郷土料理 ぬっぺい汁
先日、食の匠※から岩手町の郷土料理であるぬっぺい汁の調理体験をしてきました。
※食の匠とは、岩手県が認定する地域の食文化、郷土食に関する知識・技術の継承と情報発信を行う人のこと
まず、ぬっぺい汁とはなんぞ? ということですが、
「ぬっぺい」というのは、材料の山芋のような「ぬぺっとしている」という擬音語からきております。
山芋をすり下ろしたとろろが入った汁もの、で「ぬっぺい汁」ですね。
材料は
・山芋
・きのこ(香りがきつくないもの⇒舞茸とかは不向き)
・大根
・豆腐(固めのもの)
・煮干し(だし用)
・醤油(香りづけなので少量)
・塩(味付けはこっち)
という感じ。
結構シンプルです。
手順としては、
1. 煮干しから出汁をとる
2. 山芋をすり下ろす(とろろを作る)
3. 大根をすり下ろして、おろし汁を取り分ける(大根おろしは別に食べてね)
4. 豆腐は細切り(2、3mmくらい)して、軽く水で洗う
5. だし汁にきのこを入れてひと煮立ちしたら豆腐を投入、塩と醤油で味を整える
6. 大根おろし汁をととろに加えて、泡立てる!!
7. きのこ汁に泡立てたとろろを盛り付ける
完成!!
という感じ。
できあがったぬっぺい汁は素朴でありながら、とても優しくて懐かしい味でした。
細切りにした豆腐ととろろがするするっと喉に入ります。
きめ細かく泡立てたとろろの下に、透明な出汁と細く白い豆腐がのぞく。
ぬっぺい汁はちょっとした「おもてなし料理」だったそうです。
という材料も行程もシンプルな料理ではありますが、実際にやってみるとだいぶ手間がかかります。
今回は数人分しか作りませんでしたが、もともとはお祭りや会合の時に振る舞われたそうで、その場合、十人、二十人、もしかしたらそれ以上の分量を作ることになります。
大量に出汁を取り、
大量に長芋と大根をすりおろし、
大量のとろろをふわふわに泡立てる。
結構大変です。
現代ではあまり作ることがなくなってしまったそうですが、作るのが大変だから、というのが理由の一つだそうです。
もう一つの理由は、たくさん人が集まる機会が減ってしまったから。
この「ぬっぺい汁」は家庭料理というより、地元の人々が集まるときにみんなで材料を持ち寄って大勢で支度する、というものだったそうです。
ちなみに塩味が基本なのは、昔は秋に採って塩漬け保存したきのこを使っていたから。
(数十年前は醤油もそれほど簡単に入手できるものではなかったそう)
地域で採れるものを使って、たくさんの人でワイワイしながら作ったものだ、と聞きました。
きっと祭りの日とかに、採れた山芋や大根をみんなで持ち寄って、大鍋で出汁を取っている横で、男衆が酒を飲みながら大量の山芋や大根をすり下ろしていた。
そんな光景の中で、老若男女みんなでぬっぺい汁を味わっていたのでしょう。
そう考えると郷土食というのは、地元の素材を使う、ということはもちろん、地域の人々の交流の場を作るものであり、さらにそういう場で食の知識や技術が伝承される。
そんなことがセットだったのでは。
と、そんなことを思うのです。
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