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地方から眺めた社会

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愛媛県南予地方に暮らしながら、社会の在り方を眺めて思ったこと。 400字程度の短い記事を月に1-2本投稿しています。 最近は不定期更新。
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記事一覧

未成年者の行動はどこまで制限してよいのか

2023年8月。 私がお手伝いしている事業所に、夏休み中の期間限定で地元の高校生が数人働きに来ていました。 働いて稼いだお金をどう使うのか、気になって訊いてみたところ、皆さん特に決めた使い途は無いとのこと。 市内にある遊興施設、カラオケボックスやボウリング場で遊ぶ際にでも使うのかと思って尋ねたら、八幡浜市全体の決まりでそういった施設に遊びに行くことはできない、と予想外の回答が返ってきました。 まさかと思って調べてみると、八幡浜市役所のWebサイトで公開されている「小・中高校

「厚意」が「残念」を生まないために

八幡浜市内を流れる五反田川では、毎年5月中旬から6月上旬にかけて、鯨橋という橋の周りを中心にホタルが飛び交います。 地域の方々が保護活動にも長年取り組んできた成果として見られる光景で、今年もたくさんの柔らかな光が明滅しながら乱舞する様を楽しめたのですが、一つ残念な事件がありました。 この期間中に行われたボランティア活動の草刈りによってホタルが減ってしまった、という事件です。 そもそもホタルが発光しながら飛び交うのは、交尾して産卵するための行動です。 ホタルは川べりの草木が作

人が減るまちの人手不足

八幡浜でも夜の街の賑わいが戻りつつある中、ある問題が顕在化しています。 それは、代行運転サービスの不足。 感染症対策の外出抑制が行われていた間に事業者が廃業したり運転手が減らされたりしたため、回復しつつある需要に対してサービスの供給が追い付いていません。 週末の夜に代行運転を頼んだら1時間以上待つことになった、という話もたびたび聞きます。 車社会な地方都市の飲食業界にとって、なかなかに頭の痛い問題です。 誰か代行運転業を立ち上げてくれないものか、という声もよく耳にするのです

住み心地のよい街とは

2023年5月。 香川県多度津町を訪ねた際に、北米のとある大都市に住む方とお話する機会を得ました。 その方がおっしゃるには、いまお住まいの街はどうも住み心地が良くないとのこと。理由を尋ねると、再開発が繰り返される都市であるためか町並みや風景から街の歴史的民俗的背景を感じにくく落ち着かない、ということをおっしゃっていました。 とても興味深い視点です。 その方は考古学の研究をされていることもあってそうした面への関心がとりわけ強いのだろうと思いますが、街の姿から歴史的民俗的背景を

戦争体験を受け継いでいくこと

2023年5月10日。 宇和島市に出向いて、宇和島空襲を記録する会 主催の慰霊の集いに参加しました。 78年前の5月10日、四国の片隅のこの町も空襲の標的となり、数多くの命が失われています。 3年前にお誘いいただいて初めて参列して以来、4回目の参列でした。 会員の皆さんと一緒に和霊公園の慰霊碑をお掃除した後、空襲当時を体験された方々のお話を伺ったり、和霊神社参道の太鼓橋に残る焼夷弾の落下痕を見学したり。 前回参列してからの1年の間に、当時を体験された会員さんがまたお一人亡く

ごみ拾いボランティアと行政

2023年4月。 (一社)E.Cオーシャンズさん主催の海洋ゴミ回収体験事業「鬼ごみ拾い」が開催され、今回も参加させていただきました。 今回は愛媛県伊方町釜木集落近くの「恋の浜」でごみ拾い。 最寄りの道路からはロープ伝いに急斜面を降りないと辿り着けないため、参加者の移動とごみの運搬はもっぱら船による往復でした。 4日間の日程 (私は初日と最終日の計2日間の参加) で拾い集められたごみは、2tトラック山盛り10杯分ほど。 これを行政のごみ処理施設に引き渡すまでが「鬼ごみ拾い」

方言と郷土愛

2023年3月。 南予一期座だんだんの第3回公演「風の音リンリン」を観覧しました。 坊ちゃん劇場所属の方が演技指導を行い、八幡浜や近隣地域在住の方々が地域を題材にしたミュージカルを演じる市民劇団の公演です。 第1回、第2回の公演も観覧しており、今回も楽しみにしていました。 劇中、会場全体が一体となって大いに盛り上がる場面がありました。 「てやてや音頭」を踊る場面です。 これは夏祭りの際などに踊られる盆踊り風の音頭で、語尾に付けて強調や断定を意味する「てや」という八幡浜方言を

Uターン者・移住者の居場所

愛媛県南予地方にUターンして来られた方、移住して来られた方とお話をする中で、よく聞く課題感があります。 それは、同年代の人と知り合う機会が無い、生活していて孤立しがちになる、といったもの。 私自身も感じる課題です。 人の入れ替わりが少ない地域で暮らす多くの人は、子どもの頃から続く長年の人間関係の中で生活しています。 ご近所さんや代々地域に根付いている親族関係、小中高とあまり顔ぶれの変わらない学校の同級生。 そのような固定された人間関係に新しく混ざっていく負担はなかなか大きい

事業者支援制度と利用現場のすれ違い

2023年1月。 政府の「全国旅行支援」事業の一環で、愛媛県内で「えひめぐりみきゃん旅割」事業が始まりました。 昨年から実施されている事業の継続ではあるものの、旅行先での消費喚起のため配付されるクーポン券の仕様に大きな変更があり、小売店の現場に不満が生じています。 昨年は、宿泊施設から旅行者に紙のクーポン券が渡され、その券をそのまま加盟店での会計時に渡すと1,000円単位の支払いに充てられるという仕様でした。 それが今年からは、宿泊施設から旅行者に紙のクーポン券が渡され、

漂着ゴミを拾った後の話

前回に続いて、2022年12月に参加した(一社)E.Cオーシャンズさん主催の海洋ゴミ回収体験事業「鬼ごみ拾い」のお話を書きます。 今回、私は全4日間の日程のうち後半の2日間参加したのですが、漂着ゴミを拾う作業に従事したのは実はそのうち半日間だけでした。 残りの1.5日間は何をしていたかというと、運搬に関する作業です。 前半日程で無人島の浜に集められたゴミを船で港まで曳航する作業、ゴミ拾いで活躍した船の船底塗装を直す作業、焼却処理施設に運ぶためのトラックにゴミを積み込む作業な

社会問題に本気で向き合うゴミ拾い

2022年12月。 前年に参加した(一社)E.Cオーシャンズさん主催の海洋ゴミ回収体験事業「鬼ごみ拾い」に再び参加させていただきました。 E.Cオーシャンズさんは、船舶や潜水の資格をもつ方々が集まり、陸路ではたどり着けないような険しい海岸や無人島への漂着ゴミを回収しつつ、海洋ゴミ問題の改善に取り組む団体。 年に数回、比較的危険度の低い海岸で会員以外も参加可能なゴミ拾いイベントを行っておられます。 参加した日は悪天候のため、活動場所は陸路でも行ける海岸に変更。 E.Cオーシ

まちを知る場 ~愛媛県西予市の場合~

2022年12月。 愛媛県西予市にある「四国西予ジオミュージアム」を訪ねてみました。 「四国西予ジオパーク」の中核施設として今年の4月に開館した博物館です。 「ジオパーク」とは、地球科学的な意義がある土地を教育や暮らし、持続可能な産業に活用しつつ管理していると認められた地域のこと。 西予市も「四国西予ジオパーク」として、日本ジオパーク委員会に認定を受けています。 宇和海沿岸のリアス式海岸で営まれる養殖漁業や段畑での柑橘栽培。 古墳時代の繁栄も伝わる、肥沃な宇和盆地の稲作。

続・季節労働のまち

2022年11月。 丸一日予定のない日があり、ふと思い立って親戚が営む柑橘農園で収穫作業のお手伝いをしました。 この農園は、愛媛県西予市三瓶町にあります。 日当たりが良くて海風もあたる、綺麗に石垣の組まれた段々畑。 甘くて味の濃い、とても美味しいみかんができます。 しかし「三瓶」という地域は高級ブランド産地として名が通っている隣町・八幡浜と比べて価格交渉力が弱く、市場での販売価格がさほど高くならないこともあり、農協を介さず個人で販路を開拓して経営されています。 また、ご高齢

季節労働のまち

2022年10月。 八幡浜市内の各戸に、郵便局のアルバイト募集の案内が配られました。 10月から八幡浜は“みかんの季節”に入ります。 愛媛県内の温州みかん生産量の半分を生産する八幡浜市では、秋から冬にかけて郵便局もほかの運送業者もみかんの発送取り扱いで大忙しです。 それに備えた求人だったのでしょう。 この時期、ハローワークの求人もみかん関連のもので大きく増えます。 地域の主要産業の書き入れ時に人手を確保するため、官民一体となって地域の外からの“みかんアルバイター”募集にも取