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ピアノとソナタ 第4話
キーンコーンカーンコーン
担任:じゃあ明日から夏休みだが、課題は早めにやっておけよーじゃあいい夏休みを!
瑛紗:夏休みだ!
美空:学校終わるの嬉しい!
〇〇:疲れたー
総馬:皆様のおかげで補習逃れました!ありがとうございました!
瑛紗:あれで受からなかったら殴るところだったし
総馬:怖いよ瑛紗…
瑛紗:〇〇は夏休みどうするの?
〇〇:え?ああ、久保先生の実家が花屋でそこでバイトすることになったんだよね〜
総馬:そうなの?
〇〇:うん、暇よりはいいし
瑛紗:暇つぶしって言ってるの?笑
〇〇:そ、そういうわけでは!
美空:私も8月までは学年委員の仕事あるし
総馬:俺も夏には高校生ライブ出れるように練習しないとな
美空:瑛紗はなにするの?
瑛紗:ん?私は…なにしようか考えてない笑
〇〇:自分で聞いておいて…
瑛紗:なんか言った????
〇〇:いいえ…なにも…
あの時…つまり瑛紗がピアノを聴いて泣いていた時から瑛紗は特にピアノに関しては言ってこない
彼女の性格上もう一回とか少し威圧してでも何かやるのではと思ったが僕にわかる範囲では目立ったことはなかった
彼女は冗談で圧力をかけることはあっても本気の時はなぜかためらう
優しいのか何かあるのかはわからない
総馬:そういえば花火大会どうする?
瑛紗:花火大会?
美空:〇〇の家から見えるから去年はそこから見たんだよ!
瑛紗:え!!?じゃあ見ようよ!
〇〇:まだ8月の話だし聞いてみるよ
美空:それまでに宿題終わらせなさいよ総馬
総馬:残しておいてその日にやるとか…
〇〇:その日BBQやるよ?
総馬:…死ぬ気でやります!
夏休みは部活、学校の何か、あるいは習い事で忙しい人もいれば、僕のようにそうでもない人もいる
夏はいい思い出が無い
僕にはあの鍵盤をただ叩くだけの日々が続いていた
ロボットのように正確にそして…言われた通りに
瑛紗:んーーー
〇〇:どうしたの?
瑛紗:夏休みやりたいことも無いけどもなぁー暇だから何かやろうかなぁーって
〇〇:絵は描かないの?
瑛紗:描くよ?ただイメージとか描きたいものが出たり出なかったりだしそれ以外で何かって思って考え中〜
〇〇:池田さんくらいならもっと何かやりたいこととかいっぱいあるものだと思ってた
瑛紗:んー元々そんなに多趣味というか、真剣にやってるのは絵くらいだからね〜
〇〇:絵が好きなんだね
瑛紗:大好き!だって自分の表現したいことを自由に作品に出来るしそれにここ最近いろんなことが楽しくてね!アイデアも凄い浮かぶの!
〇〇:誰かに言われてやってるわけじゃないんだ
瑛紗:それはそうでしょ?せっかく自分の絵なんだから自分らしく描かないとつまんないじゃん!
刺さった
つまんない
僕はつまらなかったのか?
いや、好きだった、好きなはずだ…
でも…彼女の嘘のないつまんないには…
〇〇:で、でも…もし、絵が嫌いになったらどうする?
瑛紗:んー考えたこともないけど…でも描くと思うよ?それこそピカソの絵みたいなやつでも幼児が描く落書きみたいなものでも…その人にとっては芸術でしょ⁇笑
〇〇:うん…
瑛紗:いいの!好きなように描いて!好きな時に描く!それが私なの!それに!
ムギュッ
〇〇:ゔぇ?
瑛紗:〇〇がいつまでも名前で呼ばないことをテーマに絵を描いてそれをあんたの前で破り捨ててやろうか????笑
〇〇:こ、こわしゅぎましゅ…
瑛紗:ふふふ笑私ね〜夢があるんだ〜
〇〇:ど、どんな夢??
瑛紗:内緒!いつか言うね!!
〇〇:え?教えないの!!?
彼女のペースは僕にとって心地よいものになりつつあった
失われた時間は帰ってこない
傷も戻らない
ただ池田瑛紗という人の時間は優しく、清らかで、僕の心を新しく作り直しているかのようだった
ーーーーーーーーー
週2.3回というペースで久保先生のご実家の花屋を手伝っていた
花に問いかけるときは優しく
言葉が返ってくるわけではないが
綺麗な形や色として見る人に癒しを与えている
久保:おーいお疲れ〜休憩〜
〇〇:はい!
久母:本当によく働いてくれて助かるわ〜物覚えも早いし!
久保:そりゃあ学校でもトップの頭ですからね〜
〇〇:先生イジってます?
久保:本当のことじゃない?
〇〇:…はい
久父:このままここで働かないか?笑
久保:ダメダメ笑優秀な子は勉強させるの笑
久保先生の実家の方々は特にピアノには触れない
先生の仕事のことも特に言わない
ピアノのことに関しては何一つ無関心なのかもしれない
久保:明日ここ来ないから午後ならピアノ弾く?
〇〇:いいんですか?
久保:私学校でやることあるから大丈夫よ?17時までに終わるならいつでもいいわよ?
〇〇:じゃあ行きます!
久母:いらっしゃいませー!
あ!いた!
〇〇:え?い、池田さん??
久保:おーどうした??
瑛紗:ここで仕事してる奴の顔見に来たのとお花買いに来ました!
久保:ふふふ笑
〇〇:え?な、なんで僕の方見るんですか??
久母:ごゆっくり選んでくださいね〜♪私達後ろにいるから決まったら呼んでね♪
こういうところは家族だ…
瑛紗:さて!〇〇!
〇〇:は、はい…
瑛紗:私に似合うお花を一輪ね!
〇〇:え?池田さんに似合うお花?
瑛紗:何?選べないの?こんなに可愛くて、学校でモテモテの私のイメージのお花を選べないの??
〇〇:…選びます
瑛紗:よろしい笑
いざとなるとやはり選べないものだ
特に彼女のイメージは…
〇〇:……
瑛紗:ん?なに?
〇〇:な、なんでもない!
瑛紗:選べた?
〇〇:いくつかあって…
瑛紗:どれがあるの?
〇〇:まずはカモミール
瑛紗:花言葉は?
〇〇:逆境に耐えるとか…
瑛紗:私なにに追い込まれてるの????
〇〇:もう一つが…
瑛紗:おい答えろよ
〇〇:清楚とか癒すとか…
瑛紗:ふーん…
〇〇:ダメ?
瑛紗:そういう風に見てくれてたんだ笑
〇〇:カァー///つ、次は!これ!ガーベラ!
瑛紗:綺麗!言葉の意味は?
〇〇:常に前進とか…
瑛紗:明るくなれそうね!
〇〇:最後はローズマリーかな?
瑛紗:これもいいね!意味は?
〇〇:あなたがいると明るくなれるとか…
瑛紗:…他には?
〇〇:あなたが来てくれて悩みが消えたとか…
瑛紗:へぇ…
〇〇:…ダメ…かな?
瑛紗:ううん…じゃあローズマリーにする
〇〇:いいの?大きなお花じゃないよ?
瑛紗:これがいいの…ダメ?
〇〇:じゃあ…これで…
久母:どうせならいくつかまとめてあげるわよ?
〇〇:え?
久母:せっかく〇〇くんに会いに来てくれてるんだからそれくらいはね♡
瑛紗:いいんですか?
久母:ローズマリー10本にしてあげる♡
〇〇:さっきからウキウキしてません??
久保:うふふ♪
〇〇:先生まで!
瑛紗:あ!先生!
久保:池田さんもやるわね〜笑
〇〇:ん?どういうことですか??
久保:君は本当に…笑
久母:はい!どうぞ!〇〇くん!お帰りのお客さまを見送って!
〇〇:あ!は、はい!!
久保:またね池田さん
瑛紗:本当にありがとうございました!
〇〇:ありがとう来てくれて
瑛紗:暇だったからね!選んでくれてありがとう!
〇〇:こちらこそ…じゃあ…また…
瑛紗:うん、またね
どうしてかわからなかった
〇〇:あ、あのさ!!
口だけは先に動いていた
振り向いた彼女は不思議な表情をしていた
〇〇:もしよかったら…あ、明日学校で…ピアノ弾くんだけど…聞きに来ない…?
その時の彼女は見たことないくらい、幸せそうな表情をして
走って僕を抱きしめにきたんだ
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