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-研修科について- シナリオセンター大阪校体験記!④【1から始める脚本家への道のり】

ごぶさたしております。カバかもんです。実に4か月ぶりの更新となってしまいました。お許しください……

今回はシナリオセンター大阪校の研修科に関してお話ししたいと思います。

どんなコース?

基礎科での約3か月間の座学を終えると、研修科というコースに進級できます。1クラスにつき10人強の生徒が講師1人を囲んで研修に励むことになります。

研修の内容とは……

『30の課題にそった20枚シナリオを提出する』

           ↓

『提出されたシナリオを他の生徒が講評する』

           ↓

『講師からの講評をもらう』

というものです。

つまり、あなたの書いたシナリオを他人が読んで意見を言われる。またあなた自身も他人のシナリオに対して的確な意見を述べなくてはならないという、心臓の弱い人にとっては地獄のような特訓が始まります。

研修科に入った当初講師から『良い意見も言うように』と指導されます。誰もが「良いところ、悪いところ、半々に述べよう」と心に置くことでしょうが、だいたいは否定的な意見が多く、時には『賛:否=1:9』でボコボコに打ちのめされることも珍しくありません。

例:私が打ちのめされたレビュー

・「何を聞かされてるのか?」

・「この作者は分かってもらおうという努力を放棄している」

・「ドラマになっていない。主人公が自分のセリフに酔っているだけ」

「怖い……」と尻込みする方もいらっしゃるでしょうし、私もキレそうになったことが何度かありましたが、私はどうしてもシナリオライターになりたかったので必要な『洗礼』だと割り切ることにしました。プロになったらどうせクライアントやアマゾンレビューとかでボロクソに言われるだろうから「予防注射のようなものだ」と……そう思えなかった方の一定数が研修科の教室から去っていきます。

もしかしたら私のクラスだけ血の気が多くて辛辣な意見が多かっただけかもしれません。もっと穏やかで無難な意見を交わすだけのクラスもあるかと思います。しかしながら自分に耳障りの良い意見しか得られなければお金を出してまで他人に読んでもらう値打ちがないと私は思います。ぬるま湯から抜け出して冷たいプロの世界に入る。いきなり胸までつかるとショック死するから準備運動として用意されたコース、それが研修科だと認識するぐらいがちょうどいいと思います。

趣味で書いている人はいるの?

「プロになる前の準備運動」と述べましたが、シナリオセンターには趣味でシナリオを学ぶ方もたくさんいて、研修科でも半分くらいは趣味の方です。趣味の方が多いほどクラスの空気はピリピリしていないように感じます。

「キツイこと言われないクラスがいい」と思われるのも当然かと思います。しかしながらプロになりたければ多少緊張感のあるクラスに所属することを私はお勧めします。私のいたクラスは多分一番血の気の多いクラスだったと思っていますが、私が研修科を卒業して3年もたたない内に4名程が有名な賞を勝ち取ったりシナリオに関連した仕事に就いたりしているので、比較的優秀なクラスであったと思います。レベルの高い人と刺激し合えればシナジーが生まれます。あなたのデビューが早まる可能性が高まります。仲間が見つかるかもしれません。遊びでも、中途半端にやるよりは楽しく過ごせるかと思います。

ちなみにどのクラスがほんわかしているか、どの講師が優秀かなどは一切言及しないでおきます。私も噂程度でしか知りませんので……

課題はどんなもの?

『30の課題にそった……』と申し上げましたが、どのような課題か気になる方もいらっしゃるかと思います。

ですがその詳細を語るのは止しておきます。全て公開するとコンプライアンス的にアウトかもしれませんし、何よりあなたのためにならないと思ったからです。事前に何もかも分かってしまうとつまらないですし、なにより尻込みしてしまって飛び込めなくなっちゃうのが一番良くないことだと思いますから。

ただ、ぼかして紹介させていただきますと……

①②に関しては、魅力的な主人公を作る課題です。なぜ魅力的なのか、10分ほどの尺の脚本でどんな活躍を見せるのかが肝になります。

その後しばらくは、『宿命』とか『不安』といったフワッとした抽象的なテーマとなります。「そのテーマをどう解釈すればいいのか?」悩みますが、そこがポイントです。「そもそも『宿命』とはなんなのか? 『運命』とは違うのか?」などとテーマが持つ言葉の意味について悩んでください。先輩が果敢に挑んで失敗した講評を聞くとあなたも同じ轍を踏まずに済みます。先輩の屍を越えていってください。

10こ目からはシチュエーションにそった話を作るように言われます。例えば、『結婚式』や『雪』などです。すごく分かりやすい課題なので、「なぜこの課題を先にやらせてくれなかったのか」などと文句を言いたくなります。

15こ目ぐらいからは、『一瞬シリーズ』なる癖の強いテーマとなります。ポイントは例えば、クライマックス時に『主人公が怒りを表す一瞬!』などを表現することです。「メロスは激怒した!」みたいに冒頭にテーマを持ってきてはいけません。主人公がクライマックス時に感情を爆発させるために少しずつ要素を積み上げていく、構成力を鍛えるための課題です。(私の勝手な解釈)

20こ目ぐらいからは『職業物』になります。『刑事』や『教師』など非常に分かりやすいトピックです。これを機にあなたの胸に秘めた、好きなドラマに影響された作品を発表してみましょう。「それ〇〇にそっくりやん!」って言われても、大抵好意的に受け取ってもらえます。しかし丸パクリすると叩かれるので、ちゃんとあなたのオリジナル要素を盛り込みましょう。

25こ目ぐらいからは『サスペンスドラマ』などの、これまた分かりやすい課題となります。しかしながら『喜劇』『時代劇』など、人によっては全く触れたことない、当然書いたこともない種類のドラマの脚本に挑戦しなくてはならなくなるので、最後の関門に相応しい課題群となっています。

……私が公言できるものは以上となります。ちなみに課題はどれだけ出来が悪くてもクリアしたことになります。提出できればいいのです。逆にやり直しもききませんので後悔のないように、ほどほどに力の入れ具合で次々と挑んでいきましょう。研修科は長く留まっても得はありません。

どれだけ時間がかかる?

研修科の課題はあなたのペースで提出することができます。私はだいた3週間に一度提出して、約1年半で過程を終えました。平均的なスピードだったと思います。しかしながら中にはいつまでも研修科に居座る人もいますし、毎週課題を提出して半年ほどで次のステップに進む強者もいます。

研修科を終えると『作家集団』という「デビューできたら卒業」的なクラスに進みます。そしてやっとシナリオセンター独自のお仕事斡旋サービスである『ライターズバンク』を使えるようになるので、それを目標に研修科卒業を急ぐ人も少なくありません。

どんな能力が身につく?

研修科の意義は、『他人の批判に晒されること』、『他人の作品を正しくレビューできること』、そして『書いたことないジャンルやテーマの作品を書くこと』にあります。

他人の批判に晒される意義は前述した通り、どうせプロになったら批判されるのでそのために心臓を鍛えてもらえます。

他人の作品を正しくレビューできるようになると、自分の作品を客観的に見れるようになります。研修科では提出した作品を作者が直に読み上げて、即席で意見を述べる必要があるので瞬間的に意見をまとめる力もつきます。また的確に意見を述べるために基礎科で学んだ知識をフル動員することとなりますが、これが基礎科で学んだことを定着させるのに大いに役立ちます。

書いたことのないジャンルやテーマを書いてみることは、シナリオライターとして先細りしない唯一絶対条件ではないかと私は思っています。

シナリオライターとして仕事を始めるとどのような案件が来ても受けるぐらいの心構えがなければ誰からも仕事を頼まれなくなってしまいます。あなたの得意な分野だけを書いてそれをお客さんが欲しがる……とても羨ましい状況ですが、そんな『大先生』になることが出来る人はごくわずかです。幅広い作風やジャンルに対応できる柔軟さを持つことを強くおススメします。

それに苦手だと思っていたジャンルで意外といい評価をもらえたり、自分の新たな才能や活路を見出すこともあります。私にとって初仕事は成人向けのゲームだったのですが、一度もそのようなコンテンツに触れていない中、公募に向けた作品を書くために一本無料体験版をプレイしてから見よう見まねで書いたら採用されたという経緯があります。その試験が簡単だったというわけではなく、「応募者の中で2番目の出来であった。一番候補の人は事情があり採用を見送った」とのことで、私はデビューの足掛かりをつかみました。その後も「絶対できない!」とネガティブになりつつも、研修科で培った「何でも挑戦してみる」という精神に乗っ取ってガンガン書いていったら、完成したゲーム中、1/4ほどが私の文章になりました。それからソーシャルゲーム、YouTube漫画動画、ボイス作品、VTuber関連事業等、様々なコンテンツに携わらせていただきましたが、これだけ幅広く対応できるのは、半分は自分の持って生まれたセンス、半分は研修科で鍛えられた成果だと思っています。そもそも「何でも挑戦してみる」という心構えが出来ていなければあの時デビューすら出来ていませんでした。違う世界線の私は今頃腐っていたかもしれません。

最後に

研修科を駆け足でご紹介させていただきました。

30の課題をこなすのは大変ですが、研修科は私にとってはシナセンで一番楽しい時期でもありました。課題の参考になればと『結婚式』や『裁判』を題材にした映画を休日にノンストップで何本も観ていたときは、「これまで単なる娯楽として消化していたのに今は勉強のために観ているんだ」と実感して不思議と満ち足りた気分になりましたし、研修科で一緒だった人たちとLINEグループ作ってやりとりしたり、一緒に食事したり、近くの学習室借りて意見交換し合ったり、週に一度の学生気分を味わっていました。

しかしながらそのどれもが積極的に学習しようと思ったり、仲間を作ろうと声をかけなければ得ることの出来なかった体験でした。ただ教えてもらうだけの『基礎科』とは違って、自ら動かなければ何も進展しない『研修科』だらこそが、あなたがどれだけ本気でシナリオライターになりたいのかが問われてくるのだと思います。

次回はシナセン生の行き着く先、『作家集団』についてお話しします。今後は何か月もお待たせするつもりはございませんので、どうかお楽しみに。



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