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ニュートンの海

数学的直観と呼ばれている頭脳の能力を、本当に理解できる者はいない。それが天才となると、なおのことである。人間の脳というものはだいたい似たり寄ったりなのだが、ほかの才能に比べると、数に関する才能はもっとまれで特別な能力のようだ。それは普通とはまったく別な、異質の特性だ。天才のなかでも数学の天才ほど、特殊な才能をもつ知的障害者と共通したところのある天才はいない。世界に背を向け、内に向かって思いをひそめる頭脳にとって、数は輝きを放つ生き物のように見えてくるのだ。そしてそこに秩序と摩訶不思議な魅力を見出し、数がまるで親しい友だちのようになる。数学者は、いわゆるポリグロット〔数か国語に通じた人〕でもある。その強力な創造力がどこから湧いて出るかというと、それは同じひとつのことを、一見まったく似ても似つかない形で表せる翻訳の能力にほかならない。ひとつの公式化がうまくいかなければ、あきらめずまた別の形を試すのだ。

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