読書覚書『親に知ってもらいたい 国語の新常識』
井上志音 加藤紀子『親に知ってもらいたい 国語の新常識』時事通信社2024
これまで自分が取り組んできた/経験してきた「国語」の授業や、大切にしてきた考え方/イメージをふり返るきっかけとなる本です。
私自身の背中を押してくれる内容であり、国語教員の方なら第3章国語のお悩みQ&Aは「自分ならどう答えだろう??」と考えながら、読み進めると頭の体操になると思います。
一般書として親や学生も楽しめつつ、教育関係者にとっても充分刺激的であるという奇跡的なバランスで書かれています。特に、学校現場でも混乱している「評価」について、混乱している状況も含めて整理し直して平易な言葉でまとめられていて驚きました。
それは、井上先生が中高の現場教員としての立場だけでなく、親として、教員養成に関わる者として、国語を複眼的に捉えて語っておられるからだと思います。日本の教育の状況を捉える参照点としてIB(国際バカロレア)の取り組みをわかりやすく説明してくださってもいます。
また、聞き手の加藤紀子さんが井上先生の言葉を素朴に受けとめるだけでなく、ときに「そうは言っても」「ただ」と批評的な問いかけをすることでインタビューを超えた議論を生んでいたからだと思います(P133)。
素晴らしい聞き手でした。
最もいまの私が共感したのは
「家庭でも学校でも『学び方を学ぶ』という視点を育んでいく必要があり」、それは「特定の教科によらない『教育法』」であるという考えです(P148)。
私が4月から教育学ではなく認知科学の研究科にに進むことを決めた理由と重なる部分でした。
教科に分かれて教育法を考えるということは、教材の検討やどう教えるか、といった議論に向かいやすく、学習者がいかに学び、どこでつまづいているかを観察する視点を取りこぼしてしまいがちです。
「普遍的な、根源的な学び方の教授にもっと目を向ける」ことをまずは自分から始めたいと思います。
これまで、国語本でオススメしていたのは、
石井順治『「学び合う学び」が生まれるとき』
温又柔『「国語」から旅立って』
でしたが、そこにこちらの本も加えて紹介したいと思います。
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