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【インタビュー】特別支援の先生から抱っことおんぶの専門家に!伝えたいのはいましかできない「幸せ抱っこ」

前職は特別支援学校の先生をしていた中川智子さん。現在は抱っことおんぶの専門家として「抱っこの木」の代表を務めています。

安定した職業を辞めて抱っことおんぶの教室をはじめた背景には、育児で苦労した経験があったからでした。

「子育て中の抱っこの悩みで、ツラい思いをするお母さんを1人でも減らしたい。孤独な子育てにならないよう、寄り添いたい」

そんな抱っこを通して伝えたい強い想いや、「抱っこの木」をオープンした経緯についてうかがいました。

プロフィール
中川 智子(なかがわ ともこ)
出産前は特別支援学校の教員として勤めるも、自身の子育ての経験から抱っことおんぶの専門家として、徳島の抱っこ紐教室【抱っこの木】をオープンする。試した抱っこ紐は80種類。生粋の抱っこ紐マニア。ベビーウェアリングコンサルタントの資格をもち、ママ防災士としても活動中。6歳と4歳の姉妹を育てるお母さん。
インスタグラム:https://www.instagram.com/tomoko_dakkonoki/
公式サイト:https://dakkonoki.com/


娘の抱っこがツラい

出典:抱っこの木公式サイト

ーー現在、6歳と4歳になる娘さんを育てていますが、赤ちゃん時代のツラかったエピソードを教えてください。

上の子が赤ちゃんのとき、とにかく寝なくて大変でした。抱っこをして、1回の寝かしつけに30分~1時間、それを1日7回近くやっていたこともありました。

そこまでしても布団においたら起きてしまったり、15分しか寝てくれなかったり……。そんな日々が続きました。

これでは身がもたない!と感じ、抱っこ以外での寝かしつけも試しました。生後5か月くらいまでは上手くいっていたのですが、6か月を過ぎたあたりで崩れてしまって。そのころが一番ツラかったです。

ーー寝んねが崩れた原因で思い当たることはありますか?

いま思えば、上の子が生後6か月のころに生理が再開したのがきっかけではないかなと思います。問題なく飲めていた母乳を、なぜか完全拒否されてしまいました。

あとから知ったのですが、生理中は母乳の味が変わってしまうみたいなんです。気づかない赤ちゃんもいますが、上の子は敏感な子だったので。

あと、「メンタルリープ」という、赤ちゃんの成長過程で定期的に起きる「ぐずり期」の時期も重なっていたのではないかなと思っています。

でも当時はそんなことがあるなんて、まったく知りませんでした。

1人の時間も取れず、どうにもならない状況に疲れ果ててしまいました。生理再開の女性ホルモンの変化にも心身がついていかず、とうとう上の子と一緒に体調を崩してしまって。

しばらく実家へ里帰りをさせてもらいましたね。

ーーそれはすごくツラかったと思います。月日を重ねていくうちに、変化はありましたか?

抱っこ紐をだすと「寝かされる!」と感じるのか、余計に泣くようになりました。

「寝なくていいよ」となだめながら、近所をぐるぐる歩きましたね。雨の日も雪の日も、ひたすらおんぶで散歩していました。

夜は7時~8時に寝ていたのですが、30分後くらいに必ずギャン泣きで起きるんです。そこから3時間はなにをしても寝てくれなかった。

ご飯やお風呂の時間を変えてみても、結果は変わりません。理由もわからなくて。夫もいっしょに対策を考えてくれましたが、夫婦2人で対応してもキツすぎた数か月でした。

とにかく、寝かしつけと抱っこがツラかったです。上の子を「かわいいなぁ」と思いながら抱っこをしたことが、ほとんどなかったですね。

ベビーラップとの出会い

出典:抱っこの木公式サイト

ーー当時からベビーラップの存在は知っていたのですか?

はい、自分が楽になりたい一心から、身体にあう抱っこ紐をネットで探しまくっていたときに知りました。とにかく肩と腰がツラかったので……。慢性的な身体の痛みって、心の余裕も奪っていくものなんですよ。

それでせっかく授かった娘にもイライラして、当たってしまうことも多くなっていました。どうにかして身体の負担を減らしたかったんです。

ですが、買うのをためらっていました。ちょうど上の子が1歳半、抱っこ紐もそろそろ卒業……という時期でした。

ネットの口コミを見ていると、「練習が必要、使いこなせなかった」といったネガティブなものが多かったのも理由の1つです。

当時は使い方を教えてくれる人も徳島にはいませんでしたし、県外まで習いに行く体力も気力もありませんでした。

でも、下の子を妊娠したときにいろいろ調べていたら、ベビーラップは自分の身体だけでなく赤ちゃんにもいい影響があることを知りました。

これはもう、「絶対に使いたい!」って思ったんです。

ーー赤ちゃんにも、いい影響があるのですね。具体的には、どのようないい影響がありますか?

ベビーラップは、1枚の布を引き締めて微調整ができます。大人と赤ちゃん両方の身体にフィットした、負担の少ない理想的な姿勢がとれます。
「究極の抱っこ紐」ともよばれているんですよ。

股関節をはじめ、赤ちゃんの身体はまだやわらかく未熟です。健全な発達を促すためにも、発達段階に応じた姿勢で抱っこをしてあげることは、とても重要だと考えられているんです。

また、赤ちゃんの身体全体を布でピタッと包みこめるので、赤ちゃんもリラックスできます。気持ち良くなって寝てしまう赤ちゃんもすごく多いんです。

お母さんの抱っこで安心できたら、それが信頼となって親子間の絆を深める土台になり、赤ちゃんの心も育んでくれます。気持ちが通じあい、お互いの温もりも感じあえる。そんな抱っこができたら、すごく幸せですよね。

また、ベビーラップには対象年齢や体重制限がなく、大人にも使えます。実際に、夫をおんぶしたこともあるんですよ(笑)
それほどしっかりしているんです。

ーーご主人をおんぶできるんですか?それはすごいですね!

そうなんです(笑)
耐久性が高く、避難やケガ人の搬送にも活用できるので、災害時にもおすすめです。でもそれ以上に、大きくなった上の子も、抱っこできるのが大きいと思いました。

上の子が赤ちゃんのときは、抱っこも寝かしつけもツラくて、「もう抱っこはしたくない」と思っていました。でも、そんな風に思う自分は母親失格だと、すごく自分を責めていたんです。

そんな真っ黒な思い出のまま、上の子との抱っこを終わらせたくなかった。

下の子が生まれたらきっと赤ちゃん返りをするだろうし、我慢をさせることも増える。そんなとき、少しでも甘えたい気持ちに応えられるよう、いまからでも目いっぱい抱っこをしてあげたいと思ったんです。

「私にしかできないことがある!」抱っことおんぶの専門家へ

出典:抱っこの木公式サイト

ーー中川さんは特別支援学校の先生だったそうですね。安定した職業を辞めて、抱っことおんぶの教室をはじめたのはなぜですか?

「私にしかできないことがある!」そう思ったからです。

私以外にも、抱っこ紐で悩んでいるお母さんが予想以上に多くて。最初の選び方からはじまり、使い方、身体にかかる負担のツラさまで、たくさんのお悩みの声を実際に聞いてきました。

売り場には大手メーカーの抱っこ紐しか置いていなかったり、他県に比べると試着できるメーカーも少なかったりで、選択の幅がすごくせまいと感じていて。

まずは、こんなに楽に抱っこができるベビーラップの魅力を、実際に体験してもらいたいと思いました。過去の私のように「ハードルが高い、難しそう」と思っているお母さんに使ってもらって、選択肢の1つとして提供できるような場所を作りたかったんです。

多くの抱っこ紐を知って、お母さんが使いやすく快適だと思う抱っこ紐を選べばいいと思うから。選ぶのはお母さんなんです。

私も、3か月の下の子を連れて大阪まで習いに行きました。そのときの先生がとても丁寧に教えてくださって。巻けば巻くほど上達していくのがわかるんです。

育児って、達成感を味わうことが少ないですよね。毎日同じことの繰り返しで。でも、ベビーラップを使いはじめてから、日々やりがいや楽しさを感じ、自己肯定感が上がりました。「私、上手くなってきた!」って思うと、嬉しくてしかたがなかったんです。

親子で快適な抱っこができて、お母さんにも自信がつく!そんな経験を、1人でも多くのお母さんにしてほしいと思いました。

ーー中川さんから、並々ならぬベビーラップへの愛を感じます!

これだけベビーラップ愛を語ってしまったら、ベビーラップだけをおすすめする人と勘違いされそうですが(笑)そうではないんです。

私たちベビーウェアリングコンサルタントは、特定のメーカーやアイテムに偏ることはありません。中立的な立場で、目の前の親子のニーズを最優先にアイテムや使い方を提案する、「抱っことおんぶの専門家」です。

私にあっていたのはベビーラップでしたが、どの抱っこ紐が一番しっくりくるのかは1人ひとりちがいますから。

ただ、ベビーラップの体感を知っているからこそ、わかることも多いんです。

ベビーラップ以外の簡易的な抱っこ紐でも、体格にあうものを選んだり、少しだけ使い方のコツを覚えたりすると、ツラい抱っこが劇的に快適になるのを誰よりも知っています。

目の前の親子にぴったりの抱っこを提案したいからこそ、いままで80種類以上の抱っこ紐を娘たちと実際に試して、各メーカーの特徴や使い心地を研究してきました。
まさに「抱っこ紐マニア」ですね(笑)

ーー特別支援学校の先生をしていた経験からも、思うところはありましたか?

抱っこと発達の関係に気づいてからは、発達支援の必要なお子さんにも、支援学校に入学する前の赤ちゃんのころから関わりたいと考えるようになりました。

幼いころはまだ診断のついていない場合もあり、障害特性からくる過敏さや特性が、育てにくさにつながることもあると思います。だからこそ、悩んでいたお母さんがいるんじゃないかと。

もちろん、抱っこの仕方だけで発達障害を治すことはできません。でも、赤ちゃんの抱っこを学んでいくうちに、発達をより良い方向に、少しでも近づける後押しはできるのではと考えるようになりました。

赤ちゃんのころから抱っこを整えて、身体にアプローチをするメリットはきっとあると思うんです。

最近では早期療育が大切だといわれていますが、早くても2~3歳からが多いです。でも、2歳になるまでにできることはたくさんあります。

そのお手伝いをしながら、お母さんの不安な気持ちに寄り添いたい。特別支援学校の先生は私のほかにもいますが、抱っことおんぶの専門家は徳島にはいませんでした。

私にしかできないことをやりたい、私がやるんだ!そう思って、教員を辞めて抱っことおんぶの教室「抱っこの木」をオープンしました。

お母さんと赤ちゃんの表情がパッと明るく

出典:抱っこの木公式サイト

ーー「抱っこの木」をオープンしてから約2年、現在はどんな活動をしていますか?

個別やグループでの抱っこ紐教室や、ベビーラップの講習などをずっと続けてきました。使い方はもちろん、選び方、試着、レンタルサービス、出張講座なども行っています。

また、防災士の資格を取ってからは、災害時の子連れ避難に役立つ「おんぶ」の仕方など、防災と抱っこ紐をかけあわせた講座もスタートしています。

ーー抱っこ紐教室を続ける中で、やりがいや嬉しかったことを教えてください。

最初は不安そうな顔をしているお母さんが、すごく明るい表情に変わる瞬間を共有できることです。

抱っこ紐教室に訪れるお母さんたちは、「使い方が正しいのかわからない、上手く使いこなす自信がない」と不安を感じている人がほとんどです。

ですが、講座の中でコツをじっくりレクチャーし、私の手助けがなくても抱っこ紐を扱えたら……パッと表情が変わるんです。

「いままでの抱っこと全然ちがう!」と感じてもらえる。赤ちゃんも快適に抱っこしてもらえると、リラックスした表情に変わります。

お母さんと赤ちゃんの表情が明るくなって、「家に帰ってもやってみます!」と言ってもらえると、とても嬉しいです。

講座を受けたあとに「すごく楽になった」と感想をもらったり、抱っこ紐の写真を送ってもらえたりすると、役に立ててよかったと心から思います。

ーー講座の中で、気をつけていることや工夫していることはありますか?

否定的な声かけをしないことです。これは、特別支援学校の教員をしていたころから気をつけていたことでもあるんです。

子育て中でナイーブになっているお母さんもいるので、自分の子育てを否定されたと感じないように、安心できる場になるよう心がけています。

反対に、上手なところ、よかったところは、ドンドン伝えるようにしています。育児中って、あまり褒められることがないんですよ。どうしても自己肯定感が上がりにくい。

だからこそ、お母さんが自信をもてるように「できていますよ」「大丈夫」と肯定的な声かけを心がけています。

気軽に相談できる関係性を作って、こまめにフォローをしていく。1回の講座で終わらないように、つながっていきたいと思っています。

たくさんの人に抱っこの大切さを届けたい

出典:抱っこの木公式サイト

ーー今後はどのような活動をやっていきたいですか?

今後は、2つのことを軸に活動していきたいと思っています。

1つ目は、お母さんと赤ちゃんに関わる専門職の方たちに、快適な抱っこを伝えていくことです。

私個人で徳島県内全域をサポートするには、やはり限界があります。助産師さん、保健師さん、子育て支援センターの職員さん、保育士さんなど、徳島県内のさまざまなところで子育て支援に携わっていらっしゃる専門職の方に、抱っこや抱っこ紐のポイントを知ってもらいたい。

そして、それぞれが関わるお母さんと赤ちゃんに、少しでも伝えてもらえたら、抱っこで悩むお母さんをもっとサポートできると思うんです。多職種連携と専門職向けの抱っこ紐講座にも、これから力を入れていきたいと思います。

2つ目は、妊娠中から参加できる抱っこ紐講座を、行政主催の子育て支援制度の中に入れてもらうことです。

例えば、自治体で開催している両親学級のようなイメージ。沐浴やオムツ替えは教えてもらえる場所があるのに、同じように大切な抱っこや抱っこ紐を学べるところは、ほとんどないのが現状です。

出産前から口コミだけで抱っこひもを先に購入してしまっている妊婦さんも多くいます。どのお母さんにも、どの赤ちゃんにも、平等に抱っこ講座を受けてもらいたい。そんな場所を作って、たくさんの人に届けたいんです。

私にとって抱っこ紐は、育児の相棒です。ツラいときに助けてくれ、パワーをくれます。お母さんにとって一緒に頑張れる仲間のような存在に、私もなりたいと思います。

本来なら、一個人がすることではないのかもしれません。こういった情報は妊婦さんやお母さんが取りにいくのではなく、与えられるべきだと思います。でも、そういう場所がないのなら、当時の私がほしかったものを、私が作りたい。

子育てはお母さんだけではできません。私自身の苦しかった経験から、ツラい思いをするお母さんが1人でも減ってほしい。

もっとオープンに助けあえる環境を作って、妊婦さんやお母さんが平等に情報を得られるような活動を続けていきたいです。

ーーこれからの活動が楽しみです!応援しています、ありがとうございました!


中川智子さんの抱っことおんぶの教室「抱っこの木」は、LINEからご予約、お問い合わせが可能です。

気になる方は、お気軽にご相談ください。1人で悩まないでくださいね。


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