Grateful Pain
過去、長い女優人生で一度だけ、大きな傷を負った。
心の方だ。
幸運と言える女優業を経ての
すっかりおとなになってからの傷は
ざっくりと深く、
自分を責めることに終始し、
癒えるまでには、
そして、再び舞台に立てるようになるには、
とても時間がかかった。
その時の時間を、私は封印していた。
箱の中に入れて、鍵をかけ、グレイのラベルを貼った。
瞬間瞬間を思い出すだけで、うまく呼吸ができなくなっていたから。
今年、気持ちを新たに、noteにエッセイ的なことを書くことと、
新しいInstagramのアカウントを作った。
その際、ハッシュタグを見直していたら、
その、私の痛みでしかなかった舞台を観てくださった方たちの感想が、
びっくりするほどたくさん現れた。
素晴らしかった、と。
感動しました、と。
賞賛の言葉たちが並ぶ。
これは、、、、
この感情を何と呼べば良いのだろう。
時空を超えて届いた贈り物。
べったりとグレイに塗られた当時の私のカレンダーに、
色彩が加わった感覚。
お名前もお顔も存じ上げない方たちからの、
とてつもない贈り物だ。
ありがとうございます。
言葉にならない。
鍵をかけた箱を、今さらわざわざ開けようとは思わないけれど、
もうじゅうぶん、過去が色づいた。
ありがとうございます。
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