18条所定の記載要件を満たしている書面が契約者に交付されていること。ここにおける書面とは、取引が開始する際の契約書や返済をおこなって貸金業者が受け取った際の受領書などのことです。
・借金をした人(以下、債務者)が利息の支払いと認識して任意で利息を支払ったこと
ここにある「任意」とは「自分の意思に基づいて」という意味で無理矢理ではない程度という意味です。

債務者は支払った利息が法律で定められている利息を超えている(以下、制限超過分)かどうかは知らないですし、制限超過分を含めて支払うように請求が来れば当然支払うものと思うでしょう。

また、消費者金融や信販会社などの貸金業者から「制限超過利息は本来無効になりますが支払っていただけますか?」というような説明はもちろんありません。
これを利用し多くの貸金業者は利息制限法に違反する利息を取ってきたのです。みなし弁済があったためグレーゾーン金利の被害が拡大したともいわれています。
しかし、このみなし弁済は平成21年(2009年)の貸金業規制法の改正により撤廃されています。

グレーゾーン金利とは?


グレーゾーン金利とは、利息制限法と出資法で定められた上限金利の差分です。

過払い金請求とみなし弁済の関係


前述にあるみなし弁済が成立していると判断された場合、過払い金請求はできません。しかし、判例によりみなし弁済の成立させる条件は厳格に判断されており、現在はほとんど認められていません。【平成18年(2006年)1月13日最高裁シティズ判決】

消費者金融や信販会社などがみなし弁済を理由に争ってくることがありました。「利息制限法を超える利息は無効。ということを認識した上で任意で支払っていたかどうか」が争点になっていましたが上記にある判例がでたことにより、それ以降みなし弁済の適用が認められることはほぼなくなりました。

最高裁平成19年(2007年)2月13日判決にて「特別な事情がない限り、原則として貸金業者は悪意の受益者と推定する」という判断がくだっており、また 民法704条では「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償責任を負う。」と定められています。これにより、利息制限法の上限を超える利息を受け取っていた消費者金融や信販会社などの貸金業者は「悪意の受益者」と推定され、債務者は5%の利息付きで過払い金請求をおこなえます。

先生・・・悪意の受益者という怖そうな言葉がでてきました!

確かに「悪意」とついていると非常に悪く聞こえるかもしれないね。 ここでいう「悪意」というのは不当利益であることを知っていたかが関わってくるんだ。

知っていたか・知らなかったかで決まってしまうのですか?

難しい話になってくるから、順をおって過払い金請求での悪意の受益者について説明していこうか。

過払い金請求での悪意の受益者とは?


過払い金請求での悪意の受益者とは、利息制限法に違反する無効な金利であることを知りながら利息を得ていた業者のことです。
平成18年(2006年)1月13日最高裁シティズ判決以降、貸金業者のほとんどがみなし弁済の要件を満たしていないという判断がされました。
平成19年(2007年)7月13日 最高裁判決・平成23年(2011年)12月1日 最高裁判決の2つの判決により貸金業者がみなし弁済の要件を【満たしたと認識していた証明】をしない限り悪意の受益者であるということが推定されました。

【貸金業法17条・18条所定の記載要件を満たしている書面が債務者に交付されていること】という条件が最も厳しく、「発行当時、この書面でみなし弁済が適用できる認識だった。」という主張だけでは、要件を【満たしたと認識していた証明】とはいえないとされています。
下記内容において1つでも不備があればみなし弁済の主張は認められないことになります。
・取引を開始する際に交付される契約書に、金利の利率・返済期間と回数・返済方式・貸付金額・契約年月日・貸金業者の商号を1枚に記載したもの(17条)
・返済された金額を受け取った際すぐに受領書を交付していること(18条)
これらの背景から、貸金業者はみなし弁済を適用できない認識がある状態で高金利で貸付したとみなされます。要件を【満たしたと認識していた証明】ができない貸金業者がほとんどで、悪意の受益者であると推定されることが一般となりました。現在では高い確率で悪意の受益者が認められているので、過払い金の発生時期から計算し5%の利息付きで請求できる判决が多くなっています。

みなし弁済は現在では撤廃されていますが過払い金請求に大きく関わっている法律で、この法律があったことによりグレーゾーン金利の被害が拡大したといわれています。現在、みなし弁済の適用はほとんど認められていない状況で消費者金融や信販会社などの貸金業者は「悪意の受益者」と推定され、債務者は5%の利息付きで過払い金請求をおこなえます。
過払い金請求の時効は10年となっており、時効が迫っている方も増えてきていますので早めの行動をおすすめします。法律が関わる難しい内容となりますので、専門的な知識がある司法書士・弁護士に相談して聞いてみるのもいいでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?