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行きつけのお店の安心感

昔からお酒を呑むのが大好きな私。美味しいお酒と、美味しい食事とを口に入れ、体に味が染み渡るあの瞬間。脳天からつま先までジワーッと美味しさが伝わり、少し手先が痺れる感覚。空飛ぶ絨毯に乗って雲の上を舞い、少し暗い筈の店内が、美しいヨーロッパにも、荒れ狂う日本海にも、広大な中国にも変化する錯覚。

その一瞬のために、仕事して、給料もらって、本当に良かったなと。

食通でもなく、本物の良さが分かっている訳ではないですが、「この店の料理・酒は美味いな」というお店は何軒もあります。ただ、「また来たいな」と思えるお店となると、かなり数が絞られる。そして「通いたいな」と思えるお店となると、もう数えるほどしかない。

何故???


安心感、なんでしょうね


味に対する安心感

ここに来れば何を注文しても間違いない。口に入れた瞬間に「うまっ」と唸ってしまう。美味しい。確実に美味しい。絶対に美味しい。誰にでも自信を持ってオススメできるし、オススメしたくなってしまう。誰にも教えたくない、という感覚に一瞬なるけど、次の瞬間には誰かとこの喜びを共有したいと思ってしまう。
もしかして、この料理を作ってくれた目の前にいるこの人は、わたしの味覚を完全に制御しているんではないだろうか。そう感じてしまう。

両親が京都の人間で、小さいときから食卓には和食が並ぶことが多かった。うちのコタツで作る煎餅が大好きで、おばあちゃんが漬けるぬか漬けが大好きだった。

そんな人生を歩んできたことを話してもいないのに、もしかして知ってました?と聞きたくなる。

昨日食べたもの、今朝食べたもの、昼に食べたもの
その流れの中で選んだ食事の種類。何日も前から「あー、あれ食べたいなー」と妄想していた食事の種類。

もしかして、それも知ってました?と聞きたくなる。

基本的に酒を呑むのが大好きで、呑みだすと食べる量が極端に減るわたし。美味しいなーと思いながら、グビグビ呑んでると、「これ美味しいから、食べて」とサービスしてくれるアテの美味しさ。

やっぱりここにして良かったと自分にご満悦。

でも、美味しいお店はたくさんある。なので、美味しいだけでは行きつけにはならない。


店内の雰囲気に対する安心感

少し薄暗い感じの店内が好きです。
お皿はどっしりした感じが好きです。
並んでいるお皿が雑然としながらも美しく飾られているのが好きです。
さりげなく置かれた木花が好きです。
トイレ空間をきれいにしていただいているのが好きです。
調理しているところが見えるのが好きです。
カウンター中心が好きです。
テーブルや椅子が馴染んで風味が出ているのが好きです。

店内を構成する要素は膨大にありますが、一つずつ、色々なところが見えるし、自分好みでないところがあると、どうしても気になってしまう。

全体の雰囲気いいねんけどお皿がちょっとなあ

美味しいねんけどカウンターがないのよなあ

テーブルと椅子が合ってないのよなあ

一つでも気になってしまうところがあると、そのお店からは遠ざかってしまう。

店内の雰囲気を作るのに、もう一つ重要な要素は、来られている他のお客さん。客層がいいお店と悪いお店がある。
以前とあるお店に伺ったときに客層だけが残念すぎたお店があった。うるさいし、お店の方との接し方も下品だし、聞こえてくる喋り方がアホそうだし。すっごい美味しかったのに、あれからもう行ってない。行こうと思わない。

お店はお客さんを選ぶことができないけれど、自然と選んでいるのだと思います。いい雰囲気はいい人を呼ぶ。


人に対する安心感

一人呑みすることも多いのですが、一人呑みしている時が一番、お店の方がどういう方かが分かりやすい気がしています。普段から口下手なので、お店の方とお喋りして時間を過ごすことはあまりしないのですが、ただ、たまーにお話させていただくこともある。その微妙なタイミングと、会話する量の心地よさはそれぞれ。でもその心地よさ次第で通いたくなるかどうかは大きく左右される。

素晴らしいお店の方だと、一度団体で行ったことがあり、あそこ良かったし一人で行ってみようかなと伺ったときに「以前にも来られたことありますよね?」と言っていただいた瞬間。団体の一人でしかなかったのに何で覚えてくれてるの?これはもう通うしかないと心に誓う。覚えていただけたなんて最高すぎる。

逆に、普段一人で伺っているようなお店で知り合いを連れて行ったときに、連れへの配慮が抜かり無く、真面目な会話をしている時には決して声を掛けず、ふとしたタイミングでさりげなく声を掛けていただき、普段のことはあまり多くは語らず、と、配慮いただけることに安心をする。

そういう方は長くお付き合いさせていただけるので、若いころも知っていただき、いまの年老いた自分も受け止めていただき、本当にありがたい。

お互い歳を取って、お互いのことを理解して、お互いのことをリスペクトして

人同士の付き合いは難しいけど最高に楽しい

楽しいとなった瞬間に別世界に超越する

超越すると楽しいを通り越して心地よさだけになる


数は多くなくていい

ただ安心感に包まれる場所は幸せ

行きつけのお店

一生通いたい


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