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遠くって、伝統芸能

伝統芸能って身近な感じ、しないよね。

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「なぜ沖縄の若い子たちは琉球芸能に関心がないのか」

うちの先生もそうなのだけど、コレ、どうも伝統芸能に携わっているかた達が思う純粋な疑問らしい。どちらかというと、「関心=習う」と捉えたときの。


だって教養じゃん


見渡してみれば周りに舞踊を習っている子も少ないし、お芝居とかの舞台を観に行っても観客の年齢層は結構高め。

そうね、興味持たないね。
その前提としてそういう世界を知る機会も少ない。
んでもって、たとえ関心があったとしても実際携わるかといわれたら、ないよねぇ。
だって、伝統芸能ってほぼほぼ教養でしょう。
嫌な言い方をすると、お育ちに大きく左右されるのだ。
観るにしても演るにしても。
(決して僻みではない。けっして)

教養って、時間とお金に恵まれた環境でないと深める機会なんてそうありゃあしない。


金がかかる


ここ数年、琉舞道場の会計をしてて思うのが、琉球舞踊すごい金かかるなってこと。(会計といっても申告に使うだとか必要があったり守秘義務があったりだとかではない。とりあえず「今後の参考のためにまとめておこうね」くらいの帳簿)

「金がかかる」

そう言っちゃァおしまいよ、という話なのだけど。

沖縄ってひとりあたりの所得は全国最下位だし、貧困率もトップなのよ。私もお金には恵まれなくて子どもの頃に一度舞踊やめたわけで。
統計なんてとられてないと思うけど、小さい子どもや中学生・高校生の舞踊人口は減っているらしい。たしかに、ひと昔前は3~4日程組まれていた子ども舞踊大会も、今では2日間程度だ。
ゆえに、冒頭のアノ問いである。

「なぜ沖縄の若い子たちは琉球芸能に関心がないのか」


暗黙に存在する篩


舞踊も含めて伝統芸能の世界に身を置く子たちは、良くも悪くもにかけられていく。その篩というのは、一に家庭の経済力ニに芸能にかけられる時間三に本人の努力と才能だと考えている。

僻みなんかじゃあない。
現実問題よ。

けれども、伝統芸能の継承と発展を考えると、この篩は決して悪いものではないはず。ここで挙げた篩の要素は、裏を返せば、安定して芸能に専念でき且つ後世に技を伝えることができる人物の条件といえるから。
伝統芸能の今後を思うのであれば、やみくもに演者人口を増やすより、伝承者や保持者となりうる人物を選りすぐって育成していったほうが効率的で手っ取り早い。時代の進み方が早い現代、伝統芸能の継承は時間との戦いだ。この篩が作用している以上、「なぜ沖縄の若い子たちは琉球芸能に関心がないのか」という問いは不毛であろう。

才能もなく、継続できる時間と金もないパンピはこの世界にお呼びじゃあないのよ。

そんな空気をいつも感じている。
だったらもっと稽古して上手くなれという話なのだが、残業するほど働かないと月謝が払えないし家のこともしなきゃならない。そういう私に先生は決まって「仕事してるアナタが悪いんでしょう?」とお返しなさるのだが。

そうねぇ、やめようかなぁ。

とは思わないけど。
一度やめてるので、二度目はないわね。

私、踊りの才能はそこまでないけど、近年稀にみるメンタル軽業師なので。


道場にひとりはいた謎のお姉さん


本音を言えば、琉球芸能はもう少し身近であってほしい。

みんながみんなやってるわけじゃあないけれど、小学校の同級生に3~4名くらいは琉舞道場に通ってる子がいて、10名くらいは三線とか地謡やってる子がいて。親戚の誰かが賞をとっていて、年1~2くらいで舞台のチケットをくれるので、なんとなく観に行く。家の近くに道場があって、じゃあ私もやってみようかな、くらいではじめてみちゃったりして。賞までとろうとは思わないけれど、コンクールのお手伝いをしたり地域の催しの群舞には毎年加勢したりしていて。

というくらいの距離感。

演者人口が急速に減っている(らしい)今、あまりこういうタイプの人は先生からは歓迎されないみたいですけどね。賞をとらないのであれば道場の実績にもならないし、大きい舞台に出せる人手としても使えないし。
少し昔は、ああいうスタンスで道場通ってるちょっと年上の謎のお姉さんみたいな人、そこそこいたんじゃないかな。昔話を聞く限り、そう思う。

今はそういう距離感で芸能に携わっている人は少なくなったように思えるし、道場に出入りする敷居がむちゃくちゃ上がってしまっている。
昔がユルすぎたのか今があるべきかたちなのかはわからないけれど、この状況によって沖縄県民と琉球芸能との距離はますます伸びていくでしょう。

***


しかし、県民と琉球芸能が身近である必要があるのか?と問われれば、「日本人って人生のうち何回歌舞伎や日舞の公演を観に行くんだろう」と考えて答えに詰まる。

うーん。
私は琉球芸能が好きなので、寂しいものがあるのだけど。

だらだらと書いていても、この話はしばらくまとまりそうにないので・・・・・・このあたりでいったん閉じさせていただきます。

中締め!


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