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北国の春

東北の春は豊かだ。

桜、梅、椿。
長い長い、厳しい冬を経て花という花が放たれたように咲き乱れる。

これまで関東で暮らしていたとき、からっと寒い冬が過ぎて少しずつ暖かくなり、梅が咲いて、少ししてから桜が咲いて。
桜が咲くのは嬉しくて、でも一瞬で咲いて一瞬で散ってしまうのがどこか刹那的で物悲しいなあ、と思っていた。
けれど、北国の桜は同じ桜なのに全然違う。

寒いどころか極寒の極寒、毎日のように雪が降る長い長い冬を過ごしていると終わりが見えなくて、心身ともに閉じこもるばかりの日々。
それが、雪が消え、日中は暖かさが戻り、ようやく花が咲く。

「よくぞ、よくぞ咲いてくれた!! ずっと待っていたんだ!」と、それほどまで桜に思いを寄せるのは初めてで、こんなに桜が待ち遠しかったのも初めてだ。

北国は厳しい環境だ。冬を過ごした時、正直「なんてところに来てしまったのだ」と絶望した。
けれど、その厳しい環境を乗り越えて、乗り越えたからこそ自然からの恵みを染み入るように感じることができる。
環境は厳しいけれど、この豊かさは癖になってしまいそうだ。

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