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人生のメビウスはめぐる(ビクトル・エリセとともに)

 2024年2月9日から、ビクトル・エリセ監督の31年ぶりの新作長編作品『瞳を閉じて』の順次公開がスタートした。

 ミニシアター全盛期に『ミツバチのささやき』『エル・スール』を大学時代に仙台のミニシアターで観て以来、運悪く観る機会を逃した『3.11 A Sense of Home Films 』の中の短編以外は、全部観ている。
 『マルメロの陽光』は社会人になってから名古屋のミニシアターまで静岡からはるばる観に行った。劇場で観れなかったのは上記の他、やはり短編で参加しているオムニバス『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』だが、これはDVDで購入して観た。
 LD時代は入手できなかったが、DVDボックスは2種類とも持っている。

 そんなわけで、好きな映画監督は、と聞かれれば、迷わず「ビクトル・エリセ!」と即答するくらいに好きな監督だ。
 『ミツバチのささやき』と『エル・スール』は劇場にかかる機会があれば、くり返し足を運んだが、美しい映像と緊密な構成に引きこまれ、繰り返すほどにひとつひとつのシーンが染み入ってくるようになった。観る年齢によっても新たな発見があり、観れば観るほど好きになる。

 それほど好きな監督でもあるが、作品そのものとは別に、自分の人生に刻まれた出来事があった。
 普段は静岡にいて、ミニシアター系の作品は東京より遅れて観ることになるのだが、恵比寿ガーデンシネマでの『10ミニッツオールダー・人生のメビウス』公開初日が、たまたま東京に滞在して、他に予定のない日にあたった。
 ということで、2003/12/13の公開初日に観に行くことができた。トップの写真はその時のポスター。学生時代ほど映画を観れていなかった中、久しぶりにミニシアターで傑作を観た、という感じでなかなか楽しかった。

 と、満足して映画館を出たところで、ぴあの出口調査に出くわした。
 「ああ、公開初日だから、そういうこともあるのか」と思って、その時思ったことをコメントしておいたら、なんとなんと、12/22発売のぴあに自分のコメントが載ってしまった(笑)。

オムニバスというより、7本でひとつの作品であるように感じられた。様々なジャンルの作品が、盛り沢山で大満足。

ぴあ 2003/12/22号より


 下の人のコメント「ひとりでも好きな監督がいるなら絶対に観るべき」というのが、たぶんこの映画に関する模範コメントだと思うので、そうじゃないことをコメントしてみたのがポイントだったかな、と思ったりした(あとは、自分がつけたのがアンケートの中で最高点だったのかもしれない)。

 『10ミニッツオールダー』は後編にあたる『イデアの森』の方も観たが、そちらは本当にいろいろな監督の作品を順番に観る、という印象で、『人生のメビウス』とは印象が違った。
 作品のセレクトと配置が「人生」や「時の流れ」を感じさせるものだったのと、『人生のメビウス』という邦題が観た自分のイマジネーションをいい感じに刺激してくれたのだと思う。
 作品もよかったが、そんなわけで、映画ファンとしては忘れられない人生の想い出にもなった。

 『瞳を閉じて』と『ミツバチのささやき』『エル・スール』は3月には静岡でも観れるはずなので、今から楽しみにしているところだ。

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