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読書遍歴

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自分が読んで、面白かった!ぜひ読んでほしい!という本をできる限りネタバレなしでご紹介しています。
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読書遍歴

我が家の母親によれば「あんたは昔から本が好きだった」そうな 確かに小学生のころから昔話、民話、ポプラ社(多分)の二十面相・ホームズ・ルパンを自宅と学校の図書室で読みまくっていた記憶があります。 そんな自分が中学一年生になったとき母親が勧めてきたのが 角川文庫版 犬神家の一族 面白かったなぁ。そこから横溝正史にドはまりして、新刊が出たぞぉと書店で小躍りして喜ぶ夢を見るほどでした。 今思うと中学一年生に読ませる本ではないと思いますが、この出会いに感謝しつつすでに40年以

骨が語る日本人の歴史 片山一道著 ちくま新書(2015年5月発行)

おおむね、旧石器時代といわれた頃から江戸時代ぐらいまでで発掘された人骨をもとに、日本列島に暮らしていた人々の特徴の変遷をたどっています。 表紙見返しに書かれている概要は次の通り。 本書では著者の考えに基づいて様々な言葉の定義がされています。また学校で習ったような「縄文」と「弥生」の時代わけについても、その根拠がいかに薄弱か、そして地域特性がいかに大きいかを史料などに基づいて解き明かしていきます。 本書は2部構成となっていて、第1部では「日本人の実像を探る」として発掘された

宇宙からいかにヒトは生まれたか 偶然と必然の138億年史 更科功著 新潮選書(2016年2月発行)

専門書もしっかりと並んでいる大きな書店にぶらりと入った時に偶然みかけて、しばし悩んだ後、購入しました。 悩んだ理由は宇宙の誕生や生命の誕生について時系列に沿って語られる書籍はいくつも持っているからですが、購入した理由はこの著者が大好きで、出版されている書籍の大半に目を通しているからでした。 内容については悩んでいた理由のとおり、他の書籍やこの著者の著書にある内容を宇宙誕生から現在までの時系列に並べ直したものでした。 ただ、著者の安易になりすぎないかみくだいた説明と、論理的か

知られざる日本の恐竜文化 金子隆一著 祥伝社新書(2007年8月発行)

古書店で懐かしい名前を見つけてつい購入してしまいました。本書は「恐竜」について書かれているものではなく「恐竜ブームの虚像と実像」について様々な観点から(といっても主にオタク文化から)書かれています。 概略は次の通り。 今(2023年)から考えると16年ほど前の執筆なので、現状とは違うんだろうな、と思いつつ読み始めましたが、なんだか昨日執筆されたような印象をうける内容でした。変わっていないんですね。 執筆時点では「福井県立恐竜博物館」もオープンしていましたので、恐竜の新発見は

特撮の地球科学 古生物学者のスーパー科学考察 芝原暁彦、大内ライダー著 イースト・プレス(2021年4月発行)

映画などで描かれている内容を「事実」としてとらえ、それを様々なジャンルの科学の面から解説するという書物はそれこそ「山のように」存在します。 ブームのきっかけとなったのは「空想科学読本」シリーズだとは思いますが、それ以前にもサブカルチャー的書物の中でコラムとして記載されていたり(といってもその文章は柳田理科雄氏が書いていたりするのですが)、宇宙物理学専門の福江純氏が科学的見地でSF作品(主にアニメかな)を解説したりしていて、結構な歴史があります。 そんな中、「地球科学」という

人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか 中川毅著 講談社ブルーバックス(2017年2月発行)

本書はとあるオーディオブックのサイトで聴き放題に入っていたので何気なく聞いてみて「面白いじゃん」と思ったのであえて購入したものです。 本書は人類が生き延びてきた数万年の気候変動を福井県の湖の湖底に眠る資料が読み解き、気候変動のメカニズムを読み解いています。 新しい知見に満ちた傑作でした。 概略としては次の通り。 本書は全6章から構成されています。 プロローグ──「想定」の限界 ○年に一度という表現と気象災害における「想定外」という言葉について古気候学の博士らしい冷静な表現

ヒトはなぜ死ぬ運命にあるのか 生物の死 4つの仮説 更科功著 新潮選書(2022年5月発行)

本書は新聞の紹介欄で見つけて以来、しばらく探して購入しました。なかなか新潮選書が並んでいる書店が近くにないんですよね。 著者の著作の中には「生物の死」について触れているものもありますが、今回はまっこうから「生物の死」に取り組んだものになっています。 本書では「生物の基本形は不死」であるとしながら、多細胞生物になり体中に複雑な機構を有する我々ヒト(をはじめとする各種生物)が死ぬようになった理由の仮説を4つ紹介しています。 いつものことながら、「断定的に」これが正しいもしくは

殺人鬼探偵の捏造美学 御影瑛路 講談社タイガ(2017年11月発行)

誰でも探偵になれるのがミステリーの良いところですが、よりによって「殺人鬼」が探偵になるとは世も末です。 とはいえ、いくら殺人鬼とは言っても、世間の悪をただしたり、個人的な復讐を果たしたりなどの大義名分があるだろうと読み始めたら、本当に単なる美学を追求するだけの殺人鬼でした。 いいのか、これ。 このあと、「氷鉋清廉」の超越的な推理が披露され、よどみなく解決に向かっていくのですが、それにつれて、事件の怪異性、異常性がさらに明らかになり、結論に至るまでには二重三重のどんでん返しが

阿修羅像のひみつ 興福寺中金堂落慶記念 興福寺監修 朝日新聞出版(2018年8月発行)

本書は2009年に行われた阿修羅像のCTスキャナ撮影の結果を取りまとめたものです。数多くの研究者が9年間かけて取り組んだ研究結果が掲載されています。 構成としては全5章に分けられています。第2章だけは2節に分けられていますが、原則として章ごとに著者が変わります。 読み物というより、各研究者の発表という書籍です。ただ、図版・写真が豊富であることと、監修がしっかりしているのか、各研究者間で重複するような記述が少なく読みやすくなっています。 珍しい話ではないのですが、個人的に阿

古代文明と星空の謎 渡部潤一著 ちくまプリマー新書(2021年8月発行)

いやぁ、書籍の紹介にこんなこと書かれたら、すごく期待して買ってしまうよね。 いやね、嘘ではないんですよ。本当にこの通りのことが書かれているのですが、手に取る前は「お、ついにこれらの謎が解明されたのか」と思ってしまったのですよ。 実際には「古代文明と星空の謎」ではなく「古代文明と星空の関わり」ぐらいの内容でした。 分散しがちな知識を整理するにはとてもためになる本でしたが、当初の(勝手な)期待が大きかったので、ちょっと残念な感じです。 ちなみに目次は次の通り。 ただ、天文

名探偵クマグスの冒険 東郷隆著 清山社文庫(2013年1月発行)

この著者の作品は、昔に「定吉七番シリーズ」にはまっていたのですが、それ以外の作品が、あまり性に合わなかったのでしばらく遠ざかっておりました。 そんな中、某巨大中古本チェーンでこれを見つけ、主人公に魅かれたため購入して読んでみました。 主人公の「クマグス」というのは言わずと知れた「南方熊楠(みなかたくまぐす)」のことです。 あらすじはこんな感じ。 過去の有名人を探偵に仕立てた作品は数多くあり、その大半が「洋行した折に語られなかった物語」に代表されるように、日常生活の「隙間」を

まんが人体の不思議 茨木保著 ちくま新書(2017年5月発行)

新書などでタイトルに「まんが」とついていた場合、単なるイラスト多めだったり、本文とまんがが交互に掲載されていたり、というのをよく見かけますが、本書はしっかりとまんがしていました。 というのも、全編にわたって、それなりにコマ割がある、適度にデフォルメされている、キャラが立っているからです。内容をご紹介しますと また全10章から構成されていて「細胞」「消化器」「血液」「循環器」「呼吸器」「泌尿器」「内分泌器」「神経」「感覚器」「生殖器」と器官別に並んでいます。 それぞれのトピ

てのひら怪談 こっちへおいで 朝宮運河編 ポプラキミノベル(2022年6月発行)

一般的に小学校高学年ぐらいの方々が読む「怖い話」シリーズです。それをなんで50も大きく過ぎているおっさんが読んでいるのかというと、作家陣が「マジ」なんです。 黒川裕子/黒史郎/最東対地/澤村伊智/地図十行路/内藤了/にかいどう青/藤白圭/松原秀行/吉田悠軌 ね。本格的でしょ。 これらの作家たちで計50篇の短い作品が収録されています。多くても3ページ。比較的大きめの字体で書かれているうえ、ひらがなも多いので、掛け値なしの「短い物語」になっています。 子供向け、ということ

ぶたぶたのお引っ越し 矢崎存美著 光文社文庫(2022年5月発行)

1年ぶりの「ぶたぶたさん」です。待ってたよぉ。 今回は全3編です。予告でタイトルを見た時に、今度のぶたぶたさんは「引っ越し業者」か、と思ったのですが、そんなに単純ではありませんでした。 裏表紙のあらすじに3篇の概要が掲載されていましたので引用します。 「あこがれの人」はお互いを思いながらどこかですれ違ってしまう夫婦、「告知事項あり」は田舎をでて東京で一人暮らしをする青年、 「友だちになりたい」はぶたぶたさんの娘と同級生の小学生男子。 必ずしも「引っ越し」と強く結びついて