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前身幅のゆとり

 「このブラウス可愛いねぇ!いいなぁ。」と娘がフリルを触っています。
でしょう、ちょっと特別な工夫が施されたブラウスには見えないですよね。
 いわゆる「キャリア女性向け」スーツを仕事着にしていたころ、体を動かすとシャツのボタンの隙間から肌着が覗くのが気になりました。スカーフを巻いて見えないように工夫したのを思い出します。車いすを漕ぐときには腕を大きく動かすので、やはりボタンの隙間が開くのが気になるそうです。車いすを使う方も、歩く私も、悩みは同じですね。

 試しに、タイトなシルエットのシャツを着て鏡の前に立ちます。肘を曲げ、後ろに引いてみると2番目と3番目のボタンの間が浮き上がります。
 浮き上がるところにもうひとつボタンをつけるのも一案!とピンを留めてみると、浮き上がらなくなります。ひとまず安心。でも動きづらさは残ります。布が引っ張られ、ボタンの根元の布がほつれるのではと心配です。
 これは、前身幅のゆとりが「腕を後ろに引く」運動量分よりも少ないからでしょう。パターンを確認すると、ちょうどこの辺りは、アームホールのカーブとの具合で、前身幅が一番狭いことがわかります。

 「みんなにやさしい介護服」で岩波先生は「フリルをつける」「ボタンの糸足を長くする」リフォームを提案しています。
 冒頭のブラウスはそれに倣ったもの。フリルは素敵な目隠しになります。糸足のおかげで、動くときだけゆとりが生まれます。

 新しいシャツを作るときに、運動量が大きいことが想定される場合には、前身幅のゆとりをどう確保するか、検討することが大切だとわかりました。タイトなシルエットをキープしたいときには、動きの大きな部分にタックやギャザーを使ったり、ニットなどの伸びる素材を組み合わせたりするのも良いかもしれません。
 それから、今までボディの上で配置を決めていたボタンも、動いた時にどうなるか、確認しておく必要がありそうです。

#前身幅のゆとり #ボタンの配置 #見えない工夫

 「みんなにやさしい介護服(岩波君代 著、文化出版局 編)」は残念ながら絶版となっており、一般書店や文化出版局では手に入りません。もし入手を希望される方がいらっしゃいましたら、こちらまでご連絡ください。著者の岩波君代さんにおつなぎします。在庫には限りがあることをあらかじめご承知おきください。