将棋ウォーズ3分切れ負けで七段に昇段した話とレーティングの話
まえがき
こんにちは。将棋系Vtuberの葛山わさびです。
普段はYouTubeやTwitterで、指したり見たり考えたりした将棋の話を垂れ流しています。
この記事を読んでる人はだいたい認知してくれてると思うけど、気が向いたら見に来てくれると嬉しいです!
先日、将棋ウォーズの3分切れ負けで七段へ昇段しました。ひとつの目標、区切りとして自分なりに真剣に取り組んでいたので一息つきました。
せっかくなのでその取り組みや前後で考えたことについて書き残そう、というのが今回の記事です。
目標について
今年の初めに、将棋、配信活動、その他人生もろもろの年間目標をいくつか立てました。
ジャンルごとにExcelシートへ書き付けて、目標や必要な行動・物資、達成日などを整理する…というよくありそうなスタイルですが、自分でやることはほぼ初めて。
昨年にこの活動を始めて以来生活スタイルが一変した、というか生活の軸が一本増えたわけで、色々ひっくるめてやりたいこと/やるべきことを確認できるようにすることが今後のために必要かなと考えて導入しました。
将棋を指すことにおいての目標は「将棋ウォーズ3分切れ負け七段」「将棋倶楽部24R2800」など。これはもちろん勝敗、相手のあることなので、これだけで自分の行動、成果をジャッジしてたら病みます。
「大会成績の整理・分析」「自分用定跡ファイルの作成」「棋譜並べ年1500局」など、自分の行動次第でできることも含めて、全体として長い目で実力をつけることを目論んでいます。
ウォーズでの昇段はあくまで成果指標の一つであって、これだけのために全てを懸けるような目標ではない、ということです。もちろん、昇段を意識してからは達成に向けて詰めのアプローチをしました。
昇段をひとつの目標と定めたきっかけとしては、昨年末に参加した777勝RTA(関連記事)で3切れをたくさん指したことが挙がります。
当時のわたしは達成率でいうと六段の40~60%台を彷徨っていたのですが、深夜まで60局ほど廃指しした後も達成率が落ちていなかったこと、六・七段帯とも互角以上に戦えている手応えがあったことから、
「これはある程度ちゃんと取り組めば七段昇段できるのでは…?」という思いが芽生え、今年の目標のひとつに据えました。
そう遠くないゴールと感じていたので、年度末までに達成できれば他の目標、やりたいこととの兼ね合いとしても上出来と考えていました。
将棋ウォーズの段級システム
ウォーズの昇段だけを目標に将棋に取り組んでいるわけではないといっても、成果を出すには相応に目的意識や計画をもって臨む必要があります。
行く人は自然と将棋が上達するにしたがってどこまでも上がれるのかもしれませんが、わたしはそうではありません。
昇段したいなら、将棋に関する取り組み全体の中でも、ウォーズというプラットフォームに関する部分を多く考える必要があります。
将棋ウォーズにおいて昇段するとはどういうことで、(レーティング的に)どの程度の強さを身につけることで七段に昇段できるのでしょうか?
知っての通り、将棋ウォーズにおいては段級の後ろについてくる「達成率」が1局ごとの勝敗を受けて増減し、100%に到達することで1つ上の段級へ昇ります。(もちろん段位確定前の話は除きます)
上記を見るに、見かけの達成率に違いこそあれど内部レートとしては六段100%=七段20%=八段0%。
各段位の20%以下(一般に地下といいます)では見かけの達成率の増減が1/4になるので、七段の0%から20%に戻すには六段の20%から100%に上げるくらい勝たなきゃいけない、逆もしかり、ということですね。
そして同じ段級で500敗かつ0.0%を下回るとひとつ段級が下がって20%から登り直し。
なので(途中で実力が上下しないことを前提に)ものすごい廃指しでものすごい上振れを引くと実力より上の段に上がれることもあるのですが、ものすごい廃指しを続けているうちに平均への回帰が起こって降段するわけです。
月間段級5.00前後で月4000局ほど指しているイルカくんが五⇔六を往復しつつ大会段位7.00段以上に到達しているのは全くおかしくない、統計的に正しい結果なんですね。(もちろんこの局数を指し続けるのは一般的な感覚からしておかしいのですが、イルカくんの自由だしレーティングシステムとしてはなんらおかしくないことを示してくれている好例だと思います)
実力(統計的に十分な局数を指して出た月次段位)が5.00段としても、上振れで達成率が五段の100%を超えて六段に昇段することもある。しかし平均的には五段の0~20%が落ち着くべき内部レートなわけですから、六段として指している以上はいつか0.0%を切って五段に降段する、ということになります。
何が言いたいかというと、
・名前の後ろに表示される「段位」
・「内部レート」とその値を3つの段級ごとの基準で表示する「達成率」
・十分な局数を指して得た月次段位で示されるいまの「実力」
これらの指標は対局の勝敗で変動し相互に関係していますが、それぞれの数字が意味するところを理解するのが大事、ということです。
・自分の段位をひとつ上に上げる→達成率を稼ぐ
・確かな実力をつける→月次段位を高く保つ
・大会段位を高く出す→上振れするまで指す/連勝を続ける
と、それぞれの目的に合った目標設定をするべきでは?と提言します。
結局やることは将棋を勝つのみなのですが、1局の将棋を勝つことの先にどんな目標を置き、そのためにどの程度の勝率や対局数、継続性を出したいか?を考えるとひとつ違った見方ができるのではないでしょうか。
上記を踏まえると、
・七段へ昇段するために必要なのは「安定して七段を維持できる実力」というより「上振れしたときに六段100%に到達しうる実力」である
・一度七段に昇段すれば、500敗かつ六段20%相当まで内部レートが落ちない限り0.0%より落ちない=降段しない
(任意のn,n-1段/級へ一般化できますね)
といえます。
つまりは、月次段位で6.20段以上出せれば(いきなり七段になったとして)まず降段しないし、そこを最低水準として実力を高めていって、上振れしたときに六段100%を超えれば昇段できる…という仮説が立ちます。
このへんは昇段した後にいろいろ論をくっつけた向きが強いので話半分に。
ネット麻雀などでは似たような指標を見られるところもありますが、将棋ウォーズの特徴は勝敗の結果たる達成率と内部レートが微妙に食い違うとともに、「地下」というクッションを作って落ちにくくしているところですね。
要は、六段の地下に落ちず上のほうで指せている人は常に七段昇段の目、実力の裏付けを持っている、ということです。その層は七段の下位と実力的には差がない、と言い張ることもできます。
彼らを分けるのは、昇段戦で勝てたか、その一点のみ。それができずに涙を呑み沈む人も、各段位に数多いるわけですが。勝負強さを生かしてチャンスをつかみ取る人もいれば、地道に実力をつけて試行回数を増やす人もいる。神の導きで一気に昇段して、なんとか維持する人とふと見たらもとの位置に戻っている人。どれが正解ということはないでしょう。
わたしは自身の将棋へのスタンスと照らして、実力を高めていけば自然と上がれるでしょ、のノリ。
年末に数十局指して六・七段と互角以上に渡り合えていたという将棋の肌感覚は、達成率で六段の40~60%を保つという数字の部分とも合致しており、納得のいくシステムだなと思いました。
自信はあったし仮説の通り実践していたら昇段できたので、仕組みの上では再現性があるのかもしれません。正しいかどうかに責任は持ちませんが!
レーティングの話と戦略
さて、長々と語りましたが、「七段昇段=六段100%」のラインを超えるために、プレイヤーには何が求められるでしょうか?
もちろん、純粋な才能と姿勢でひたむきに取り組むうちに、気づいたら昇段に足る実力をつけている人もいるでしょう。優秀な10代の子たちは自然と七段上がってる例が多くてすばらしい。
ただ、わたしは年齢的にも【検閲】ですし、純粋な将棋の才気は人並みかせいぜい少し恵まれてるかな、ぐらいだと自負しています。そうした純朴かつ楽天的なアプローチは似合いません。
よって数字遊びをします。
わたし(六段40%~60%)が七段へ昇段しようとするとき、どの程度の勝率、それを裏付ける実力が必要でしょうか?
これを将棋ウォーズの仕組みから紐解いていきます。
まず重要なのは、将棋ウォーズにおいて1勝、あるいは1敗にどの程度の重みがあるのか。すなわち達成率のやり取りですね。
上記リンクより、自分と相手の内部レートの差によって、勝敗で得られる達成率の多寡が一部わかりました。
これを見て、「これはイロレーティングの計算方式でいう定数を7.0として奪い合っているのでは…?」という推測は、そうした数字の話が好きな方ならわりと行き着くと思います。
専門用語を使わずに言うと、1回の対戦で将棋倶楽部24では1戦あたり最高で31点、レーティングサイトでは最高16点動いている計算方式を、将棋ウォーズでは最高で7.0%のスケールで適用している、内部レートから導かれる期待勝率に基づいて勝敗で得られる達成率に傾斜をかけているのでは…?ということです。
将棋倶楽部24では363点差以上の対局は勝てば1点、負ければ31点という31倍層ですが、これは363点差マッチでの期待勝率がちょうど31/32だからこうしています。
だいぶ雑な話をしているのでツッコミ、補足をコメント欄でいただけると助かります。
つまりは、イロレーティングの計算方式が採用されている前提で(ここの検証はしません)、達成率の差に基づくやり取りの傾斜がわかっていれば、そこから期待勝率とレーティングの差が大まかに求められるわけです。
期待勝率とレーティングの差は棋士レーティングサイトの早見表より。
達成率40%差は上位者が勝てば+2.7%、負ければ-4.3%。2.7/7.0≒0.385、ということでおおよそ期待勝率は62%。この期待勝率に収束するほど多くの局数をこなしていれば、長い目で見てレートは動きません。
ここを打破するには、上振れで達成率100%を超えるか、実力を高める(ことで相応に内部レートを上げる)必要があります。
そして早見表から期待勝率、1戦ごとに得られる達成率を大まかに求めたのがこちら。
作っていて昇段寸前(六段90%)で六段地下(10%)に負けて5%以上毟られバーチャル嘔吐しかけた記憶が蘇りましたが、それはレーティングシステム上ごく自然な動きなのです。逆に言えば、どんなジャイアントキリングをしても7.0%以上は増えない(特殊な補正があったら別ですが)ことになります。
そして、期待勝率がわかるということはレート差が推定できるということ。
早見表では、というかイロレーティングの仕組みでは、レート差100は勝率64%、差200は勝率76%程度になります。
表から察するに、達成率20%差はレート差40程度と推測されます。
よって、同じ段位の地下(0~20%)プレイヤーに3勝1敗以上のペースで勝てるなら十分に昇段が狙えるし、同じ段位でも0%と100%のプレイヤーでは約200のレート差があるわけです。
そして七段昇段に必要なのは、上振れが来た時に100%を超えられる実力。
上振れというのは、一時的な勝敗の偏りによって、実力よりも上の内部レートを保持している状態です。将棋ウォーズにおいては、棋神で勝ちまくった後にきっぱり使うのをやめた際にも同じ状況になりますね。
せっかく表を作ったので思考実験。上振れによって達成率(内部レート)が六段の80%に到達した状態から昇段チャレンジを始めるとして、どの程度の実力、あるいは運があれば昇段に足るか、考えてみましょう。
うんと単純化して、相手は六段の①0~20%、②20~40%、③40~60%、④60~80%、⑤80~100%のいずれかしか存在せず、このどれかの相手を最初に決めて延々当たり続けるものと仮定します。
期待勝率は自分の実力通りで、達成率の増減は六段80%相応、という条件で計算します。
計算方法はいろいろありますが、ここではバルサラの破産確率表というのを使ってみます。
ギャンブルや投資において、勝率と勝敗に対応する利得と損失、持っている資金をもとに、その資金をすべて失う確率が出てくるという便利な表です。
FXの世界でよく使われるらしいのですが、わたしはお金持ってないのでよく知りません。案件ください。
破産確率の考え方に当てはめるために、問題の形を整形します。
資金:20(%)
昇段までの残りの達成率です。勝敗の試行を繰り返して、これが0になる確率、がほしいわけですね。
ここの%はあくまで奪い合っている見かけ上の達成率という数字で、確率には関係ないので注意。
勝率:1-(レート差に基づく期待勝率)
利得:負けて失う達成率
損失:勝って得られる達成率
は?と思うかもしれませんが、逆に考えるんだ、破産しちゃってもいいさ…ということです。
昇段=破産と置いているので、破産するために昇段までの20%を将棋を勝っちゃうことで失い続けてゼロにできる確率の話をします。
もちろん実際には昇段を目指して本気の本気で将棋を勝ちにいくのですが、その勝率は期待勝率通りにふるまうとして、将棋の勝敗と資産が増減する試行1回の勝敗は逆だよ、ということです。
バルサラの破産確率表で使うのは
勝率
ペイオフレシオ(利得/損失)
リスク資金比率(損失/資金)
の3要素。資金は20で固定、期待勝率に従ってたくさん将棋を指して、1局将棋を負けたらその達成率分破産から遠ざかる、勝ったら破産に近づく。
将棋の勝率が高いほど破産=昇段する確率が高い、という自然な考えに寄ってきましたね。
シミュレーションには
https://www.fxlogbook.jp/ruin/
の計算機を利用しました。バルサラの破産確率表についてはExcelの表や画像が出回っていますが、リスク資金比率ごとの扱いの違い、勝率が10%や5%刻みのものなどあったりして微妙、ということでこちらを使いました。
手法として正しいかは知りません。
賭けているのはわたしのお金でもあなたのお金でもなく、将棋ウォーズというゲームの勝敗で増減する数字のみです。そのシミュレーション、実践すらしていないわけなので責任は当然ありませんよね!
ではスタート。
・自分の実力が六段地下(0~20%)の場合
相手が
①六段0~20%(期待勝率50%、勝ち+2.0%、負け-5.0%)
計算式上での勝率は1-0.5=0.5
将棋を1局勝つことでの損失は2.0
1局負けることでの利得は5.0
この試行を続けて残り20の資金を”破産”させる確率は?
シミュレーターの計算結果は
破産確率:0.36%
でした。
②六段20~40%(期待勝率43%、勝ち+2.3%、負け-4.7%)
計算式上での勝率は1-0.43=0.57
将棋を1局勝つことでの損失は2.3
1局負けることでの利得は4.7
シミュレーターの計算結果は
破産確率:0.24%
でした。
③六段40~60%(期待勝率38%、勝ち+2.7%、負け-4.3%)
計算式上での勝率は1-0.38=0.62
将棋を1局勝つことでの損失は2.7
1局負けることでの利得は4.3
シミュレーターの計算結果は
破産確率:0.35%
でした。
④六段60~80%(期待勝率33%、勝ち+3.1%、負け-3.9%)
計算式上での勝率は1-0.33=0.67
将棋を1局勝つことでの損失は3.1
1局負けることでの利得は3.9
シミュレーターの計算結果は
破産確率:0.43%
でした。
⑤六段80~100%(期待勝率28%、勝ち+3.5%、負け-3.5%)
計算式上での勝率は1-0.28=0.72
将棋を1局勝つことでの損失は3.5
1局負けることでの利得は3.5
シミュレーターの計算結果は
破産確率:0.45%
でした。
実力が六段地下(0~20%)である場合、達成率が六段80%の地点から始めたとしても、相手の強さにかかわらず昇段確率は1%を切るとわかりました。
そもそも将棋ウォーズにおける段級の仕様上、自身の実力が六段地下である限りは、幸運に恵まれて七段に昇段したとしてもすぐに0.0%に張り付き、500敗とともに六段へ逆戻り、が関の山です。今いる段位の地上を維持する実力がなければ昇段してもすぐに跳ね返される、という話は既述ですね。
では、ここからはプレイヤーの実力を高めて、六段80%というスタート地点から昇段できる確率を考えていきます。
・自分の実力が六段地上(20~40%)の場合
相手が
①六段0~20%(期待勝率57%、勝ち+2.0%、負け-5.0%)
計算式上での勝率は1-0.57=0.43
将棋を1局勝つことでの損失は2.0
1局負けることでの利得は5.0
シミュレーターの計算結果は
破産確率:2.23%
でした。さっそくだいぶ夢のある数字が出てきましたね。
このぐらいなら、実際に昇段した方もいると思います。
月次6.2~6.4段ほどで、七段の0~5%に張り付いているけど降段はしない、というプレイヤーです。
そろそろ慣れてきたでしょうから、ここからは条件ごとに期待勝率だけ書いて最後に表の形でまとめます。
②六段20~40%(期待勝率50%、勝ち+2.3%、負け-4.7%)
破産確率:1.41%
③六段40~60%(期待勝率43%、勝ち+2.7%、負け-4.3%)
破産確率:1.23%
④六段60~80%(期待勝率38%、勝ち+3.1%、負け-3.9%)
破産確率:1.55%
⑤六段80~100%(期待勝率33%、勝ち+3.5%、負け-3.5%)
破産確率:1.75%
・自分の実力が六段地上(40~60%)の場合
相手が
①六段0~20%(期待勝率62%、勝ち+2.0%、負け-5.0%)
破産確率:8.07%
②六段20~40%(期待勝率57%、勝ち+2.3%、負け-4.7%)
破産確率:7.91%
③六段40~60%(期待勝率50%、勝ち+2.7%、負け-4.3%)
破産確率:6.67%
④六段60~80%(期待勝率43%、勝ち+3.1%、負け-3.9%)
破産確率:5.23%
⑤六段80~100%(期待勝率38%、勝ち+3.5%、負け-3.5%)
破産確率:6.10%
・自分の実力が六段地上(60~80%)の場合
相手が
①六段0~20%(期待勝率66%、勝ち+2.0%、負け-5.0%)
破産確率:22.93%
②六段20~40%(期待勝率62%、勝ち+2.3%、負け-4.7%)
破産確率:27.16%
③六段40~60%(期待勝率57%、勝ち+2.7%、負け-4.3%)
破産確率:34.78%
④六段60~80%(期待勝率50%、勝ち+3.1%、負け-3.9%)
破産確率:26.78%
⑤六段80~100%(期待勝率43%、勝ち+3.5%、負け-3.5%)
破産確率:19.98%
・自分の実力が六段地上(80~100%)の場合
相手が
①六段0~20%(期待勝率72%、勝ち+2.0%、負け-5.0%)
破産確率:100.00%
②六段20~40%(期待勝率66%、勝ち+2.3%、負け-4.7%)
破産確率:74.50%
③六段40~60%(期待勝率62%、勝ち+2.7%、負け-4.3%)
破産確率:100.00%
④六段60~80%(期待勝率57%、勝ち+3.1%、負け-3.9%)
破産確率:100.00%
⑤六段80~100%(期待勝率50%、勝ち+3.5%、負け-3.5%)
破産確率:100:00%
表にするとこんな感じ。
ということで、(棋神や上振れで)達成率80%まで来たとして、そこから昇段するにはどの程度の実力、運が必要か…?という問いへの答えが出ました。
・80%を保てる実力があるなら放っておいても勝手に上がる
・60%を保てる実力があるなら試行回数次第で上がれる
・40%ほどの実力があるならよほど運が良ければいけるかも?
・20%保てないようではまず上がれないし、上がっても落ちるので鍛え直せ
・相手の強さより自分の実力をつけることを気にしたほうがいい
・(誤差やプレイスタイルで別れる程度の差だがしいて言えば)自分より
R-40~80程度下の相手と戦い続けるのがわずかに上がりやすい
という教訓が得られましたね。そりゃそうだという感じですが、こうして数字で示されると説得力が増します。ちなみにこれ、開始資金=始める地点から昇段までの達成率をいじってもそんなには変わりません。よかったらいろいろ試してみてください。将棋は実力のゲーム。
この計算をしたのは昇段のあとですが、「ちゃんとやったら七段昇段できるかな…?」というわたし(六段40~60%)の肌感覚は当たらずとも遠からず。やっていれば上がれる可能性はあるけど、より実力を高めていくことで自然に達成したい…という将棋への向き合い方は、将棋ウォーズで昇段するための数字上の適切な戦略にもマッチしていたようです。
ちなみにわたしは潜っているときの設定はおまかせで通しました。
将棋技術と実践の話
ここからは流れを変えて、わたしが将棋ウォーズで勝つ/将棋の実力を高めるために何をしたか、という話です。
昨年のわたしはホームグラウンドがどことか関係ないくらいには実戦不足、アウトプットを欠いていました。
相掛かりのことを考える動画を出したり、こうしていろいろ論をこねくり回していながら、実戦で運用するための視座や経験が欠けていた、そもそも場数が足りな過ぎて中終盤の手が全然見えてない、というのが昨年の取り組みを通じて得た反省でした。
なので今年は実戦の数を増やす、序盤に力を入れるのはもちろんだけど、ソフト推奨手だけではなく、実際の対局で遭遇する指し手や、自分がどの程度序盤の組み立てを理解してどの程度実践できているか…の、経験から知識へフィードバックする動きを強化しようと思ったわけですね。
将棋ウォーズ3切れ七段を目指すにあたって取り組んでいた期間の動きは
・毎日10局3切れを指す
・すべて動画を撮影して好局は対局動画へ
・すべて棋譜解析し、必要に応じて自分用の定跡ファイルへ取り込む
というものでした。もちろん人によって戦型選択、日々将棋に割けるリソースなど違いますが、わたしはこれで昇段できました、とだけ。対局動画作成から逃げるな
実践に照らした序盤の知識、中終盤での対応力や瞬発力など、3分切れ負けを通じて自分の将棋に足りないピースが埋まっていった感覚がありました。
数字の上でも最後のほうは月次段位で6.8~6.9をキープできていたので、何度か昇段戦で負けても「確かな実力がついている以上いずれ上がれる」という考えでモチベーションを保てました。
結果
2023年2月10日、七段へ昇段しました。
99.9%で止まること2回、そこから負けること1回とかなり足踏みしましたが、月次段位6.98段とあるように、実力的には時間の問題だったということになります。
勢いに乗って一気に月次7.2ぐらい出して昇段するのも、月次6.6以上で時間をかけて試行回数に任せるのも、同じ昇段、プレイスタイルの差ということです。
ちなみに棋神は10局に1~2個のペースで投げました。
七段帯ではノーマル棋神より素で強い人、素で上回れなくともある程度形勢をリードしていれば逃げ切れる人、投げたことを察知して手数や時間を稼ぐ技術を持っている人などが多くいるので、無課金でもらえる分だけではなかなか昇段に結び付かないと思います。
個人的には、投げることで10手先のあまり読んでない局面に飛んでしまうとミスが出やすくて勝率が下がるな~と感じています。
優勢であることはわかっているけれど方針に迷う、みたいな局面で使えるとノーマルでもなかなか強いですね。その判断も含めて、将棋ウォーズというゲームでのリソース、実力の一つだと思います。
データ
1日10局生活を始めた1月6日から、昇段した2月10日までの棋譜360局について、kifubaseで先後に分けて戦型分類、分析しました。
筆者先手の棋譜
棋譜数 : 185
先手(下手)勝ち: 138
後手(上手)勝ち: 45
先手(下手)宣言勝ち: 0
後手(上手)宣言勝ち: 0
千日手 : 1
持将棋 : 0
中断 : 1(わたしの回線不調による接続切れ負け)
先手(下手)勝率: 0.746
後手(上手)勝率: 0.243
平均手数 : 88.962 千日手を含む
平均手数 : 88.978 千日手を除く
将棋ウォーズで「詰み」で決着した棋譜はkifubaseの統計計算機能で先手後手いずれの勝ちにも算入されないので、そこは手作業で足しました。
柿木将棋の戦型分類機能によるとこんな感じ。
初手▲2六歩は固定、△8四歩には相掛かり、△3四歩には▲7六歩で好きにやれよ…のストロングイビシャスタイルで通しました。
一応相掛かりをエースとしている手前、7割は超えていてほしいという気持ちもあったのですが及ばず。後手で相掛かりを受けてくれる人は詳しくて地力のある方ばかりなので、むしろ上出来と呼ぶべきでしょうか。
稼ぎ頭は対雁木、ゴキ中、角交換振り飛車の3本。早指しでの遭遇率が高いうえに対策しだいでかなり勝率を高められるので、予想以上に数字へ貢献してくれました。
逆にノーマル四間、三間には苦戦気味。ここをもう少し強化する必要がありそうですね。
筆者後手の棋譜
棋譜数 : 175
先手(下手)勝ち: 46
後手(上手)勝ち: 127
先手(下手)宣言勝ち: 0
後手(上手)宣言勝ち: 0
千日手 : 1
持将棋 : 0
中断 : 1 (詰みの局面での相手の接続切れ)
先手(下手)勝率: 0.262
後手(上手)勝率: 0.726
平均手数 : 96.863 千日手を含む
平均手数 : 97.115 千日手を除く
戦型別に見るとこちら。
スタイルとしては2手目△8四歩で固定、雁木は相雁木で横歩は角換わりを受けようとしたら▲7七角ではなく▲7八金と上がられていたのに気づかずうっかり△3四歩を突いてしまい…のパターン。
思ったよりも先後で傾向がはっきり分かれていてビビりました。
相掛かりはおそらく嬉野流をやる人が相対的に多い影響かも。早指しなりの理のある指し方なので、序盤の方針をある程度固めておいて時間負けしないよう対策したのが効いたかな。
角換わりはずっと自信が持てない変化があり、「自分より角換わりわかりし者来るな、来たら先手番をよこせ…」と祈りながら潜っていました。先手角換わりは右玉一本の人も多いので、そこに対策を固められたのが数字に寄与しましたね。
矢倉、相雁木も同様で、頻出する形に自分なりの対策、指し方を固めておくのが何より大事なんでしょうね。
対振りのほうでは、先手でかなり苦戦したノーマル四間・三間に爆勝ちしているのが注目すべきところ。千日手や形を先に出させるなど、後手番特有の利点もあるのですがさすがにこの差は驚きですね。
もう少し後手ノーマル振り飛車の対策へリソースを割くべしというお告げかもしれません。
逆に、先手でお得意様だった中飛車、角交換振り飛車には苦戦。
先手後手で定跡ファイル、序盤の考え方を完全に分けているのが吉なのか凶なのか。
葛山わさびの考える葛山わさび対策
居飛車党
先手なら角換わり、後手なら横歩取りor相掛かりで研究を上回る
振り飛車党
先手は中飛車でドンパチ、後手ではノーマル三間/四間飛車でチャンスを待つ
ということになりました。将来的に対策を「葛山わさびより将棋強くなる」の一点に絞れるように、序盤の穴を減らしていきたいですね。
ともかく、こうして序盤のフォームを固めていくとともにデータを味方につけることで、指し手がブレないだけでなく振り返りや分析の助けになるよ、という話でした。
kifubaseはいいぞ。
おわりに
簡素な昇段報告にとどめるつもりだったのですが、色々と書きたいことが膨らんできて10000字超えの大作となりました。
読んでくださった方、お疲れさまでした、ありがとうございました。
さすがに動画にはしようがないので、せめてもう一度チャンネルのリンクだけ置かせてもらいます。
今後もVの者として自分なりのペース、考え方で将棋やっていきますので、よかったらチャンネル登録やTwitterのフォローなどいただけるととても嬉しいです。
ではではまたいずれ!
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