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僕がクソッタレの臆病者だから 彼女は行ってしまったんだ
どこにでもいる拗らせ男子と、日本を代表するロックバンドが出会う話。
男だらけで灰色の青春とELLEGARDENとの出会い
中学受験を経て男子校に入学した私は、中高6年間の青春を女の子のいない環境で過ごした。
女の子に対する男子校生のスタンスは大体次の2つに分かれる。
「彼女欲しい!」と愚直に叫び続けるか、「別に女なんていらねえし」と斜に構えるかである。
当の私は後者も後者。
やたらスキャンダルをすっぱ抜かれるアイドルや、鬱陶しいほど前向きな言葉で愛を叫んだ挙句ダブル不倫で週刊誌のお世話になったファンキーな人など、薄っぺらいラブソング(と当時は思っていた)でオリコンチャートの上位に入る流行りのアーティストを心の底から嫌っていた。
今思えば流行りに噛み付きたくなる年頃だったんだなあ、と。
若気の至りである。
そんな私はある日、友人に「このバンド本当にかっこいいから聴いてみて!お前は絶対気に入る!」と一枚のCDを借りた。
中学2年の夏だった。
借りたCDはELEVEN FIRE CRACKERS。活動休止を発表してから間もないELLEGARDEN、通称エルレの5枚目のアルバム。
タワーレコードに駆け込み、ベストアルバムを買った中2の夏
ELEVEN FIRE CRACKERSはGt.生方真一さんが「エルレの中で最もロック色が強いアルバム」と評したように、全体的に力強く疾走感のある曲が多い。
しかし。
これぞメロコア!というような、打ち寄せる大波が如き曲ばかりで構成されているかと思えば決してそんなことは無く、
涙が出そうになるほど切ない歌詞なのにキャッチーでポップな曲まで収録された、まさに「名盤」と呼ぶ他ない完成度のアルバムだ。
私はELLEGARDENにハマった。友人の思惑通りである。
とはいえ彼らが出したCDの数はかなりの量で、中学生の財力で全て買い揃えることは難しい。
そこでベストアルバムを1枚だけ買って、残りはレンタルショップで借りることにした。それでも一月のお小遣いと同額という、中学生には手痛い出費だった。
これが私の『はじめて買ったCD』である。
その後、ELLEGARDENにはかつてないほどハマった。
そしてELLEGARDENの影響で「バンドってカッコいいな」と思うようになり、ロックやパンク、ミクスチャーロック、メロコア、ハードコア、ラウドロックなど、ありとあらゆるバンドミュージックを聴くようになった。
中にはあの頃から10年以上聴き続けているバンドもあるし、多感な時期に好きだったものは一生物になるんだなあと強く思う。
男子校期を終えて。恋ってなんだ。
そんな中高時代を過ごしてきた私も大学生になる。
当然6年間斜に構え続けてきた恋愛と向き合うことに。
結論から言って、大失敗だった。
そもそも女の子への声の掛け方が分からない。そしてなんとか彼女ができても長続きがしない。まあ6年のブランクがあるから当然である。
更に言えば小学生の頃も女子と喋るより校庭でサッカーをするタイプだったので、実質幼稚園以来の周りに女子がいる環境なのだ。うまくいくはずがない。
会話を盛り上げる術を知らなければ、気の利いたアプローチもできないのだから。
さすがに私もヘコんだ。斜に構え続けてきた自分を恨んだ。
ウジウジ悩んだところで周りは何も変わらないわけで、今日も大好きな先輩による彼氏との惚気話が始まる。
先輩はニコニコして楽しそうだ。一方の私はどうだろうか。能面のような表情で聞き、生返事で相槌を打つことしかできない。
辛い日々だった。そんな私を救ってくれたのは、中2以来毎日聞いていたELLEGARDENだった。
She is a supernova
ELLEGARDENのベストアルバムの8曲目にsupernovaという曲が入っている。
想い人を”一際輝く爆発を起こして消えていく超新星”に喩え、行動を起こす勇気がない自分から輝きだけを残して去っていく様を歌う。そんな曲だ。
私は何度も何度もこの曲を聴いた。
好意を伝えることすらできない自分と歌詞が重なって、涙が出てしまうことすらあった。
あれだけ薄っぺらいラブソングを嫌っていた男が、”I'm a fuckup and I'm nuts so she's gone(僕がクソッタレの臆病者だから 彼女は行ってしまったんだ)”と歌うなんとも情けない曲を聴いて涙したのである。
ああ、こんなことで悩んでるのは俺だけじゃないんだ、と思えると肩がだいぶ軽くなった気がして、大好きな先輩の惚気話を聞いても固まることはなくなった。いつか振り向かせてやるからなと思えたから。
まあそのいつかは来なかったんですけどね……。
この一件以来、私は自分や他人の”悩み”に対してポジティブになった。
悩みを抱えている時間は、辛くて苦しい。そして悩みを自覚し、さらけ出すことはとても難しい。
しかし、同じように悩みを抱えている人は必ずいる。
一人で悩む必要なんてないし、ダサくてもカッコ悪くても共感してくれる人だって必ずいる。
そして自分の悩みを乗り越え他人の悩みに共感できた時、ようやく人は前へ進めるのだ。
「音楽に救われる」って大仰な言い方だけど、意外と身近なこと
25になった今でも恋愛はよく分からないけど、悩み抜いて苦しむことを怖いと思うことはなくなった。それは、私が恋で悩んでいた時にELLEGARDENに救われたから。
きっと他のことで悩んで、やたら明るく前向きな歌に嫌気がさしても、自分の心情をぴったり表した曲が救ってくれる。
辛い時こそ音楽を聴こう。今ではそう考えている。
https://open.spotify.com/track/3Y55AfuHLUFTQEixZJI5VU?si=siaMC4_nRfSH98mmbs9SSQ
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