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「セックスと同意」講習

 今日は晩御飯を買いに行った以外はホステルを出なかった。

 朝起きて、ダラダラと支度をして、ホステルのコミュニティルームへ行き、留学先の大学の非常時対応などについて学ぶ講習をオンデマンドで受ける。これが非常に充実しており、1時間くらいかかってしまった。例えば火事については、発火は、可燃性物質と酸素と熱によって起こり、発火元が電気の時はこういう対策を、鍋などの時はこういう対策を、でも基本は逃げることを最優先に……と言った具合に。また電源コードについても、電気を食うものをマルチタップに繋いではいけない、ドライヤーはこう、充電器はこう、ゲームコンソールはこう、このシュミレーターで試してみて……という具合に、充実がすごい。見習うべき。

 10時から11時半まで、オンラインでガイダンスがある。細々したことをいろいろ説明される。分かっていることも初耳のことも多くてなかなか有意義。イギリス英語も、その人のものは8割ほど聞き取れて、まあ最低限こんなもんだろという感じ。

 その後は突如思い立ってスマホのホームスクリーンのアプリの配置をいじっていたら昼過ぎになっていた。2時からまた別のオンラインガイダンスがある。昼でかなりの集中力を使ってしまったのと、思っていたより重要度が低そうな内容だったためぼーっとしてしまいながら聞く。早めに終わったので、午前に受けていたオンデマンドの講習とは別の、必須の講習をオンラインで受ける。

 午前の講習も充実度がすごかったが、こっちの講習もすごかった。主にセックスと同意についての講習なのだが、ものすごく充実しているのである。これまで日本で似たようなことをしたことはあったが、保健体育の授業しかり、せいぜい「避妊具をつけましょう」とか、「同意のないセックスはレイプです」とか、その程度の解像度で、そりゃそうでしょとなっておわるようなものだった。しかし、これは一味も二味も違う。英語ネイティブでもちゃんとやれば1時間はかかるであろうボリュームで、内容も充実の極みである。たとえば

  • 自分の嗜好についてワークをする(例えば「自分の性的嗜好について事前に話し合う」のは抵抗があるかないかなどなど)

  • 実際に男女のグループで飲んでいてベロベロに酔った女の子をお持ち帰りするシチュエーションをシュミレートして考える

  • 同意がある/ないとはどういうことを至極具体的な例とともに教えてくれる(同意があることについては例えば「F**k me」「That feels good」「More!」と言うとか、それと同時に勃起するとか、乳首が立つとか非常に具体的に)

  • ある人が恋人に望まないプレイを半ば強要しているシチュエーションの会話の様子を読んだうえでそれが適切かどうかクイズを解いたり、逆に2人がノリノリでセックスに至るシチュエーションからどの点が同意だったのか考えたりする

こんな具合である。しかもLGBTのシチュエーションも当たり前のようにある(なんなら3Pとかもあった)。こういうのはすごくいいと思う。本当に。変にオブラートに包んで全然なんの意味もなさないのよりも、きちんと具体的にして取り組むほうがいいのではないか。実際、オブラートに包んで、「同意のないセックスは駄目です」と言われたら「そらそうだし、そんなことはしないよ」と思っている人でも、具体的な状況を出されると「あ、たしかに……」となる内容は多かった。例えば、「飲みの場でお互いにそうとう酔っ払って、しかも相手も割とノリノリの様子で、盛り上がってそのまま相手の家でヤってしまった」みたいなシチュエーションである。この場合、いかに相手が乗り気に見えたとしても、相手は酔っていて同意できる状態にないし、自身が酔っていることも免罪符にはならないのである。他にも「そこまで酔ったほうにも責任がある」というのも間違いである。なぜなら彼/彼女は「酔って気持ちよくなる」ことを選択したにすぎないのであって、「そのままトラブルに巻き込まれる」ことをなんら意図していないからである。特に大切と思われることについて、改めて強調しておくと、同意とは①泥酔や何らかの強制力などの働かない自由に同意可能な状態において、②明確かつ積極的な態度かつ明快な言語表現によってなされ、③その同意はたとえ行為の途中であっても常に撤回可能である、ということだ。ちなみに泥酔に並ぶ例としてクスリでハイになっている(Stoned)ことが挙げられていていかにも海外っぽい。また、何かトラブルになった際に消極的傍観者にならないために何を気をつけるべきかについても述べられている。能動的な傍観者たるには、「被害者とおもわれるものにサポートを提供する」「話題を逸らす」「直接声をあげる」「事が起きた後に行動を起こす」などの行動によって、自身の安全を優先しつつも「事を荒立てる」ことなく、「誰かが何かをするだろう」思考に陥らずに、小さくても行動を起こすことが大事とされる。これについてもケース別のクイズなど充実した内容で、ダーティワードも使われたとても意味のあるものになっていた。ここまで直接的で具体的な内容になっていて、それゆえにイメージもつきやすく、とても良いのだが、配慮もきちんとなされている。どういうことかというと、例えば性被害にあったことがあるような人にとっては内容は具体的であるがゆえにトラウマティックなものである可能性がある。そういう場合に備えて全ての画面には常に「講習停止」のボタンがあり、いつでもOpt−out(自分の意思であえてやらない事を選ぶ)できるようになっている。ここまで詳細で有意義な講習の仕方を日本の大学およびその他諸々の機関は見習うべきだと思う。全世界の人間一度は受けたほうがいいと思った。もちろん、その内容が100%正しく、広く全人類に適用されるものかは議論の余地があるかもしれないが、少なくとも十分な配慮のもとに作成されており、ジェンダー問題や多文化社会への気配りもなされていたのでとりあえず全日本人はやるべきだと思った。

ほら、対象は全人類

 僕は全て終わらせるのに2時間以上もかかってしまったし終わる頃にはへとへとだった。先が思いやられるが、良い慣らしの一つにはなったように思う。内容も言っての通り充実していてやって本当に良かったと思う。ちなみに、別にもうひとつ学んだのは、この世には「デンタルダム」という性感染症予防具があるという事です。肛門や女性器へのオーラルセックスの際に主に用いられるらしい。ものすごく雑にいうとフィルム状のコンドームみたいな感じ。ググった結果、日本語の検索結果はそんなに多くなかったけどAmazonでも買えるみたいなので布教。

 まあ、これだけ盛りだくさんだったので終わった時にはへとへと。そのそも今日はちょっとしかお菓子と5−6枚のサラミしか食べてなかったので、晩御飯を買いに行くことに。

本日の朝食兼昼食。何かわからなかったのでチャレンジで買うことに。中の黒いものからはドライフルーツの味がしてとても美味しかったので調べてみるとイチジクでした。ドライフルーツってこんな感じで詰められることあるんだ。

 スーパーに行く途中、カッコよくてスラッとした感じの女の人が盛大にコケているところを見てしまって申し訳ないけどちょっと面白い気持ちになる。スーパーに着くと、1日1.5食くらいで安さ優先という、終わってる食生活をしばらく続けていたせいで、日本食が恋しくなり、カツカレーから目が離せなくなった。絶対に日本で食べるほど美味しくない確信がある上に900円するので相当悩んだが、誘惑には抗えず購入。デザートにとヨーグルトも買った。

すごく日本っぽく見えるよね

 ホステルに帰って、さ、レンジに入れよう何分かな?と思って裏を見ると、文字の量がおかしい。なんとおすすめはレンジとオーブン両方使った方法で、それは嫌なのでレンジだけを使う方法を取ることにしたが、それでもあらかじめチキンカツのみを取り出し、レンジに入れ、途中で取り出してご飯に水を加えてかき混ぜてチキンを乗せたうえで戻して、残りの時間レンジにかけるという工程が必要であった。いや、こういうやつは開ける、入れる、チンする、完成!やろ!という気持ちを抑えて開けると何とびっくり、パッケージと中身の大きさが違う。いや900円も払わせて詐欺してくるんかい。

けっこう見た目と量ちゃいますがな

 何とか言われた通りに調理を終わらせ、実食。まず米は日本米ではない。なんでや。正直なところ、ここは日本じゃないし、僕は米である限りだいたいはすきなのでその点は特に不満ではないが、日本米ちゃうんかいとは思う。チキンカツはちょっとなよっとしているが普通の味。カレーはジャパニーズカレーというには少し辛めかな。すこしスパイスカレー感を感じる。トータルの感想は、可もなく不可もなく。ただ同等以上のクオリティがファミリーマートの350円くらいのカレーにファミチキ(買ったことないが)を載せるだけで完成すると思うとリピートする気は起きない。しかも、食べている途中で気づいたのだがヨーグルトと間違えて生クリームを買っていた。どないしろと。今日の晩飯はなんだが色んなものに負けた気がする。残ったカレーライスに生クリームを混ぜて味変をすると美味しかったがまだまだ残っているので明日はインド風のチキンティッカマサラ(カツカレーより200円安い)だな……

 食べて、軽く寝ようと思ったらまだ10時にもならないのに寝落ちしてしまった。今日はスーパーへの外出30分を除けばほぼ全てホステルのコミュニティルームで過ごしたのにも関わらず、ロンドンについて1番疲れた気がする。あるいはだからこそ、か。おやすみ。同意取らないとダメだよ。「......Oh, yeah......alright......」(coarced agree:強制された/圧力のもとの同意)は同意じゃないからね。

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