タイミーにおける戦略・戦術・運営の考え方と、それを遂行する Product Manager の Role について

はじめに

この記事は🎄Timee Advent Calendar 2023のBトラック(シリーズ2)🎄
20日目の内容です。

タイミーのプロダクトマネジメント組織を圧倒的に強くしていくための考え方、それを実現する Product Manger の役割をご紹介したいと思います。

自己紹介

タイミーで Director of Product として、プロダクトマネジメント組織の運営責任者を務めています大歳です。

記事を書くのが2年前に前職でやったアドベントカレンダー以来という、アドベントカレンダードリブンでしか執筆できないパーソンです。
来年はもうちょっと頑張りたい…!

タイミーには今年の10月に入社したばかりで、実はまだ試用期間中です笑。
前職に引き続き、なぜか早速 DoPPP (Director of Product Party People) といじられており、浸透しつつあるので恐ろしいです><。

これまでの経歴

リクルートジョブズやリクルートマーケティングパートナーズという事業会社(現リクルート)で業務系や toB 向けの新規プロダクトの立ち上げやグロースを担当したのち、ベルフェイスという Sales 領域の SaaS を提供している会社に参画後、執行役員 Vice President of Product として現行プロダクトの戦略立案、ロードマップ策定、実行推進を行うとともにプロダクト組織を管掌しておりました。

詳しい経歴は前職在籍時に for Startup さんにインタビュー頂いた EVANGE #87 やタイミーの入社エントリー記事をご覧頂けると、これまでのキャリアの変遷や仕事に対する考え方など知って頂けるかと思いますので、お時間ある方はぜひお目通しください。

タイミーにおける役割

Director of Product として、主にはChief Product Officerとともにプロダクト戦略の立案、戦略に基づいた戦術の策定、戦略・戦術の組織内展開などの戦略戦術レイヤーの業務から人材開発や組織開発などの組織マネジメント、プロダクトマネジメントプロセスの構築と遂行を通じて生産性向上を実現していく役割を担っています。

Director of Product って何だ・・・?という方も多いと思うので、本記事ではタイミーにおける Product Manger Role の説明とともに、それぞれの役割や、前提となる戦略・戦術・運営の考え方をご紹介していきたいと思います!

本記事で紹介したいこと

本記事の内容

  • 事業の持続的な成長を支えるタイミーの戦略・戦術・運営の考え方について

  • 事業の急成長フェーズを支えるプロダクトマネジメント組織において必要な Product Manager の Role の定義について

想定読者

  • プロダクト主導型組織における戦略・戦術・運営についての考え方を知りたい方

  • プロダクトマネジメント組織の運営に興味ある方

  • Product Manager の Role やキャリアの積み方について選択肢が欲しい方

  • 機能的で生産的な組織の作り方や運営に興味がある方

タイミーの戦略・戦術・運営の考え方

ドラッカーの8つの目標と戦略・戦術・運営の関係性

タイミーではドラッカーのマネジメント理論に基づく「会社の存続と繁栄に関わる8つの目標」を踏まえ、それに基づく戦略、戦術、および運営を整理しています。
8つの目標は以下のとおりです。

  1. マーケティング : 顕在化しているニーズに応えるために何をするか

  2. イノベーション : 顕在化していないニーズを掘り起こすために何をするか

  3. : どんな人材が必要で、どんな育成が必要か

  4. : 予算配分をどうするか

  5. : どんな情報や物的資源が必要か

  6. 生産性 : 人・金・物に対する投資効率の向上

  7. 社会的責任 : 企業が社会に対して与える影響や責務

  8. 売上と利益 : 新たな投資費用としての利益と利益を創出するための売上

戦略と密接に関連するのは、マーケティング、イノベーション、および社会的責任です。マーケティングとイノベーションは、それぞれ顕在化しているニーズと顕在化していない(潜在的な)ニーズへの対応を時間軸に沿って整理します。

マーケティングは、既存市場 / 新規市場 × 既存製品 / 新規製品という4象限を通じて、短中期的なサバイバル可能性の評価ができます
(例: 新規市場 × 新規製品は最もサバイバル可能性が低く、既存市場 × 既存市場は最もサバイバル可能性が高い)。
対してイノベーションは、会社が達成したい目標に対するニーズを特定し、長期的な展望からのサバイバル可能性への影響を評価できます。
これらを社会的責任(ビジョンフィットやガバナンス)と整合させ、取り組む内容を決めていくことが戦略だと捉えており、具体的な手段に落とし込んで実現することが戦術です。
これを遂行することで、売上と利益(ビジネスアウトカム)につながると考えています。

戦略の円滑な実行のためには、運営が必要であり、戦略実行(戦術化と実施)のために人・物・金といった経営資源への投資計画を立案します。これには人員計画(人材要件定義、目標設定、評価、育成、人材配置など)、調達計画(クラウドインフラやソフトウェア資産など)、予算計画(人・物に関する予算の策定と実行スケジュール)が含まれます。
人・物・金への投資効率向上のためには、生産性が重要です。DevOps Capabilities といった開発生産性向上やソフトウェアの技術的負債解消、品質向上、クラウドインフラ利用料の削減などのボトムライン施策を組織戦略や技術戦略で取り組み、実現していくことが、運営の責務と位置付けています。

ここまでの話を CPO の ZIGOROu さんが図示したものが以下になります。

戦略・戦術・運営の関係性 by CPO

プロダクト主導型組織における戦略・戦術・運営について

ここまでの話を踏まえたうえで、プロダクト主導型組織の視点で戦略・戦術・運営をプロダクトマネジメント界隈ではお馴染みの、通称『ビルドトラップ本』をもとに説明していきます。

『ビルドトラップ本』では、戦略と計画を明確に区別し、戦略および戦略的な業務について以下のように言及しています。ドラッカーが述べるマーケティングやイノベーションをプロダクトを通じて考えるのがプロダクト戦略と言えます。

戦略的な仕事では、マーケットで勝利して目標を達成するためにプロダクトや会社のポジショニングを考えます。プロダクトや会社の将来像や、そこに至るまでに必要なことに着目します

プロダクトマネジメント ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける 第8章

戦略とは実行可能な意思決定のフレームワークであり、現在のコンテキストとの整合性を保ちながら、現在の能力の制約のもとで、望ましいアウトカムを達成するための行動を可能にするものである

プロダクトマネジメント ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける 第10章

しばしば、ロードマップがプロダクト戦略として説明または表現されることがありますが、これは明確に異なります。ロードマップはプロダクト戦略を戦術化し、計画としてまとめたアウトプットの一つに過ぎません。

戦術とは、プロダクト戦略を実現するための具体的な手段として、プロダクトの機能を具現化し、市場に投入するなどの短期的な行動を指します。これを実行していくためには、戦略展開という概念が重要です。

戦略展開とは、組織全体を通じて適切なレベルの目標を設定し、チームが行動できるように活動範囲を狭めることです。

プロダクトマネジメント ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける 第12章

各組織階層に応じて適切なレベルで方向付けする必要があり、各層でとれる選択肢を多すぎず少なすぎず方向性を設定することが重要です。戦略展開において、ほとんどのプロダクト組織では以下の4つのレベルに分けられるとされています。

  1. ビジョン

  2. 戦略的意図

  3. プロダクトイニシアチブ

  4. オプション

タイミーでは、上記の概念を補足する要素として、『Continuous Discovery Habits』にある「Opportunity Solution Tree」の考え方を導入し、プロダクト開発組織を運営しています。
まず、「Opportunity」は顧客や市場におけるニーズや課題を総称する呼称であり、仮説検証や分析を通じて、プロダクトがどのように課題を解決するかの方向性をプロダクトイニシアチブとして定めるために扱います。実際に「Opportunity」を解決するための方法が「ソリューション」となりますが、これは単一ではなく複数の選択肢が存在することがほとんどです。そのため、これらの選択肢それぞれが「オプション」として捉えられます。

Opportunity Solution Tree


こういった考え方を人・物・金・生産性を踏まえて上手く組織に適用し、戦略展開していくことが運営において重要な責務となります。プロダクトの現在地点を正しく認識し、目指すべき姿に向かって戦略を実行できる状態を継続的に担保し続けることこそ、事業成長を支える組織基盤の確立だと考えています。

参考までに、ここまでに登場した以下の考え方を一枚絵に表現すると下図になります。

  • ドラッカーの「8つの目標」と戦略・戦術・運営の関係性

  • 『ビルドトラップ本』における戦略展開

  • 『Continuous Discovery Habits』 における 「Opportunity Solution Tree」

CPO の図示をもとに DoP にて一部修正

Product Manager の Role について

タイミーのプロダクト特性と開発体制

タイミーは現状単一のプロダクトですが、働き手 / 事業者双方に価値を提供する 2-side のプラットフォームとなっています。
つまり、働き手 / 事業者双方の価値を需要と供給に合わせてバランス良く高めつつ、安定的なプラットフォームとしての基盤を確立していく必要があります。
これを実現していくために Spotify モデルとチームトポロジーを組み合わせた下図のような形で開発体制を構築して運用しています。
※あくまで現状の体制であり理想の姿ではありません

Spotify モデルとチームトポロジー


TeamTopologies / Team-Shape-Templates

事業成長を支える機能的で生産的な組織の確立に必要な役割

今後、前述した通り、適切なレベルで戦略を展開し、自律的でアジリティが高く、事業環境に柔軟性を持った、よりスケーラブルな開発体制を実現していくためには、PdM の役割を適切に分割して運営していく必要がありました。また、事業を大きくスケールさせるためには、プロダクト開発組織を大きく拡大しつつ、同時に機能的で生産的な強い組織を作っていくことが重要であり、これを実現するために DoP という役割が定義されました。

ドラッカーの8つの目標でいえば、CPO がマーケティングとイノベーションをビジョンフィットと整合した戦略を立て遂行する責務を持ち、DoP がその戦略を実行するために人・物・金といった経営資源の投資や投資効率を高めるための生産性向上を実現する運営に責務を持つといった役割分担が必要となります。

当時のタイミーは経営メンバーの一員として事業戦略とアラインメントしたプロダクト戦略の策定と実行に責務を持つ CPO と、戦術を遂行する SPdM しか役割の設定がない状態でした。
CPO にしても、当時は VPoT という役割でありながら実態として CPO の役割を担うといった状況の中、プロダクト戦略の策定と実行だけでなく戦術化と運営の全てを担当する必要があり、事業が急拡大しているフェーズで組織としても成熟させなければいけない状況下においては CPO がボトルネックになるリスクがあり、プロダクトマネジメント組織の運営を移譲できる役割の設置と採用が急務という状況(と聞いてます笑)でした。

また、Tribe / Squad といった Spotify モデルの適用も、VPoT が CPO の役割を兼務遂行する中で整理され、運用開始されたばかりの体制であり、Tribe を Lead する PdM という役割が誕生したものの、何を担うのか明確化されておらず、プロダクトマネジメント組織の運営をしていくうえで SPdM の中でも担うべき責務や役割を定義する必要がありました。

役割は、これまで説明してきた戦略・戦術・運営と Spotify モデルの Tribe / Squad の関係性を示した下図の概念をもとに必要な Role を整理し、Product Manager のキャリアパスとも連動させて定義しました。

戦略的意図とプロダクトイニシアチブ by CPO
プロダクトイニシアチブと Tribe / Squad by CPO

実際のプロダクト開発を行うスクラムユニットを Squad (スクアッド)と呼称し、この Squad は今までと同様にリーンマネジメントとアジャイル開発による短期間のフィードバックループを実行しながら、Squad の価値提案テーマの実現に向けてプロダクトのアウトカムを最大化することに注力します。
また Squad を束ねる上位概念を Tribe (トライブ)と呼称し、顧客やプロダクトの前提や枠組み、顧客のメンタルモデルなどを俯瞰的に分析しつつ課題の探索・検証やリフレーミングや適応課題、クリエイティブ・テンションなどの方法で Tribe の中長期的な方向性を常にリファインし続けるようなダブルループ学習に根ざした戦略立案・展開を行います。
また Tribe では全ての Squad におけるプロダクトゴールとスプリントゴールについて把握し、プロダクトゴール実現に向けて各 Squad がどのように開発を進めていくかを整理した内部プロダクトロードマップを作成しメンテナンスしていきます。
このような形で、Tribe - Squad の間でダブルループ学習が成立するようにします。

プロダクト戦略の推進体制の考え方 by CPO

Product Manager Role の全体像

前述した戦略・戦術・運営を適切に遂行していくために、Product Manager の Role を以下の通り設定しています。

  • Chief Product Officer (以下、CPO)

  • Director of Product (以下、DoP)

  • Group Product Manager (以下、GPdM)

  • Principal Product Manager (以下、PPdM)

  • Senior Product Manager (以下、SPdM)

  • Product Manager (以下、PdM)

各 Role の役割について説明していきます。

CPO の担う役割と責務

主としてプロダクトにおいて、「マーケティング」と「イノベーション」をバランスよく実行することで、プロダクトが提供する価値を持続させ、その上でビジョンの達成(≒社会的責任の実現)に対してプロダクトを進化させていく責任を持ちます。
『ビルドトラップ本』の解釈も含めて少し補足すると以下のようになります。経営ボードの一員として、経営上のあらゆる状況を加味し、他の経営メンバーと視線を揃えてプロダクトポートフォリオ全体の意思決定を監督するプロダクトの最高責任者となる立場です。
現在のタイミーにおいては単一プロダクトとなりますが、2-side プラットフォーム として 働き手 / 事業者双方の価値向上の成立や プラットフォーム基盤の確立といった巨大なプロダクトとなり、運営上も Tribe という単位で整理している点から、Tribe 全てをプロダクトポートフォリオ全体と捉えています。

DoP の担う役割と責務

会社が目指している方向にプロダクトが変化できるようなプロダクトマネジメント体制を構築し、所属する Product Manager の挑戦と成長を支え、人・物・金・生産性を踏まえて上手く組織に適用し、事業成長を支える組織基盤を確立をすることに責任を持ちます。
『ビルドトラップ本』の解釈も含めて少し補足すると以下のようになります。最上位のピープルマネージャーとなり、ポートフォリオやプロダクトに関係する Product Manager を監督し、チーム運営が効果的に行われていることに責任を持つ、プロダクトマネジメント組織の運営責任者となる立場です。戦略と戦術を適切に接続し、事業及びプロダクトを持続的に成長可能な状態を実現します。

GPdM の担う役割と責務

単一の Tribe における戦術的な意思決定及び運営に責任を持ちます。
戦略的な視点を持ちながらトップダウン / ボトムアップ両面で状況を捉えて戦術を遂行します。
Product Leadership の役割を持つため、個人貢献だけではなく複数の Product Manager をリードし担当する組織範囲で成果を最大化していく立場です。Tribe で取り扱うべき 「Opportunity」 の探索や意思決定 (Senior Product Manager の支援を受けながら)、Tribe 内の要員計画や Product Manager の目標設定、育成・評価、運営課題の解消も担います。

PPdM の担う役割と責務

SPdM と同様に取り組むべき 「Opportunity」 に対して探索活動を行い、不確実性の排除や制約事項の洗い出し(オプション)をして「ソリューション」を探索し、「Opportunity」 を解決していくことに責任を持ちます。
最高位の Individual Contributor となり、Tribe を横断したプロダクト単位で探索すべき最も複雑な 「Opportunity」 の発見や意思決定の支援、Tribe を跨いだ複数の Squad の推進を行います。また、自身の振る舞いや経験、知見の展開を通じて、他の PdM に対するポジティブな影響をもたらし、組織力の底上げに貢献します。

SPdM の担う役割と責務

取り組むべき 「Opportunity」 に対して探索活動を行い、不確実性の排除や制約事項の洗い出し(オプション)をして「ソリューション「を探索し、Opportunity を解決していくことに責任を持ちます。
責務範囲として人のマネジメントは持ちません。チームの成長ではなく、プロダクトの構築に集中する上位の Individual Contributor となります。Product Manager との差分は、より複雑な 「Opportunity」 を取り扱ったり、複数の 「Opportunity 」を並行で取り扱ったりと深さ、または広さに違いがあります。Tribe 単位で探索すべき複雑な 「Opportunity」 の発見や意思決定の支援、高難易度な Squad の推進または複数の Squad の推進を行います。

PdM の担う役割と責務

Senior Product Manager と同様の責任を持ちますが、求められる遂行レベルは、中難易度の Squad を自走し推進することになります。

Role 別の戦略・戦術・運営における仕事の割合イメージ

各 Role が向き合う割合は以下のようなイメージとしています。
※あくまでイメージであり、事業やプロダクト組織のフェーズによっても変わり得るものです

おわりに

タイミーの戦略・戦術・運営の考え方と Product Manager Role について

いかがでしたでしょうか?
戦略と戦術、運営についての考え方や、日本では馴染みのない Director of Product や Group Product Manager といった Role が存在すること、それぞれが担う責務や役割のご紹介が、少しでも皆さまの考え方の一助となれば幸いです。
タイミーはまだまだ成長過程にあり、今日お伝えした内容もこれで最終形というわけではありません。今後の事業成長に合わせて変更が必要となると思います。こうした変化に柔軟に対応し、会社や事業の成長を支えるプロダクトマネジメント組織を築いていくことを目標に頑張っていきたいと思います。

タイミーのプロダクト組織に参画してみて

まだ入社して2ヶ月と少しになりますが、非連続な事業成長を実現するためにプロダクトとして出来ることがまだまだある、と感じています。
入社エントリーの記事でも言いましたが、タイミーは、セールスによる市場開拓とサービスの MVP(Minimum Viable Product) の秀逸さによって急成長を実現してきて今があります。
その分、細かい UI / UX の改善やバリューチェーンを更に拡げた価値提供、安定的かつ健全なプラットフォームの実現など、やればやるほど今後事業を成長させることができ、レバレッジが効いてくると確信しています。
タイミーが誇る多くの優秀な人財と一緒に、組織としての総合力が単純に個人を総和したよりも大きく発揮できる状態を作り上げ、タイミーのミッションである「はたらく」を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくるを実現していきます。やっていき!!

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タイミーはまさに急速な事業成長の真っ只中です。そんな中でも今後、持続的に事業の非連続な成長を実現していくためにプロダクトの成長が欠かせません。
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