TikTokを6時間見続けた話
深夜24時。
日付も変わり、ほとんどの人が眠りにつくであろうこのタイミングで、僕はTikTokを開いた。
「10分くらいゆっくりしようかな。」
TikTokやYouTubeを開く前に多くの人が思うであろう決意を胸に、ソファに寝そべる。
最近のオススメには、サッカー、格闘技、ラップなど、男くさいラインナップが並ぶ。
人が激情してるところなど、感情の動きが見えるコンテンツに引き込まれる。
深夜24時50分。
一瞬であった。
「流石にもう閉じて、お風呂に入ろうかな。」
頭に浮かんだ思いとは裏腹に、左手の親指は上下スクロールを繰り返す。
姿勢を変えず、ただ無心で。
元々同じ動作を繰り返すことは苦手ではない。
千羽鶴、ポケモンの孵化厳選、グレープフルーツの皮むきなど、長時間粘った経験がある。
得意分野にTikTokの上下スクロールを追加すれば、時間を無駄にしてしまったという後悔は消えるのだろうか。
深夜25時50分。
なぜか毎時50分に、画面左上の時刻を確認している。
これは逆にすごく精密な体内時計を持っているのではと嬉しくなる。
こんなことを思うくらいだから、当然判断力などもう残っていない。
「流石にもう閉じて、お風呂に入ろうか。」
2度目の分岐点。
立ち上がってお風呂に行くのか、そのままソファに寝そべっているのか。
画面にはモチベーションの上がる洋楽の和訳が流れている。
これ以上ないくらい準備は整った。
「さあ、いざ立ちあがろう!」
深夜28時。
「終わった。」
またもや昼夜逆転の世界に舞い戻ることを危惧しながらも、画面上では女の子たちが踊っている。
TikTokを開いてからすでに4時間経過。
この位から目が疲れてくるのか、カップルチャンネルやボディラインに磨きをかけた者たちが多く登場するようになる。
改めてTikTokのアルゴリズムの凄さには驚かされる。
「任せてください。ご用意いたします。」
最近世を騒がせている彼のように、全ての意を汲んだ完璧なアテンドだ。
「まだまだ楽しませてもらいますよ。」
眠い目を擦りながらも、さらに深い快楽を求めて潜っていく。
深夜30時。
つまり朝の6時。
こんなに見続けてしまった後悔よりも、何物かわからない達成感を感じている。
カーテンの隙間からは光が差し込んでいる。
島育ちの僕は、幼少期から太陽の光を身体中に浴び、黒光する体を手に入れていた。
そんなアクティブボーイの現在は、ブルーライトと呼ばれるものに、目をギンギンにさせられているというわけだ。
「これは悲しいことなのかい?」
あなたはどう思いますか。
(僕は、TikTokに1日10分というスクリーンタイムを設定しました。)
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