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地方から眺めた社会

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愛媛県南予地方に暮らしながら、社会の在り方を眺めて思ったこと。 400字程度の短い記事を月に1-2本投稿しています。 最近は不定期更新。
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記事一覧

一目で地域を示す景観

2024年8月。 競技かるた大会に出場するため、島根県益田市に出向きました。 車でしまなみ海道を渡り、広島市街地を抜けて山間部に入ったあたりから目立ってきたのが、石州瓦の家並み。 道中見かけるどの集落でも、家々はもとより、学校などの公共施設も赤茶色の石州瓦が葺かれていて、石見地方周辺に来たことを強烈に印象付けられました。 途中立ち寄った津和野町、目的地の益田市もまた、視界一杯を赤茶色が占める石州瓦の家並み。 寒さに強いという石州瓦の実用性が背景にあることを知っていると、雪深い

消えゆく地名への思い

2024年7月。 八幡浜市の神山地区公民館で「市長をかこむ会」が開催されたので、足を運んでみました。 市長と幹部職員が市内各地区の公民館を巡り、市民との意見交換を行う事業。 市長による40分間ほどの市政報告があった後、参加者との質疑応答と意見聴取の時間がありました。 私も主に八幡浜の歴史や特徴を学ぶ場について質問(関連記事はこちら)しましたが、それはさておき、他の方から気になるご意見が挙がりました。 それは、統合が予定されている「神山小学校」の名前を残してほしい、というもの

ジェンダーレスなコミュニティ

伊方町立大久小学校から、学校全体での哲学対話の導入をお手伝いするお仕事を頂きました。 校長先生が企てていらっしゃるのは、道徳をはじめとする授業への導入と、学年を混ぜて全校児童(約20人)で実施する2週間に1回の15分間哲学対話。 業界でもあまり事例を聞かない、野心的な取り組みです。 まず手始めにということで、6月の頭に3-4年生学級と5-6年生学級それぞれの道徳の時間に、道徳の教材を使った哲学対話を実施しました。 そのうち5-6年生学級の時間に、とても驚いたことがあったのでこ

宇和島の80代

今年の5月は賑やかに始まりました。 御年83歳の御姐様から、過去に出演されたテレビ番組のディレクターほか何人かと宴会をするから宇和島にいらっしゃい、とのお呼び出し。 その御姐様とも熱燗を酌み交わしたほか、二次会は御年85歳のママさんが営まれるスナックに連れて行ってくださり、歌って踊る御姐様やその“親衛隊”と化した方々と一緒に大騒ぎでカラオケを楽しみました。 ちなみにこのスナックのママさんは、27歳でお店を持たれて以来、場所を変えながらもずっとスナックを営んでこられたそうです。

同調と対話

いつだったか「田舎は同調圧力鍋だ」という言葉を発する方がいらっしゃいました。 何となく同意できるような気がしつつ、聞いた時には深く掘り下げてみなかったこの言葉。 つい最近になって、この「同調圧力」を生む要因に思い至りました。 気付きを得られたのは、哲学対話の最中にどうも問いが深まらないなと感じる場面から。 そうした場面ではたいてい、各々の持論が熱く語り合われているのですが、そこには同調・同意を求める姿勢が伴っていることに気付きました。 対話に慣れ、問いを上手に深めていける方

Z世代の“絶望”に抗いたい

東京のある企業が主催する、大学生向けの一次産業体験インターンシップが八幡浜市で開催されました。 柑橘類の生産と加工に従事しながら、地域課題を学んで解決策を考える、という内容だったそうです。 私がいつもお世話になっているコダテルも協力していて、参加学生と開催地住民との交流会にお誘いいただいたので参加してきました。 学生さんの中に、大きなノートを携えている方がいらっしゃいました。 日記でもあり、会話の中で気になった言葉や考えを書き留める備忘録でもあるそうです。 とても素敵な習慣

機会の不利

昨年から、小倉百人一首競技かるたの競技者に復帰しました。 温かく迎え入れてくださったかるた仲間の皆さんには、感謝の思いでいっぱいです。 いざ復帰してみると、地理的な不利を実感するようになりました。 競技かるたは1人ではできません。 競技人口も少なく八幡浜市内には仲間がいないため、車を片道2時間弱走らせて松山の練習会に出向いたり、南予一円から仲間をかき集めて卯之町で練習会を開いたりしています。 私は自分で車を運転できるのでまだ良いのですが、気になるのは未成年の仲間の皆さん。

令和2年国勢調査から見える愛媛県の状況 ~ひとり親世帯編~

最新の国勢調査 (令和2年 = 2020年) の結果から愛媛県の各市町の状況を見てみようと思い立ち、公開されているデータを基にいくつかの表を作ってみました。 前々回は高齢者について、前回は働き方についてのデータをご紹介しましたが、今回は”ひとり親世帯”に関するデータをご紹介していきます。 ひとり親世帯の20歳未満世帯人員数 20歳未満の「一般世帯の世帯人員数」のうち、母子世帯と父子世帯、他の世帯員 (祖父母など) もいる世帯とそうでない世帯に暮らす人数の割合を、それぞれ

令和2年国勢調査から見える愛媛県の状況 ~働き方編~

最新の国勢調査 (令和2年 = 2020年) の結果から愛媛県の各市町の状況を見てみようと思い立ち、公開されているデータを基にいくつかの表を作ってみました。 前回は高齢者についてのデータをご紹介しましたが、今回は”働き方”に関するデータをご紹介していきます。 1. 従事する産業別雇用者数 各産業に従事する雇用者 (雇われて働く人) の人数と、雇用者の総数に対する割合を表示しています。 全国での数値と、愛媛県および愛媛県内20市町の数値を比較できるようにしました。 この

令和2年国勢調査から見える愛媛県の状況 ~高齢者編~

最新の国勢調査 (令和2年 = 2020年) の結果から愛媛県の各市町の状況を見てみようと思い立ち、公開されているデータを基にいくつかの表を作ってみました。 まずは高齢者についてのデータをご紹介します。 1. 高齢化率 総人口に占める65歳以上、75歳以上、85歳以上の各割合を算出しています。 全国での数値と、愛媛県および愛媛県内20市町の数値を比較できるようにしてみました。 表を見ると、愛媛県は65歳以上の割合が全国での割合 (28.0%) と比べて高く (32.5

「市民アンケート」の使い方

2023年9月。 八幡浜市役所から1通のお知らせが届きました。 内容は、市の土地利用に関する市民アンケート回答者を集めて実施する予定だったワークショップを実施しないことにした、というもの。 回答した際に参加を希望していたため、私にも送られてきました。 アンケートの対象となった土地は、電力会社の事業所が移転したことで空いた、それなりの広さをもつ土地。 市外からの訪問も多い八幡浜港フェリーターミナルや道の駅と中心市街地のちょうど間に位置しており、街づくりを左右する開発計画になる

未成年者の行動はどこまで制限してよいのか

2023年8月。 私がお手伝いしている事業所に、夏休み中の期間限定で地元の高校生が数人働きに来ていました。 働いて稼いだお金をどう使うのか、気になって訊いてみたところ、皆さん特に決めた使い途は無いとのこと。 市内にある遊興施設、カラオケボックスやボウリング場で遊ぶ際にでも使うのかと思って尋ねたら、八幡浜市全体の決まりでそういった施設に遊びに行くことはできない、と予想外の回答が返ってきました。 まさかと思って調べてみると、八幡浜市役所のWebサイトで公開されている「小・中高校

「厚意」が「残念」を生まないために

八幡浜市内を流れる五反田川では、毎年5月中旬から6月上旬にかけて、鯨橋という橋の周りを中心にホタルが飛び交います。 地域の方々が保護活動にも長年取り組んできた成果として見られる光景で、今年もたくさんの柔らかな光が明滅しながら乱舞する様を楽しめたのですが、一つ残念な事件がありました。 この期間中に行われたボランティア活動の草刈りによってホタルが減ってしまった、という事件です。 そもそもホタルが発光しながら飛び交うのは、交尾して産卵するための行動です。 ホタルは川べりの草木が作

人が減るまちの人手不足

八幡浜でも夜の街の賑わいが戻りつつある中、ある問題が顕在化しています。 それは、代行運転サービスの不足。 感染症対策の外出抑制が行われていた間に事業者が廃業したり運転手が減らされたりしたため、回復しつつある需要に対してサービスの供給が追い付いていません。 週末の夜に代行運転を頼んだら1時間以上待つことになった、という話もたびたび聞きます。 車社会な地方都市の飲食業界にとって、なかなかに頭の痛い問題です。 誰か代行運転業を立ち上げてくれないものか、という声もよく耳にするのです