上達の心構え忘れるべからず

初回では具体的なテクニックではなく、シナリオに携わる際に念頭に置くべきことを書き連ねたいと思います。

■シナリオとは設計書

シナリオは小説などとは違い、書いたものがそのまま商品になるわけではありません。
ゲーム・アニメ・映画・ドラマ・マンガ等のメディアコンテンツを構成するパーツの一部分という位置づけです。
これらのコンテンツは、複数の人が制作に携わります。
またシナリオは、これらのコンテンツの軸となる欠かせないパーツです。
よってシナリオとは、複数の制作関係者の目に通されることを念頭に置かなくてはなりません。

↓(では、どうすればよいのか?)

・誰もが同じように理解できる平滑な表現を心がけること。
・短く書く癖をつけること。
・小説とシナリオの違いをよく理解すること。

↓(具体的にはどう対処すればいいのか?)

・『柱・ト書き・セリフ』の形式で書くことに慣れること。
・長いセリフであっても60文字以内に区切りをつけること。
・辞書をまめに引くこと。言葉の誤用に気をつけること。

※こぼれ話
『言葉の誤用』で私が最初に顧客から指摘されたのは、
"味あう"と書いてしまったことです。
"味わう"が正しいとされています。
普段使っている言葉といえども間違っていることが意外と多いです。
少しでも疑問を持ったなら、辞書で確かめることをおススメします。

■上達の秘訣は批評すること、されること

 シナリオは他人に読んでもらって初めて価値が出ます。
 他人から批評をもらいましょう。
 また、他人の作品を批評することにも慣れておきましょう。
 他人の作品を正しく批評でれば、自分の作品も正しく評価できます。
 俗にいう、『良い書き手は良い読み手』というものです。
 そのためには協力者の存在が不可欠です。

 ↓(どんな協力者が良いのか?)

 一番良いのが、お互いに批評し合える仲間を作ること。
 その次に、師匠を持つこと。
 それができなければ、身近な家族や友人に頼んで読んでもらうこと。
 裏ワザ的手法としては、あなたが楽しんだ作品をブログ等で批評したり、
 ネット上で序文だけ載せて評価してもらうなども効果があるそうです。
 
 ↓(具体的にどう行動すればよいのか?)
 
 ・とにかく書いてみること。書かないと始まらない。

 ・シナリオを書けるようになりたいと決意すること。それをカミングアウトできるようになること。

 ・シナリオ専門校などに通うこと。またはあなたの身近な人やネット上から同好の士を見つけること。

※批評する際の注意点
『批判』ではなく、『尊重』を心がけましょう。
例えば、
×「こういうものはダメだ。こういう風に書け」
〇「こういうものを書きたいなら、こういう風に書く方がいい」

批評する人、される人が、お互い尊重しあうことこそが、協力関係を長持ちさせるコツです。

■シナリオライターには才能がないとなれない?

『シナリオとは設計書』です。
設計書を書くことに才能は必要ありません。
絵で例えるなら、真っすぐな線を引けるようになるように……
まずは基本的なテクニックを身につけるようにしましょう。

↓(具体的にはどうやって身につけるの?)

まずは書くことです。
次に、師匠を見つけて批評してもらってください。
それからシナリオの実用書を読んで、具体的な対処法を調べましょう。
ちなみにシナリオ専門校に通えばそれらすべてを提供してもらえます。
 
※こぼれ話
あくまでも私の主観的な意見になりますが、

「本当に才能がなくてもシナリオを書けるのか?」

という問いかけに関しては、"YES"です。しかしながら、

「才能がなくてもシナリオライターになれるのか?」
 
という問いかけに関しては、"NO"です。
『シナリオを書くことで収入を得ること』がプロであるなら、
その以前のステップにおいて、
たとえ"本気でシナリオを学びたい"と決意した人であっても、
以下のような人たちが脱落していきます。

・本当にセンスがない人(10人中に1,2人)
→同じ失敗を何度指摘してもくり返すような人、
 話の筋が破綻していることに気づかない人のことです。

・プライドが高すぎる人・青すぎる人(10人中に1、2人)
→自分の作品が批評されることに耐えられない人です。
 ヒステリーになって蒸発するか、書けなくなるかが多いです。
 
・投稿しない人(10人中に1、2人)
→デビューするには、作品が人目に触れてもらう必要があります。
 そのための力作を用意できない人です。
 時間を作れない人、挑戦することを恐れている人に多そうです。
 
・他に興味のあることが出来た人(10人に1人)
→ポジティブな諦めの動機です。こういう人が意外と人並み以上にセンスがよかったりします。
 
・環境が恵まれなかった人(10人中2,3人)
→もったいないパターンです。
 プロになれるだけのセンスや力量があっても、仕事・家族・経済状況の都合上でやむなく、シナリオライターになるというリスクを取れない人です。
 
・潰れてしまった人(10人中1人)
→すべての時間、労力、身の回りからの協力、将来設計をつぎ込んでもなれない人はいます。
10年かければなれるかもしれないのに、1,2年でなりたいなどと焦っている人に見受けられます。

以上の主だった落とし穴を乗り越えて、シナリオライターとして初仕事をゲットできるのは、10人中、1人か2人ぐらいだと私は思っています。
初仕事を掴めても、それを継続するのはなお大変。
一生シナリオライターでいられる人は、もっと少ないことでしょう。
シナリオライターはそれだけリスクの高い職業だと、私自身も常々肝に銘じています。

■基礎基本を学ぶのは、一発屋で終わらないため

才能がなくてもシナリオという設計書が引けることは既に述べました。
では才能がなくてもシナリオライターになることは出来るのでしょうか?
デビューの花形は、コンクールなどで入選することです。
ライバルを押しのけて栄誉に輝くには、凡作では厳しいのが事実です。
溢れる才能や個性がかなり重要といえます。
巷には処女作でデビューという大作家もちらほら見かけます。
そういった人に憧れてしまうのは、人情というものです。

ではあなたに才能があれば、デビューが出来れば、基礎基本を学ぶのは不要なのでしょうか?
私は必要なことだと思っています。
なぜなら、デビューすることが才能のあることの証明にはならないこと。
そして同じ作品は二度と書くことができないからです。
プロになれば多種多様な作品を書くことになります。
あなたの好きなように書くことは基本的に出来ません。
そしてシナリオとは水物です。
コンクールに受賞してもたまたまという場合が往々にしてあり得ます。
奇跡が続けて起こることは稀です。
安定して顧客に満足してもらえるシナリオを供給せねばならない中で、『才能』といったあやふやなものに頼り続けることが出来るでしょうか?
仕事で手掛けたシナリオは、会心の作でなくても受け取って貰えます。
それよりも安定して喜んでもらえる作品を作るれることが大切です。
一発屋で終わらないために、『才能』よりもたしかなもの、『基礎基本のテクニック』をしっかり磨くように心がけましょう。


私がシナリオライターとして日銭を稼ぐようになって1年が経ちました。
たまに失敗もありますが、お客様からお褒めのお言葉を頂くことも少なくありません。ひとえに3年間ほどシナリオ専門校で基礎基本を学んだおかげです。
学んだ基礎基本のテクニックを全て使わずともシナリオのお仕事はこなせます。それゆえに使わずにいるテクニックが、このままひっそりと失われていくのではないかと、常々恐れています。
そんな私が学び直しをする機会のためにこの記事を設けることにしました。前項にて述べましたが、シナリオの上達には協力者が必要です。私一人で学習内容を振り返るよりも、この記事を読んでいるあなたに向けて書く方がより学習効果が出るという目論見があります。
この記事を読んでくださるあなたはどんな方なのでしょうか? おそらく、シナリオライターになりたい方だろうと想定しています。本記事が私のみならずあなたの為にも役立てれば幸いです。

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