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ピアノとソナタ 第3話

ある日

総馬:なぁ…頼む!!


〇〇:自分が悪いんじゃん…自分でやれよ…


美空:なんでよりによって赤点取るかな…


瑛紗:総馬…


総馬:このままだと…俺の夏休みLIFEが少なくなってしまう!!しかも英語と数学なんて…俺死んでしまう!!


美空:少しは頑張りなさいよ…どうする〇〇…


〇〇:またうちで勉強する?


瑛紗:え!!?またってことは前にもやったの???


総馬:こいつの勉強会で俺はなんとか今まで回避してきたのに…


〇〇:高校1年のテストから赤点取るとは…


美空:私も手伝うよ


瑛紗:じゃあ私も手伝う!!


〇〇:え!!?え???い、い、池田さんも????


瑛紗:こう見えても私も頭いいんだよ????それにその反応なに?嫌なの?手伝うって言ってるのに?


〇〇:いえ…はい…是非…


総馬:みんな!!恩に感謝する!!


美空:感謝する前に勉強しろ!!


総馬:はい…


夏休み前のこの時期はゆったりしてる
だが総馬は毎年この時期が一番忙しい
彼はここを乗り越えないと
夏休みの間、一番嫌な補習が待っている


総馬:追試は来週だから今週の土日な…〇〇の家でいいよな?


〇〇:多分…ばぁちゃんに聞いてみるよ


瑛紗:え?〇〇おばあちゃんの家に住んでるの?


〇〇:えーまぁ…うん


美空:じゃあ夜ご飯はお弁当持って行くね!


総馬:いや!!夜はBBQで!!


〇〇・瑛紗・美空:遊びじゃねぇ!!!


総馬:はい…


ーーーーーーーーー

久保:アッハッハ!!そっかそっか!!倉本くんは追試か笑笑


〇〇:世話が焼けます…


久保:君は大丈夫なんだね笑当たり前か笑


〇〇:あ、はい。ところで用事っていうのは?


久保:そうそう!夏休みだけなんだけどバイトしない?


〇〇:え?


久保:あ、ピアノじゃなくて…うち実家が花屋なんだけどさ夏休みの時期ってバイトの学生も実家帰ったりしちゃうからその空いてるところだけでいいからやらない?もちろんバイト代は出すからね!


〇〇:ぼ、僕でいいんですか??


久保:大丈夫!頼みやすくて断れない人なんて〇〇くんしかいないから笑


〇〇:断れない…


久保:やってくれたら夏休みもピアノ弾きに来ていいよ?


断れなかった…
久保先生はズルい、大人はずるい…
でもバイト代出てピアノを適当な時に弾けるのはありがたい
花のことはよく知らないけど夏休みが暇になるよりはいい

池田さん可愛いブームみたいなものひと段落し、彼女もやりたいことをやれるようになると、改めて彼女の絵の上手さには驚かされる
色の使い方、強弱の付け方、1つの作品に込められた思いをどう表現するか
音楽と似ているところに僕は心を惹かれてしまう感覚になった

今ここで絵を描いてる池田さん
ただ彼女は一体何を考え
何を求めてここにいるのか
この才能ならもっと…


瑛紗:…!〇〇!!


〇〇:え?あ、ごめん


瑛紗:どうしたの?


〇〇:あ、いや、その、本当に上手いね


瑛紗:ん〜ありがとう😊


〇〇:どんなことを絵にしたいと思うの?


瑛紗:そうだな〜その時の気分とかあるいは今日あったことを思い起こしてそれが幸せなことだったり、悲しいことだったり、色々あるけどやっぱり自分が描きたいことが浮かんだ時じゃないかな?ありきたりかもしれないけど笑


〇〇:悲しい時でも描きたくなる時あるの?


瑛紗:あるよ!絵にぶつけて!その怒りをみんなに見てもらいたいの!こんなにムカついてます!って笑笑


〇〇:なんか…池田さんらしいね笑


瑛紗:本当にそろそろ瑛紗って呼べないの??なんかここまで来るとじらしてるのかな?って思ってくるよ?


〇〇:僕には…下の名前で呼ぶようなことは出来ないよ…そんな度胸無いし…


瑛紗:度胸じゃないの!!ムニュッ


〇〇:な、にゃんできゃおちゅぶしゅの?


瑛紗:私はねぇ〜さっき色んな感情で書きたいって言ってたけどさ〜


〇〇:う、うん…


瑛紗:〇〇が下の名前で呼ばないことで書いたこともあるんだからね!!!


〇〇:うわ!絵の具飛ばさないでよ!!また制服汚れちゃう!!


瑛紗:またクリーニング出せばいいだろ!!

バタバタバタ


総馬:……


美空:お待たせ〜あれ?


総馬:しー
クイッ


美空:あ、ふふふ笑またあの2人笑


総馬:もしかしたら…瑛紗のおかげであいつも変われるかもな笑


美空:また…ピアノ弾いて欲しいね…


〇〇:ハァハァハァ


瑛紗:ハァハァ…お主…なかなかやるな…


〇〇:そ、そなたも…なかなか…


瑛紗:ぷっ、アッハッハ笑なんで毎回そなたなの笑笑おかしいって笑


〇〇:この流れじゃそう言うよ笑

ガラガラガラ

総馬:おーいお疲れ〜


美空:お待たせー帰ろう!


瑛紗:この決着は必ず…


〇〇:そなたには負けん!


総馬:知らんわ笑

ーーーーーーーーー

土曜日
ピピピピ

〇〇:ん…朝か…


祖父:おはよう


〇〇:おはよう


祖母:〇〇おはよう


〇〇:おはよう、味噌汁いい匂い


祖父:今日友達が来る日よな?


〇〇:うん、勉強会する


祖父:わしとばぁさんは温泉に行くから好きにしなさい


〇〇:え?そうなの?


祖母:町内会の温泉旅行だからね〜明日の夕方には帰ってくるよ


〇〇:そうだったんだ…じゃあみんな泊めようかな…


〇〇📱:じいちゃんとばあちゃん温泉旅行行くからいないから今日泊まれそうだけどみんな泊まる?

ピロン

総馬📱:もちろん!朝ごはんは俺が持って行く!

ピロン

美空📱:夜ご飯はお母さん作ってくれたからそれ持って行く!

〇〇:あれ?池田さん返信無いな…まだ寝てるのかな…とりあえず片付けよ

ーーーーー

瑛紗:失礼します!


やぁ元気そうだね笑


瑛紗:それしか言わないじゃないですか笑それでどうなの先生?


医師:ん?まぁ大丈夫だよ笑


瑛紗:あーそういうこと笑じゃあ私の宣言はまだ続くからよろしくお願いします笑


医師:ここには定期的に来なさいよ


瑛紗:はーい!失礼しました!


医師:ふぅ…大変だな…

ーーーーー

ピコーン

総馬:ん?あ、瑛紗だ


美空:総馬は集中しなさい!えーっと、あ、〇〇〜今から来るから迎えに来てだって!


〇〇:あ、うん、総馬はちゃんと勉強するようにね


総馬:おう!


〇〇:戻ってきたら小テストやろうか


総馬:あれ?急に目眩が…


美空:早くやって!!


〇〇📱:今どこにいる?


瑛紗:んーっと…


〇〇:え?


瑛紗:〇〇の後ろ!!


〇〇:うわ!き、急に来たらびっくりするよ…


瑛紗:あははは笑じゃあこのまま海にでも行く?


〇〇:ダメだよ〜早く戻って総馬相手に小テストしなきゃ…


瑛紗:まーじーめ!!でもそれもそうだよね笑早く行こう!!


〇〇:あ、はい…


瑛紗:良いところだね〜海も見えて、少し離れてるから静かだし


〇〇:昔からじいちゃんの家系が住んでるところだからね


瑛紗:もしかしてお金持ちの家?


〇〇:そんなことないよ💦


瑛紗:ま!なんでもいいけど!あ!この家?


〇〇:うん

ガラガラガラ


瑛紗:お邪魔しまーす!美空〜総馬〜


美空:瑛紗〜ようこそ!


瑛紗:総馬は…あ、死んでるね…


〇〇:え?


総馬:俺は…もうダメだ…


〇〇:美空なにしたの?


美空:簡単なテスト出来なくてお説教


瑛紗:うん…手伝うよ…

ーーーーーーーーー

総馬:どうだ…?


〇〇・美空・瑛紗:……


総馬:なんか言えよ…


〇〇:とりあえず大丈夫そうだから夜ご飯にしようか


総馬:よっしゃあ!!飯!!飯!!


美空:瑛紗の怒涛の数学基礎攻めが効いたね笑


瑛紗:あれくらいやらないとこの男にはわからないからね!


総馬:人生であんなに女の子にクソ!とかピーって言われると思わなかった…


〇〇:美空が持ってきてくれたのあっためてくるよ


美空:私も手伝う

タッタッタッ


総馬:なぁ瑛紗


瑛紗:なに?


総馬:あのさ…〇〇のことどう思ってるの?


瑛紗:どういうって?


総馬:男として??


瑛紗:そういうことねぇ〜


総馬:だって瑛紗モテるじゃん?うちの部活の先輩だって瑛紗のこと気になってるって言ってたくらいだし?


瑛紗:うーん、正直さーモテてもモテなくても興味ないんだよね笑自分のやりたいこととか自分の思いの通り、考えの通りに動いてるだけ。だから相手がイケメンだろうとなんだろうと私の眼中に居なければ関係無いね笑


総馬:そ、そうか…ん?ってことは〇〇は?


瑛紗:さぁ〜どうでしょう笑


美空:お皿どれ使ってもいい?


〇〇:うん、小皿ここに置いて、洗うから


美空:ありがとう、ねぇ〇〇


〇〇:なに?


美空:たまに音楽室でピアノ弾いてるじゃん?


〇〇:知ってたんだ…


美空:総馬も私もあの音はわかるよ


〇〇:誰も見てないし…誰かに聞かせるわけじゃないから笑


美空:またいつか聞かせてね


〇〇:うん、、これ持っていこう


総馬:お!美味そう!


美空:お母さんが気合い入れちゃって笑


瑛紗:美味しそう!


〇〇:お茶持ってきたよ〜


総馬:よし!いただきます!


〇〇・瑛紗・美空:いただきます!

バクバクバク

瑛紗:美味しかった〜


総馬:腹いっぱい…片付けて休憩がてらトランプやろうぜ!


〇〇:え?なに言ってるの??


総馬:え?


美空:この後もう一回テストするよ?


総馬:うそ?


瑛紗:当たり前でしょ?


〇〇:そもそも小テストでつまづいてたんだから本番みたいなテストもやらなきゃいけないよ?


美空:トランプ?甘いよ?


瑛紗:覚悟ある????


総馬:うわああああああ!!!!

ーーーーーーーーー

〇〇:ふぅ…あ、お風呂いいよ…ってえ?


総馬:チーン


美空:テスト3回やってようやく合格点…


瑛紗:こんなにバカだったとは…美空大丈夫?こんな彼氏?


美空:明日もテストだね…


〇〇:お、お疲れ様…じゃあ2人お風呂入ってきなよ、お風呂場にタオルとか置いてあるから


美空:ありがとう〇〇


瑛紗:じゃあ総馬は放置するね〜


〇〇:ツンツン生きてる?


総馬:は!!気を失ってた…


〇〇:あの2人スパルタ?


総馬:なんかもうここまで来ると本番のテストでやらかしそうだ…


〇〇:大丈夫だよ、やったらやった分出来るようになるよ?


総馬:俺には夏のスローライフを楽しむことが出来ないのか!!?


〇〇:なにそれ???


総馬:それはそうと〇〇


〇〇:なに?


総馬:ピアノ弾いてたな


〇〇:美空にも言われた…


総馬:まぁまた弾いてくれよな…


〇〇:誰も見てなかったら弾くよ…


総馬:そっか…じゃあ…このまま語って明日は朝早くに帰りま…


瑛紗・美空:明日もテストだから


総馬:はい…

ーーーーー

総馬:ぐぅーぐぅー💤


美空:すぅーすぅー💤


〇〇:……


瑛紗:まだ起きてたんだ


〇〇:あれ?なんで?


瑛紗:さっき窓から星見えて、ここからなら見やすいかなって思ったら居たから来ちゃった笑


〇〇:そうなんだ笑


瑛紗:やっぱ…あれから変わったね


〇〇:え?な、なにが?


瑛紗:ん?ああ、初めて学校で会った時から比べたらちゃんと会話出来てる


〇〇:さ、さすがに慣れたよ…


瑛紗:全然慣れてないじゃん笑


〇〇:2人きりは緊張するよ…笑


瑛紗:ねぇ、もし星になれたらどんなことしたい?


〇〇:え?


瑛紗:聞いてるんだけど?


〇〇:そ、そうだね…ずっと光ってたい!


瑛紗:ぷっ笑


〇〇:笑うなよ…そんな池田さんはなにしたいの?


瑛紗:私はね〜星に願いを込めた人の願いを叶えてあげたい


〇〇:…


瑛紗:星に願いを込めても叶うかどうかわからないじゃない?でも私が星になってどんな小さいことでも大きいことも叶えてあげるの。そうしたらみんなが幸せに生きていけるから…

彼女のロマンチストの話はどこか幸せに溢れ
どこか希望に満ちている
でもなぜか…


〇〇:ねぇ…


瑛紗:ん?


〇〇:もし、僕の願いを叶えてほしいって今言ったらどうする?


瑛紗:なに?叶えてほしいことあるの?


〇〇:まぁ…叶わなくてもいいかなーって思うような…


瑛紗:なによそれ!!どっちなの!!?はっきりしなさい!!


〇〇:痛い痛い!!叩かないで!!


瑛紗:そういうところが男らしく無いぞ!!


総馬:……


美空:なんかいいね笑


総馬:うるさいから起きたけどな笑


神様は時に残酷だけどその先には幸せがあり、そしてまた新たなものを得させる

ーーーーー

テスト本番の日放課後

総馬:よ、よし…行ってくる…


〇〇:大丈夫、自信持って


美空:全力出すんだよ!


瑛紗:ダメだったらしばくから


総馬:ひ!!行ってきます!


美空:私も学年委員会行ってくるね〜


〇〇:僕も久保先生のところに行ってくる


瑛紗:私は担任のところ行くね〜


美空:じゃあ総馬の結果出るまでに教室集合で!


〇〇:わかったー


瑛紗:あとでね!

子供が好奇心を持ってやり始めたことを嫌いになったらその子はどうなるのか
違う好きなことを見つけてその道を進むのか
何も見つからず道を彷徨い、ただ生きるだけなのか
今の僕は後者だろう
傷つき傷つくことからただ避けて自分にとって居心地の良い場所や時間を作り出す
それでもいいんだ
その方が幸せだと知った


〇〇:久保先生


久保:んー?どうした?あ、ピアノ?


〇〇:いいですか?


久保:今日は私18時には帰るからそれまでならいいよ?


〇〇:ありがとうございます、どうせ総馬の追試待ちなんで笑


久保:あ、今日だったね笑じゃあ帰る時教えてね

ピアノを弾いて人に聞かせるなんてもう無理だ
自分だけのため…

バッハ/G線上のアリア

誰だって人を求める
しかしその求めとは人によって意味が変わる
助け、寂しさ、苦しさ、楽しさ、嬉しさ、分かち合い
人は1人で出来ることなんて限られてる
だから僕は…もがいている…

ターン♪

〇〇:ふぅ…

パチパチパチ👏


〇〇:え?

初めて見た

瑛紗:グスッ…グスッ…


〇〇:え?なんで…


瑛紗:なんでだろう…グスッ…ただ…嬉しい気持ちと…グスッ…感動で…グスッ



神様はやはり時に残酷だ
僕にまた
人に聞かせるための道標を示した気がした
ただこの彼女の涙は今の僕にはわからなかった

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