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医療現場の声を拾う。149の回答から見えたこと。

ケイスリーは、医療従事者の方々を対象としたアンケートを実施しました。「医療現場の生の声」として、その結果をお伝えしたいと思います。

アンケート概要
目的:医療従事者の声を基に、課題と必要な支援を知る
期間:2020年4月22日~4月28日
方法:オンラインアンケート
回答数:149件

約90%のストレスや負担が増加

「現場での負担やストレスの程度」について、平常時と現在それぞれに10段回で示していただきました。

コメント 2020-05-15 111747

平常時の中央値(149の回答の中央に位置する値)は、平常時が「4」だったのに対して、現在は「7」まで上昇。 87%に当たる130人が、平常時よりも大きな負担やストレスを感じていることがわかりました。

事業者と連携して「体」を守る

抱えている課題、必要な支援に関する回答(複数回答可)ついて分類を行ったところ、90%が「体の健康」(感染リスクや疲労、睡眠不足等)に何らかの課題を選択し、最も多い結果となりました。

それに対する支援として提示した選択肢(医療資材、宿泊場所、食事)についても、何らかを選択した人が93%にのぼりました。

<図表1>

コメント 2020-05-15 112807

「体の健康」に関係する支援の詳細を見ると、最も深刻な医療資材の他にも、「(移動短縮のための)宿泊場所」や 「(健康管理のための)食事」「(タクシー等の)安全な交通手段」「勤務中の子供ケア」など、事業者と連携して支援できるものへのニーズも高いことがわかりました。今後、こうしたサービスを提供できる事業者との連携を広げていくことが、有効な支援になると考えられます。

<体の健康>の詳細

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<業務外>の詳細

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「心」にも具体的な支援を

続いて「心の健康」(精神的疲労、風評被害、安らげない、孤独感等)については、81%が何らか課題を選択し(図表1)、「心の健康」は「体の健康」に続く大きな課題であることがわかりました。 

記述欄にも、「手探りでの対応なので不安」「スタッフは医療機関勤務というだけで疎外感を感じる処置を、民間だけでなく医療機関の職場からも受けて悩んでいる」「多くの医師はボランティアで粉骨砕身するが、⾧期間になると燃え尽きてしまう」 「ストレスとその後のバーンアウトが心配」など様々な声が寄せられました。

一方、「心の健康」に対して提示した支援(人々からの感謝や労い、悩みを話せる相手等)について、何らかを選択したのは31%(46人)にとどまり、ここに挙げられていない具体的な支援策の検討が必要なことが示唆されました。

コメント 2020-05-15 114057

「金銭支援」は、感染者に接する従事者へ

「金銭面」については、「体の健康」や「心の健康」に比べると低い数値となりましたが(図表1)、それを新型コロナ感染者に接する従事者と、接しない従事者に分けて比較したところ、統計的に有意な違いが示されました。

まず金銭面の課題については、接触がない従事者は29%が課題があると回答したのに対して、接触がある従事者に限ると、53%が課題があると回答。

※ない:感染者への接触がない、ある:感染者への接触がある

コメント 2020-05-15 121453

必要な支援についても、接触がない従事者は38%が必要と回答したのに対して、接触がある従事者に限ると、66%が必要と回答。

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記述欄には、「受診抑制が生じて収入が前年同期の半分以下に激減している」など複数の回答者が収入減少を深刻な問題として挙げている他、「外勤禁止になった場合、大学院生は経済的困窮が避けられない」という声や、「休日出勤の手当て」や「発熱患者診察時の手当て」が必要との声、公共交通機関を控えることで金銭的な問題につな がっているとの声も寄せられました。

限られたリソースを、課題が深刻な人、本当に支援を必要としている人に手厚く配分することも、今後必要な施策と言えそうです。

影響は医療現場全体に

一方、業務への影響は、感染者との接触有無にかかわらず出ていることが伺えます。

59%が何らかの業務の問題を選択し、自由記述には「病棟を再編成していて、その影響で普段見ない科の患者を見る ことになるストレスが大きい」「感染対策への注意や問い合わせ対応など、平常時にはなかった事の増加」 「非常勤の医師を断っていることによる人手不足」などが指摘されました。そして 特に必要な支援として、「オンライン診療のための設備」やそれに関する「情報共有」が挙げられました。

今回を機に、医療システムの変革を社会が後押ししていくことも必要なのかもしれません。

コメント 2020-05-15 134916


この調査結果全体はこちらからご覧いただけます。


39県で緊急事態宣言が解除されたいまも、最前線で戦う医療現場の方々を社会全体が支えていく必要があることに変わりはありません。

私たちも、新型コロナにより深刻化する様々な社会課題に対し、こうした現場の声やデータを拾いながら、セクターを超えた連携を促進して「コレクティブ・インパクト」を生み出し、より強くてしなやかな社会をつくる一助になってきたいと考えています。

(文 今尾江美子)







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