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イマココ

私たちの頭は、空間を把握する不可思議ですばらしい能力を持っている。野や森に住む鳥やハチなどとちがい、人間には空間をつくりあげ、自分たちのニーズに合わせて歪曲し、幾何学的な説明とは別のものとして思い描くことができる。このような空間を考える能力があったからこそ、人間は地球で唯一、本当の自意識を持つ存在として優位な地位に押し上げられたという説は、おそらく正しいのだろう。高度に発達した視覚で複雑な光景を取り込み、位相的なつながりに基づいてそれらを混ぜて不可思議なものをつくることで、私たちは大昔の人間の想像をはるかに超えた空間をつくりだし、組み立てることができるのだ。

しかし私たちが空間の幾何学という衣を脱ぎ捨てることができたのは、人間の頭のつくりだけではない。私たちがエネルギーやテクノロジーを活用する能力は急激に高まり、いまや周囲の物理的環境をほぼ好きなようにつくりあげることができる。道具を使う動物である私たち人間は、独特な空間のとらえかたをする脳を駆使して、物理的空間を超えようとする志向を支え拡大する環境を整えてきた。都市計画から光速コミュニケーション技術まで、あらゆるものが物理的空間を超える私たちの能力を反映し、それを支え、伸ばすように設計されているのだ。

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