-ライターズバンク- シナリオセンター大阪校体験記!⑥【1から始める脚本家への道のり】
今回はシナリオセンターの『ライターズバンク』という仕組みについて解説します。
ライターズバンクは、シナリオセンターが独自に設けた生徒のデビューをサポートする取り組みです。作家集団、もしくはそれに相当する通信制のクラスに所属していれば登録することが出来ます。
コンテストで賞を取るよりも難易度が低いので、デビューの足掛かりとしては重宝する仕組みです。
お仕事内容
シナリオセンターが営業、もしくは独自のパイプで依頼されたシナリオの案件等を登録者に紹介してくれます。シナリオセンターは仲介者となりますがマージンを取ったりしない非常にクリーンな仕組みです。その代わりにサポートはかなり控えめで、仕事を受注したらクライアントと直にやり取りするのが基本です。
依頼内容の内訳をお教えしたい所ですが、ライターズバンクには守秘義務があり、それを具体的に述べるのは規約違反になるのでざっくりとした内訳だけお話しします。
直近1年間の依頼内容の内訳は、
マンガ原作やYouTube関連が最も多く、次いでドラマや映画の企画の募集、ゲームシナリオ案件、ラジオや音声作品の執筆が同じぐらいの案件数です。
マンガとYouTubeをひとくくりにしたのは、YouTube漫画動画の案件がちょこちょこあるからです。現在の流行ですね。
ゲームシナリオに関してはコンシューマの案件はなく、成人男性向けか女性向けのソシャゲ、またはネイティブゲームが作品がほとんどです。
ドラマや映画はシナリオライターとして花形ですが、毎月チャンスがあるほど案件数は豊富ではないと付記しておきます。
受注の難易度
結論から申し上げますと、実力と運次第です。私の場合でしたら1割ぐらいの確率で受注できるのではないかと思っています。
ライターズバンクの案件はほぼコンペ制です。つまり応募者複数人の中から競争で採用されます。大抵が提出物を求められ、お題に沿ってイチから作ることもあれば、過去の作品、20枚シナリオの提出で間に合うものもあります。
採用確率に最も影響するのが採用人数と応募者数の比率です。人気なうえに応募しやすい案件は倍率数十倍に及ぶことがあります。(最高で100倍近い競争率のものもありました)
受注後の展開
ライターズバンクで案件を請けると、原則採用された人と発注者とで直接やり取りをします。
守秘義務や納期までに仕事を仕上げる責任を負うことになりますが、一般的なビジネスマナーを守っていれば大ごとになることはないでしょう。
シナリオのお仕事では時折報酬未払いに見舞われるということを聞きますが、ライターズバンクではそのような発注者からの求人を受け付けていないと聞いていますので多少は安心です。
トラブルがあった際は迷わず窓口に連絡することが義務付けられています。また仕事が終わった際にも一報するのがよいでしょう。
仕事を終えて作品が世に出ればそれを実績として扱うことが可能です。それを元にシナリオ制作会社やクラウドソーシングサービスへと自分を売り込み、次のチャンスにつなげていくことも出来ます。デビューを果たして未経験者から脱出すると多くの求人やコンペにトライすることが出来るので、シナリオライターとしての活路が一気に開けます。
注意点
ライターズバンクで最も注意すべきなのは守秘義務です。なぜなら機密情報が露営することでクライアントが被害を受けると、ライターズバンクの信用度が落ちるからです。そうなると恐らく、ライターズバンク制度を利用できなくなる可能性もあったかと思います。
特にSNSなどで公に対して『●●を担当しました』と書き込むのはよく考えた方がいいです。少なくともクライアントに許可をもらってからにしましょう。
実績の公表に関しても同様です。BtoB……つまり企業向けの提出書類、職務経歴書やポートフォリオに手掛けた作品を記載する際もクライアントへの許可が必要です。公表可能な時期などにも注意してください。その点を踏まえると『実績公表が可能そうな案件』を受注するのが、応募の際に最もチェックするべきポイントかもしれません。
最後、余談ですが、ライターズバンクのみでシナリオライターとして生計を立てることは不可能です。ライターズバンクから紹介される案件は単価はまちまちですが一本だけでは生活費を稼ぐには全然足りないです。紹介数は月に2、3本なので数をこなすことも出来ません。
シナリオセンターに入学された方の中には、「作家集団になったらどんどんライターズバンクに応募してガシガシ稼いでやるんだ! シナリオライターだけで生活してくんだ!」と思っている方がごく稀にいらっしゃるかもしれませんが、不可能です。ライターズバンクで足掛かりをつかんだ後は地道に営業を重ねることが肝心です。半年は食えないと思って取りかかりましょう。仕事ぶりが認められて人脈が増えていけば、人によっては半年後に毎月安定して仕事が入るようになるかもしれません。
私の場合
私は作家集団に所属してから二か月に1本のペースでライターズバンクの案件に応募していました。ある日、美少女ゲームの案件にて採用いただくことになりました。応募者数はたしか10名足らずで、後に考えると結構狙い目の案件でした。私は第二候補だったらしいのですが、第一候補の方は事情がありクライアント様がお断りされ、私にお鉢が回ってきたという次第でした。
せっかくのチャンスなので熱心に売り込んだところ、当初の予定よりも大幅に上回るお仕事を受注することができました。3か月ほどずっとシナリオを書き続け、およそ50万円ほど頂戴することが出来ました。これ程の金額をいただける案件など他にないので、私は大当たりを引いたのだと思います。
その後、私は許可を得てその実績をポートフォリオに載せ、主にシナリオ制作会社に向けて営業を行いました。有難いことに現在でも使っていただいている会社様をひと月以内に見つけることができ、半年ほど赤字を出しつつも、この程やっと黒字化できる程度には安定して仕事を受注できるようになりました。
私はけっこう運が良かったと思います。もちろん営業努力や仕事ぶりが評価されたのもありますが、初仕事が数十万円レベルの大きな仕事、そして贔屓にしてくれる会社をすぐ見つけることが出来たのはかなり恵まれていると言えるでしょう。もし私と同じようにライターズバンクからデビューしてシナリオライターになろうという方がいらっしゃったら、すぐに仕事が途切れることを想定するべきです。夢を見てはいけません。依頼が増えるまでは副業として活動すべきです。余程辞めたい仕事でない限り、今のお仕事を辞めるのはおススメしません。
次回からはシナリオセンターでの細かな思い出話を語りたいと思います。
私がどのような(カルチャー)スクールライフを送っていたのか、どのような努力や工夫をしてシナリオライターになったのか、ご興味のある稀有な方はぜひ覗いてみてください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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