『アップとロング』映像表現の特性・枠を持つということ

 シナリオ(脚本)は様々な媒体で運用される。
 例を挙げるなら、戯曲(演劇)・映画・テレビやラジオのドラマ・アニメ・ゲーム……などだ。
 大別するなら、映像作品であるか、そうでないかによって分けるべきである。
 なぜなら映像化することにより、映像技術による表現が可能になるからだ。
そのうちの一つが、『アップとロング』の手法である。

 『アップとロング』とはいわゆる、『アップショット』、『ロングショット』のことである。
 『アップショット』とはカメラをズームにして、観客にある場面を印象付けたいときに用いられる。
 反面、『ロングショット』とはカメラを引いて、場面全体を観客に見せることだ。
 演劇などの、映像というものの概念すらなかった時代の媒体はすべてロングショットのようなものだ。観客は席から動くことができず、微動だにしない舞台を終始見続けなくてはならない。
 映像による媒体、つまりズーム機能のついたカメラが発明されてから、アップショットという概念が生まれた。それによって作り手側は、観客に注目してもらいたい場所をピンポイントで映し出すことが可能になった。

例:
男がひとり、家族の写真を眺めている。

アップショットの場合
→カメラが回り込んで、写真そのものをうつす。
 男とその家族が仲睦まじく寄り添っている光景。

ロングショットの場合
→視点が固定されているので、カメラが回り込むことはできない。
 観客に男が何の写真を見ているのか知らせるために、
 "セリフとして"、男に「家族は今、どうしているだろうか……」
 などと言わせなければ、伝わらない。

 つまりロングショットの場合であればアップショット……観客に注目してもらいたいところを印象付ける技法が使えないので、何かしらの工夫が必要になってくる。
 シナリオを書く者は、その点をよくわきまえないとならない。


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