ミロ展 彼の実験欲とエネルギーを感じた
渋谷bunkamuraで開催中のミロ展に行ってきた。
彼について詳しくなく個性的な絵を描く人といったイメージくらいだったが、「日本を夢見て」という副題があり、興味がわいたのだ。
日本とのつながりといった観点で彼の作品を見てみたいと思った。
展示会は彼の独特な世界観が爆発していた。
私が強く感じたことは、彼は実験者だなぁということである。
素材はキャンバス、紙、油彩、木版あたりはもちろん、カゼイン塗料という一般人には聞きなれないものや、砂、メゾナイト、コラージュなどもあり、それらを使っていろいろと試していたようだ。あえて背景を塗った後に擦った作品もあった。
また、陶芸にも取り組んでおり、仲間と一日中、作品を作っていた時期もあったらしい。陶芸作品もいくつかあり、中には抱えられないほど大きいものも。圧感だった。
彼は瀧口修造という日本人との交流が深く、共同作品があったり、日本に来日したりもしている。
彼が持っていた日本の品が逆に海の向こうからこちらに展示されていて、「こんなものをもっていたの?!」と驚かされ、それもまた面白い。
墨を使った作品は、日本人の私としては親近感をもった。しかし、水墨画とはことなり、彼のセンスで大胆に描かれており、とても素敵だった。
特に、私が一番心奪われた作品は最後の展示スペースに出てきた1966年の「絵画」である。
墨でダイナミックに描かれた作品で私は圧倒されてしまった。
この作品はパンフレットにも載っていたのだが、それでは伝えきれない迫力が本物にはある。近くで見ると彼の筆の動きを感じる。
これは日本から帰国後、すぐに描かれたそうだ。彼の人生の後半で描かれた作品だが、彼の持っていたパワーは歳を重ねても衰えてなかったことに驚かされる。
また、彼は自分の絵の中に文字を取り入れたり、展示会のポスターのために文字を入れる場所を考えて作品を作ったりしている。彼は絵と文字を区別していないとの解説もあったが、その通りだと思った。
それを特に表現しているのが、毎日新聞社の本社で描いたという「祝毎日」という、書道の作品とも、絵画ともいえる作品だと私は感じた。
こちらも見ごたえのある印象深い作品であった。
私は画家というのは悩み、苦しむ人も多いイメージがある。最悪の場合、自殺してしまう画家もいる。
それに反して、彼の作品からは産む苦しみはあるだろうが、その根底には描くことを楽しんでいる、そんな印象をもった。
彼が実験を楽しみ、表現を楽しんでいるからユーモアあふれる作品になったのだと思う。
この感覚はピカソにも似ていて、偶然にも彼もスペイン出身。そして2人ともなかなか長生きしている!
彼らの作品にパワーを感じ、ワクワクするのは彼らがエネルギーに溢れた人だったからなのか、と想像してみる。
ちなみに、お土産は「ミロ」。
あのグリーンのパッケージで、サッカーしている男の子が目印の、ココアのような栄養ドリンクである。
ネスレ協賛の展示会ということで、自社の「ミロ」を配る、なんとも粋なはからいであった。
彼が生きていたら、きっと笑ってこのプロモーションを受け入れていただろうなと思った。
※平日、写真を撮って良い作品もあり、かつ、SNSにあげてもよいとのことでしたので、アップしました。