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神奈川県SDGs社会的インパクト・マネジメント実践研修 【第5回】開催レポート

はじめに:「SDGs社会的インパクト・マネジメント実践研修」第5回が開催されました!

2020年11月に始まったSDGs社会的インパクト・マネジメント実践研修が、とうとう最終回を迎えました。今回は、研修に参加した合計12組織が研修成果を発表し、ゲストのインパクト投資家と弊社K3メンバーからコメントをする、という形式で進められました。

参加組織の皆さんは、全5回の研修を通じて社会的インパクト・マネジメント(SIM)の基本理解と実践、自社事業への活用方法の検討を行ってきました。具体的には、自社事業を題材として、SIMの主なツールであるロジックモデルの作成や、指標の設定、完成したロジックモデルの活用方法の整理などです。

最終発表では、参加組織が各々で発表の目的や相手を設定し、それに沿った内容を持ち時間5分という短い時間の中で組み立てました。

最終発表:誰に、何のために、この発表をするのか?

発表の前に確認した各参加組織の発表目的をのぞいてみましょう。

・資金調達
・ 自社が提供するサービスが、地域の課題解決策として有効であることを理解してもらうこと
・ 自社事業が「社会的価値」と「経済的価値」を両立させるものであるということを、特に顧客に説明できるようになること
・ 自社事業を表現するための「ことば」を磨くこと
・ 手段や目的を「見える化」し、ロジカルに説明すること

発表対象者も見てみましょう。

・ 資金調達先となる金融機関や投資家、スポンサー候補企業
・ 行政、自治会、企業
・ 新規営業中の顧客や地方自治体
・ 自社事業に賛同し、実際に活動を共にしてくれる可能性のある人

今回の研修参加への応募の際にとったアンケートでも、研修参加目的として資金調達と答えるところは非常に多かった一方、それが具体的に誰からなのか、という点を答えているところは多くはありませんでした。

今回の最終発表においても、資金調達を発表目的としているところは複数ありましたが、どんな金融機関や投資家からなのかに具体的に言及するところもありました。また、発表目的は資金調達以外にも、事業改善なども挙げられていました。最終的に資金調達につなげたいものであっても、そこに至るまでに重要なステップに注目し、事業のステークホルダーを広く見渡したうえで、発表目的に沿って特定のステークホルダーに特に着目していた参加組織もいました。

研修で作成したロジックモデルを使って、「誰に、何を、伝えたいのか」という点は、今までの研修の中でも複数のゲストから何度もアドバイスとして投げかけられていたものです。実際に参加組織の皆さんは、研修を通じて、自社の事業が創出する/したい社会的価値と、そこまでの道のりを今までよりも明確に見つけだし、整理し、見せる形にしてきたことで、発表の具体性がぐっと高まっていました。

総括コメント:自分がわくわくしていることが大事!

発表に対する、金融機関からのゲスト、また弊社メンバーから総括コメントを紹介します。

金融機関のゲストからのコメント:

「ロジックモデルの作成は、作成自体ではなく整理が目的です。作っている自分がわくわくしていることが大事です。自分がわくわくできる事業が持続性のある事業だと思っています。

そのうえで、ロジックモデル作成上の大事なことをお伝えすると、誰のために作っているのかを意識する、ということです。自分の事業にどういったステークホルダーがいるのか、という観点を組み込んで作成すると、ロジックモデルがより明確に見えてきます。また、誰がサービスの対価を払っているかという観点も強く意識すると、経済性と社会性が両立したロジックモデルになるはずです。

今回の発表を通じて、実際にロジックモデルを作った人たちが、様々なメリットを実感していることがわかりました。そのメリットが広く伝わり、ぜひ多くの方々にロジックモデルをつくってほしいです。」

このコメントを受けて、本事業の主催者である神奈川県からは

「3年前の事業開始当初は、「わくわく」という単語がでてくるなんて思っていませんでした。参加者の方々の熱量がどんどん高まってきて、今のこの熱さにつながっているんだと思います!」

というコメントもでました。

弊社からのコメント:

「熱量の高い人々が集まって、すでに設定した指標に基づいて測定等のステップに進んでいる人たちもいて、素晴らしい成果が表れた研修だったと思います。

今年はコロナ禍という特殊な状況にありました。しかし、コロナというものが、社会に潜在していた課題や、自分たちの街の重要さなどを考え直す契機になったと思います。同時に、参加組織の方々の事業の重要性やアイデンティティを浮かびあがらせ、その課題とつなげて考えるようになったのではないでしょうか。

ロジックモデルの作成と活用においては、物語を表現できるかどうか、ということが大事であると改めて感じました。フレームワークは基本のものとして理解し、守破離の精神で、自ら表現したいこと、わくわくする物語を自由に表現していってください。」

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研修を締めるにあたり、神奈川県からは「県として実施してきた事業に参加してくれる方々、セミナーや成果報告会等に関心をもって見てくれる方々の力を受け、県としても引き続きSIMの発信やネットワークの活用を進める必要性と責任を感じています」との力強い言葉が得られました。

最後に:社会に求められる社会的インパクト・マネジメント

ところで、このレポートの筆者、私は、去年11月にケイスリー株式会社に入社し、最初の仕事がこの研修の運営に参加することでした。新参者としてこの研修は、研修参加組織の方々と同じ目線でSIMの基礎を学び、必要性や可能性を見つけ出していくような機会となりました。そこで、(こっそりと)参加者の方々と共に学び、考えたことを、ここに書かせていただきたいと思います。

私個人としては企業こそ社会課題への貢献ができるしすべきで、社会的価値創出ができるのだと98%くらい信じていました。けれども、白状すると、残り2%は、特に民間企業の方々にとって、利益を維持・向上させることこそが存在意義なのであって、主体的・積極的な社会課題への取り組みや社会的価値創出は二の次にならざるを得ないのでは、という疑問やある種の納得を持っていました。私自身が実際に手足を動かす事業者側にいないことで生じる不安や引け目も、そう思う要因の一つだったと思います。

しかし、今回の研修に参加し、まさに事業を行っている方々が、事業を通じた社会的価値の創出の可能性に対して真正面から取り組んでいること、そしてその取り組みが研修の回を通じてより深まっていくことを、研修実施側として目撃したことで、2%が昇華されたように感じます。

SIMに取り組むか否か、または事業を通じた社会的価値の創出を意図するかどうかは、もちろん各企業・組織の考えるところであって、外から、やるべきだ!と強制することはできないし、意味がないので、世の中の全ての組織・企業がやるべきだとは思っていません。しかし、主体的・積極的に社会課題に取り組む企業が規模の大小に限らず複数存在していることを見せつけられたことで、企業は利益創出と社会的価値創出を両輪で実現することができるのだ、と今は100%信じています。

今回の研修の参加組織は中小企業・組織でした。地域により根付いて事業を展開することが多い中小企業にとっては、SDGsや社会的インパクトなどという単語が出てくるずっと前から、実は地域の社会課題に何らかの形で貢献していたのではないでしょうか。だからこそ、地域で人々から認知され、受け入れられ、それによって事業が展開され、会社が維持・発展してきているのだと思います。または、新たに興される企業や事業も、今後ますます地域の理解と根付く行動が必要になってくるのだと思います。

ただ、今まではその社会価値創造の部分が、表にでてくることがなかったり、もしかしたら事業をしている人自身が気づいていなかったりしたのかもしれません。今回の研修は私にとっても、そのように眠ってしまっている事業の価値を「見える化」し、事業の改善・発展にもつなげていける手法の一つが、まさに社会的インパクト・マネジメントなのだ、そしてその価値を追及・最大化することが、会社、ひいては社会の強さにつながるのだ、と研修参加者の方々の姿によって、最後にあらためて納得させられるものともなりました。

研修は今回で終了ですが、研修参加組織の方々の今後のSIMへの取り組み、そして社会的価値の実現を楽しみにしましょう!そしてK3自身も社会的価値の創出に向けた事業をますます推し進めます!お読みいただきありがとうございました。

(文責:金子万里子)

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