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君を見ている

君を見ている。他でもない君を。

世界の底の底、反転して遥か頂上の果て果て、

全てがキリコの絵画めいた匿名性を抱える

ゴーストタウンのようなこの場所で、

自身の尾っぽを飲み込む大蛇の蠕動を感じながら。

茹だる暑さに歪む屹立する灰色のオブジェを背景に、

いつも君を見ている。

君が正しくあろうとする行いの裏の卑しい混沌すらも見ている。

与えられた飴玉を噛み砕いて飲み込んで、

硬化した糖蜜が柔らかく温かく溶けていく前に

君は喉を掻きむしって吐き出してしまう。

涙を流して嗚咽する君を見ている。

君はそれを、世界の明るいもの、温かいもの、柔らかいものへの

背徳だと言って膝を抱えてふさぎ込んでいる。

そのように蹲る君を見ている。

君を見ている私は、誰だ。

君がひた隠す君の「背徳」をすべて知っている私は、誰だ。

愛してる、愛してる、愛してる、愛してる。

君を見ている。

世界に愛されたいという傲慢を、君の強情が許せるはずはないから、

深淵、ディオニュソスの統べるこの底の底で君が私を仕掛けたのだろう。

愛してる、愛してる。それでも君を愛してる。

アプラクサスの卵の中、殻を破る方法を私は知らない。

ここは君の牢獄。

君だけが出入りできる柔らかな牢獄。

いつでもここに来ればいい。

いつでも君を見ている。

後ろ暗いすべてはここに捨てていけばいい。

抱えきれないものを拾い上げてしまう君のことも知っている。

大丈夫、愛してる。愛してる。

君を見ている。


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