大坂なおみやアメリカンスポーツとBLMの関係-彼らが声高にBLMを主張するのはなぜなのか-
日本時刻8月27日。アメリカのスポーツ界では大きなことが立て続けに起こりました。
まずNBA。当日行われる予定だった全ての試合をボイコットすることを決めます。
NBAに続く組織も。MLBも6試合中3試合を中止する運びとなりました。
そしてプロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手が、準決勝まで進んでいたトーナメントを棄権することを発表しました。
強敵アネット・コンタベイト選手を破り、自身も好調の中での決断です。
*8月28日追記:大坂選手の声明を受け、大会(ウエスタン・アンド・サザン・オープン)運営も準決勝の開催を1日延期するという判断を下します。そして運営側からの要請もあり、大坂選手は棄権を撤回することを発表しました。
これは日本でも大きな話題になり、彼女のSNSには2000件を超えるリプライが付いています(8月27日18時現在)。
プロスポーツ選手である彼らが自分たちの収入源である試合を放棄する行動を起こしたのは何故なのか。
NBAを中心としたアメリカンスポーツの速報の翻訳・記事の執筆をしていた私が、なぜ彼らがコロナ禍の社会においてここまで積極的にBLMを主張するのかを記したいと思います。
また。
スポーツ選手がこのような政治的行動をとることに対して日本では賛否両論ありますよね。
この記事を書こうと思い立ったきっかけは皆さんが今回の問題に対してどういう認識を持っているのかを知りたいから、そして彼ら彼女らが何と戦っているのかを1人でも多くの人に知ってほしいから。この2点です。
ですので、この記事をお読みになって思ったこと、私はそれは違うと思うなどなどコメントをいただけると嬉しいです。
私の認識違いへの指摘でも構わないので、建設的な議論ができましたら幸いです。
読んでいただけたならシェアをしていただけますと尚嬉しく思います。
以下だ・である調で失礼します。
今回のボイコットに至った理由
事の発端は黒人のジェイコブ・ブレイク氏が白人の警官により7発の銃弾を撃ち込まれた事件。
氏に前科があった、スタンガンでは動きが止まらなかった、そして警官の静止命令を無視して車の中から何かを取り出そうとする動きを見せた等の状況があったとはいえ、超至近距離からの7発の銃弾は明らかに過剰。
警官は2人いるので、氏の行動を抑止するためならば1人が体を抑え、1人が銃口を押し付ければそれで済むはず。
この様子は動画で撮影されSNSで拡散されているので、もしご興味がおありならばご自身で調べていただきたい。
”事の発端は”とは言ったもののBLM(Black Lives Matter)運動が過熱する中で起きた事件なので、あくまで1つのきっかけに過ぎないのだろう。
大坂なおみのBLMへの取り組みと、日本における無理解
彼女の件のツイートを引用させていただいた。
リプライを見てみると、目に付くのはやはり日本語。
”スポーツに政治を持ち込むことへの是非”、そして”黒人だから撃たれたわけではなく前科があることを警官が把握していたから撃たれたのだ”というツイートが多いように思う。
彼女の行動に対する私の見解は以下の通り。
私は大会を辞退するという決断をした彼女を心から支持する。
そもそも日本とアメリカでは常識が違うのだ。
詳しい違いについては下の章に記すが、アメリカを拠点に活動する彼女を日本の常識で批判するのはお門違い。
誹謗中傷はもっての外。
みなさんがどういう認識を持っているかは存じ上げないが、BLMは最早政治に留まる問題ではない。
彼らの命に直接関わっている問題なのだ。
なぜなら。
黒人は白人に比べ不利な社会的状況下に置かれているのに、彼らを守るべき公権力によって殺される例が後を絶たないからだ^5。
そしてこれはBLMで繰り返し叫ばれていることであるにも関わらず、日本人はこの点における認識が決定的に甘い。
大坂なおみはアメリカでも抜群の知名度を誇る。
彼女が理由もなく警官に殺されることはないだろう。
しかし彼女の友人は?一般人にすぎない彼女の友人となれば話は違う。
彼女の友人は、警官の前でポケットに手を入れただけで撃たれてしまうかもしれない。
そんな世界考えられるか?
でも。彼女が住んでいるのはそんな世界なんだよ。
黒人が少し不審な動きをしたから警官に撃ち殺されるっていう事件が実際に何度も何度も起きてる世界なんだよ。
アメリカってそういう国なんだよ。
誰もが安心して暮らせて、失くした財布が1週間あれば戻ってくる日本のような、平和と安全が保障された国なんかじゃ決してない。
日本で言う愛知県のような、自動車産業で栄えたデトロイト市には今や世界屈指のスラム街がある。
”デトロイト”っていうドキュメンタリー映画を見てくれ。胸糞悪くてたまらない映画だけど、アメリカが抱える闇がどんなものかよく分かる。
そういう世の中を変えようと、”私はアスリートである前に黒人女性です”って言って棄権したんだよ。
もし俺が大坂なおみだったら。
ここまでの状況に置かれても、多分試合の棄権はできない。だって日本から誹謗中傷の嵐を受けることは目に見えてるから。
あれだけ応援してくれた自分のルーツから手のひらを返されたようにボロクソ言われるようなことなんて怖くてできねえよ。もともとこういう賛否両論ある意見を述べることすら超苦手だし。
だからこそ俺は今回の決断に至った彼女を心から尊敬しているし、彼女がボロクソに誹謗中傷を浴びせてくるにも関わらず日本というルーツを大事にしてくれていることに申し訳なさと有り難さを感じる。
「常識が違うなら大坂なおみは日本人じゃない」と言うなら、クソリプを飛ばす前にやってほしいことがある。
彼女が日本語で綴った文章を読んでくれ。
彼女の問題解決に向けた強い想いを感じてくれ。
なぜ日本語訳を同時に載せたのかを考えてくれ。
そして。
彼女がどういう環境で生きていて、どういう考えで行動を起こしたのかに関心を持ってくれ。
テニスで生活してる彼女がトーナメントを棄権することは、俺らが職場や学校をサボることとは根本から違うんだよ。
彼女が流行りやファッションに乗っかってBLMを掲げていると思っているなら、今すぐ認識を改めてくれ。
何度でも言うけど、BLMは単なる政治問題なんかじゃない。
彼ら彼女らの命に直接関わる問題なんだよ。
だから私は、大会を辞退するという決断をした彼女を心から支持する。
アメリカンスポーツでBLMが盛んな理由。その①
続いてアメリカンスポーツとBLMの関係を説明したいと思う。
アメリカンスポーツ、つまり北米4大スポーツといえばアメフトのNFL、バスケのNBA、アイスホッケーのNHL、そして野球のMLBだ。
この中でも私が専門としていたNBAとNFLについて、BLMに積極的な理由を2つ述べたいと思う。
1つ目は、リーグにおける黒人人口の割合の高さだ。
黒人(以下ではアフリカ系のルーツを持つ人々を黒人とする)が占める割合を見ていくと、北米4大スポーツではNHLが5%以下^1(690人のプレイヤーに対しておそらくヒスパニックも含むであろう有色人種が43人)と最も少ない。
次いでMLBが7.8%^2。アメリカにおける黒人の割合が13%前後であることを加味すれば、これらが低い割合であることが分かる。
ところが、NFLとNBAでは話が違う。
NFLでは黒人の占める割合が70%^3に及ぶ。
ポジションごとにこの割合が綺麗に分かれるのが面白いところで、高いレベルの戦術的思考能力が要求される、要するに頭が良くなければできないポジションであるクォーターバックとセンターでは20%前後に留まるのに対し、守備の要であり最も高い身体能力が要求されるポジションであるコーナーバックでは99.4%にもなる。
この背景には身体能力を磨くことがプロへの最短ルートとなる黒人に対し、戦術眼を磨く時間的余裕がある白人という違いがあると私は考えているのだが、これは私の所感に過ぎずエビデンスが無い。なので、NFLにおける黒人人口の割合は
という2点だけ覚えていただきたい。
NBAはNFLよりもさらに高い割合で、81%^4にもなる。ベナンと日本にルーツを持つ八村塁もこのうちの1人だ。
こういった人数比もあり、NBAとNFLは現在BLMに対してかなり積極的なアクションを起こしている。
特にNBAは組織のトップに当たるコミッショナーが2014年2月にアダム・シルバー氏に代わってから、黒人差別を包含する言葉である”Rights(人権)”を組織として尊重する姿勢を明確に打ち出すようになった。
着任からわずか2ヶ月後の2014年4月、NBA所属チームであるロサンゼルス・クリッパーズのオーナーであったドナルド・スターリング氏の人種差別発言の録音が公開される、という事件が起きる。
するとシルバー氏は彼に250万ドルという巨額の罰金を科した上でNBAから永久追放したというケースが良い例だろう。
昨年(2019年)10月に同じくNBA所属チームであるヒューストン・ロケッツのゼネラルマネージャーであるダレル・モーリー氏が香港でのデモを支持する旨のツイートをした際には、中国側からの激しい批判を受けた。
そして中国企業のスポンサーが相次いでロケッツから撤退する事態にまでに至る。
モーリー氏は即座にツイートを消し謝罪したが中国の怒りは収まらなかった。
結局、同チームの絶対的エースにして現役選手屈指の点取り屋でもあるジェームズ・ハーデンまでもが謝罪することとなったが、シルバー氏の対応は違う。
彼はモーリー氏の発言を表現の自由の下で認めた上で、謝罪を断固として拒否する姿勢を見せた。
NBAとは、それほどまでにRightsに関して強い信念を持つ組織なのである。
BLMに関して言えば、八村が自身の所属するワシントン・ウィザーズを代表してBLMのデモに参加していたことも記憶に新しいのではないだろうか(もっとも彼も、大坂なおみと同じくTwitterで熱心な誹謗中傷を浴びていたが)。
さらに8月25日に行われた試合の後のヒーローインタビューで、NBA選手会の会長を務めるクリス・ポールはブレイク氏が銃撃された事件について繰り返し触れていた。
この日行われた試合はWin or Go home(勝つか帰るか)とも言われるNBAのプレーオフトーナメント。日本プロ野球のクライマックスシリーズ・日本シリーズをより大規模にしたようなものといえばどれだけ重要な試合か想像しやすいだろう。
そんな重要な試合で、ポール自身が八面六臂の大活躍でチームを引っ張り、鮮やかな逆転勝ちを演出した直後のインタビューで彼はブレイク氏が受けた理不尽を世の中に訴えたのだ。
これは余談だが、私がブレイク氏の事件について知ったのはこのポールへのインタビューがきっかけである。
NBAとはそんな組織なので、試合をボイコットするに至ったことも驚くことこそあれ、不自然で安っぽい人気取りの為の行動だと感じることは全くないのである。
アメリカンスポーツでBLMが盛んな理由。その②
アメフトやバスケは高いレベルに登れば登るほど、フィジカルがないと話にならないスポーツだ。
”黒人は他の人種に比べ身体能力が優れている”というのはよく聞く俗説であるが、世界中で見られる傾向として貧困層には相対的に黒人が多い^5。
これは俗説などではなく歴とした、そして今後変えなければならない事実だ。
そのため、貧困層にいる黒人の少年が初期費用がボールだけで済むバスケやサッカーでプロ選手になることを目指すケースは多くあり、NBAは特に世界中からそういった選手が集まる傾向にある(サッカーで言えばヨーロッパで活躍するクリスティアーノ・ロナウドやズラタン・イブラヒモビッチ、サディオ・マネといったスター選手も同じケース)。
”バスケの神様”と称されるマイケル・ジョーダン氏と比較されるほどの実力を持ち、NBAの現役選手の中でも最強の呼び声高いレブロン・ジェームズは、わずか16歳の母の元に生まれた。そして幼い頃は引越しを繰り返す環境で育つ。
ジェームズに次ぐNBAの次世代を担う25歳のスターにして、昨シーズンのMVPであるヤニス・アデトクンボも同じである。
彼はナイジェリアからギリシャに渡った不法移民である両親のもとに生まれ、家賃を払うことすらままならなかったこともあるという。
そんな過酷な環境で育った彼らは、幼い子供達に自分と同じ思いをさせたくないという意識を強く持っている。
黒人(もちろん貧困層は黒人だけではないが)が虐げられ、弱者として生きていかざるを得ない世界を良しとしないのだ。
こういった事情から、平均年俸が7億円という破格の給料をもらっている彼らが慈善団体への寄付ならびに寄付に留まらない活動を積極的に行うのは、至って自然な流れだろう。
先述のジェームズを例に挙げれば、彼は自身の財団を通して自治体と連携し"I Promise school"という公立校を立ち上げた。
貧困層の学習が遅れている子供達を受け入れ、子供達の両親まで含めたサポートをする革新的な学校だ。
3年連続でシーズン平均成績がトリプルダブルという前代未聞の快記録を残したラッセル・ウェストブルックという選手も、彼が10年以上にわたって所属したチームがあるオクラホマに若年層への支援を行う地域密着型の財団を設立した。
もちろん全員がジェームズやウェストブルックのような活動をしているわけではないが、過酷な環境で育ったが故にBLMへの当事者意識が強く根付いていることはお分かりいただけただろうか。
自分を育ててくれたコミュニティに恩返しをする。そんな文化がアメリカンスポーツにはあるのだ。
BLM活動も子供達に同じ思いをさせないための、そうした恩返しの一環なのである。
アメリカでもこうした活動について批判はあった〜居場所を失ったNFLのスター〜
今でこそBLMの合言葉の下で数々のアクションがなされているアメリカンスポーツであるが、昔からこれが一般的だったわけではない。
当然批判も多くあった。これは白人が社会の多数を占めているのだから当たり前のことだろう。
その代表的な一例がNFLのスター選手、コリン・キャパニックだ。
コリン・キャパニックはズバ抜けた頭脳を武器にサンフランシスコ・フォーティーナイナーズで活躍したクォーターバックであった。
彼は「人種差別がまかり通る国に敬意は払えない」として開始直前の国歌斉唱での起立を拒否する。
日本に置き換えて考えると、全員が並んで君が代を歌っている中で1人だけ座って見ているようなものだ。子供達の模範となるべきスポーツ選手が、である。
日本を愛する人ほどこの行動は受け入れがたいものであることがお分かりいただけるだろう。
これはアメリカでも大きな話題となり、この件があったからかどうかは定かではないがキャパニックはその後どこのチームとも契約を結んでもらえない事態となる。
当時28歳、”身体能力の全盛期を迎えた時期で”である。
NFLはその後国歌斉唱時の起立を事実上義務化することで彼の行為を否定する。
その一方で、彼の行動を支持した世界的スポーツメーカーであるナイキが製作した、彼を起用した広告がとある広告誌の最優秀賞を受賞した。
賛否が大きく分かれる事態となったのである。
その後ジョージ・フロイド氏の死をきっかけにBLM運動が活発になってくると、NFLのコミッショナーはキャパニックに正式に過ちを認め謝罪している。
奇しくもキャパニックが問題となる行動を起こしたのは2016年8月26日。
そしてこれは現地時間でのことで、日本では翌日に当たる8月27日、つまり4年前の今日なのだ。
キャパニック本人も、自身が行動を起こしたちょうど4年後にアメリカのスポーツ界がここまで大きな行動を起こすことなどまさか夢にも思わなかっただろう。
BLMから続く数々のアクションに先駆けたキャパニックの行動は、NFLにおける人種差別意識を改善するに至ったのである。
日本とアメリカのBLMへの認識の違い
日本は”和を持って貴しと為す”社会で、儒教文化の影響(私はこういった認識なのですが違っていたらすみません)もあり、年長者を尊ぶことで彼らの身に付けた見識を学び、協調性を第一に考える国民性である。
はっきり言って私は日本が大好きだ。
強い自己主張ができず、真っ向からぶつかり合う議論が苦手な私にとって日本ほど暮らしやすい国はない。財布落としても帰ってくるし。
対してアメリカはどうだろう。
”人種の坩堝(るつぼ)”とも評されるアメリカは、戦争によってイギリスから独立を勝ち取った多民族国家であるが故に”自由”や”平等”に対する強い意識を持ち、激しく自己主張をする国民性(これも私の認識です)だ。
これらの違いはどちらが良いとかどちらが上といった話ではなく、それぞれの個性として考えるべきである。
コロナウイルスが蔓延する昨今においてソーシャルディスタンスのカケラもないデモを敢行するのはどうなのと思われるだろうが、この理由は極めてシンプルだ。
彼らにとっては”自粛して得られる身の安全よりも、デモをすることで黒人が強いられている不平等を是正するチャンスを残すこと”の方が大事なのだ。
日本では著名人が政治について語ると煙たがれる。
それは”人前で政治や宗教の話をすることは揉め事につながる”からではないだろうか。少なくとも私は両親からそう教わって生きてきた。
しかしアメリカでは違う。彼らは自分、もしくは近しい人が不平等を強いられているのならば声を上げる。
とあるセンシティブ問題が起きたとして、解決できる人に任せて残りの多数は口を挟まないのが日本。
余計な争いごとを一切起こさないための知恵だ。
しかしアメリカでは違う。多数がガンガン口を出し、各々が各々の望む方向へ進めようとする。
当然争いは起こるだろうが、多数が同じ方向を向いた時これほど強い国は無い。
太平洋戦争の契機となった真珠湾攻撃に端を発したRemember Pearl Harbor(パールハーバーを忘れるな)がいい例なのではないか。
しかも今回問題になっているBLMはただのセンシティブな問題ではない。
200年以上放置され、キング牧師やジョン・F・ケネディといった誰もが知るような偉人でさえ解決できなかった問題なのだ。
そしてこれは最早政治の枠を超え、自分や近しい人が命を落としかねない問題なのだ。
それほどまでに大きな問題と、アメリカ国民は今かつてないほど真剣に向き合っている。
強大な全体主義国家と戦うために作られたRemember Pearl Harbor情勢においてでさえ無視された黒人の人権を、真の意味で平等なものにするために。
それがBlack Lives Matter(黒人の生活も大事)なのだ。
もうひとつ大事なこと。
日本でのBLMの報道はソーシャルディスタンスが守られていないデモ隊や一部の暴徒化したデモ隊による被害ばかりが取り沙汰されている印象がある。
報道のあり方については本筋から外れるので割愛するが、今後報道を目にするときはこの点をよく注意してほしい。
暴徒化しているデモ隊は”一部”でしかないのだ。
一部でないその他の多数は、本気で世の中を変えるために叫んでいるのだ。
大坂なおみをはじめとするプロスポーツ選手たちの行動も、その大きな潮流の中の1つの流れにすぎない。
この阿鼻叫喚にして前代未聞のコロナ禍において。
彼らが何を叫んでいるのかはもう言わなくても分かるだろう。
Black Lives Matter(黒人の生活も大事)
終わりに
今日という日は、もしかしたらアメリカをはじめとした世界中の黒人差別を変えるかもしれないきっかけを作った1日になり得るやもしれません。当然私は職業柄人より少しアメリカンスポーツに詳しいだけの一般人で、私が記したことが全て正しいと申し上げるつもりも毛頭ございません。
しかし。
しかしです。
1人のアメリカンスポーツを愛する者として。
私の愛する彼らが正面から向き合い、そして戦っている”黒人が不利益を被らなければならない社会構造の歪み”という巨悪をしっかり認識し、改善するための手伝いをすることは私にとって義務なのだと感じ、このnoteを書くことを決意しました。
無知は罪なりとソクラテスは言いましたが、日本を出れば我々は有色人種として蔑まれる立場にあり、歴史を振り返ると関東大震災の際には偏見と流言を理由に朝鮮人を殺傷した過去があります^6。今現在も私たち日本人が単一民族国家であるという認識(※Twitterにてむらせぶん様よりご指摘をいただきました。誠にありがとうございます)が故に、気付かぬうちに外国人を差別しているかもしれません。
八村選手を例に考えてみましょう。
彼は父親がベナン人、母親が日本人で、富山県富山市で生まれた日本人です。インタビュー等から彼がいかに故郷の富山県を愛しているかが窺い知れます。
しかしSNSでは、匿名の立場を悪用した彼を差別する言動が後を絶ちません。
日本人として富山を愛し、日本代表としてチームを引っ張る彼でさえこのような差別を受けているのです。
これが見知らぬ外国人だったら、あなたの心に差別や偏見の意識が無いと言い切れる人は少ないのではないでしょうか。
私には言い切れませんでした。BLMに対しても最初は「こんな時期にバカじゃねえのこいつら」という認識でした。
彼らの思いを知った今でも、BLMの活動が全て正しいとは思いません。
一部の暴徒達なんて認められていいはずがないし、白人声優の変更や使用語句の変更には同調圧力のような、一種の全体主義的な印象を受けました。物書きという立場からするととても複雑な気持ちです。
これはBLMが行き過ぎているのか、それとも私の理解が足りていないだけなのかは分かりません。
それでもBLMについて詳しく調べてみると、彼らがどれだけ真剣に社会に根深く浸透した問題と向き合っているかがよく分かりました。
BLMは決して他人事にして良い問題、知らなかったで済まされる問題ではないのです。
私たちも当事者になり得る問題なのです。
序文でも申し上げましたが、「ここおかしいんじゃねえの」と思ったらぜひコメントをください。「やっぱり大坂なおみ選手や各リーグの言動は受け入れられない」と思うなら、私の見識を広げる意味でもなぜ受け入れられないかを教えてください。否定から入る罵り合いではなく、互いの意見を交わし合う建設的な議論をさせていただきたく存じます。
また、もしこの記事に共感していただけたならシェアをしてください。1人でも多くの方に、私が愛して止まない選手たちが戦っている問題を知ってもらうために。
何卒よろしくお願い申し上げます。
訂正と加筆を繰り返していたらトータル1万字の駄文にして長文になりましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
この記事を読んだ誰かが新たな気付きを得られたなら、それに勝る喜びはありません。
参考ページ
^4 https://www.interbasket.net/news/what-percentage-of-nba-players-are-black-how-many-are-white/31018/
^5 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60150710Z00C20A6I00000/
^6 http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1923_kanto_daishinsai_2/index.html
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