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第7章【転落記】とあるキャリアウーマンの転落記

「昨日未明、飲酒運転と自動車過失致死の容疑で逮捕された荒木梨沙容疑者(27)は、全面的に容疑を認めているようです。」

「堕ちたエリートOL、昇進とアメリカ赴任が潰える」

「轢き逃げの美人OLが見せた、闇の素顔、カメラを睨んで反省の色なし」

昨日私が検察へ連行されたあと、マスコミはテレビや週刊誌で私のことを大きく話題にしていました。
全く、外の情報を知らない私にとってはこのまま知らない方が傷つかなかったのかもしれません。

自分の醜態が全国に晒されるだけでなく、SNSなどで手錠腰縄姿にされて連行されている姿が一生残ってしまうことに対して憂鬱な気持ちになりました。

夜も眠ることができず、ただ、天井を見て今後の自分に起こる出来事などをぼんやりと想像しながら留置所生活を送っていました。

そして起床のベルが留置所内になると、私はゆっくりと起き上がって寝具の整理などを行い点呼で警察官が来るまで正座をして待っていました。
檻の前に警察官がくると名前を呼ばれ元気なく「…はい」と返事をして今日は裁判所へ行って勾留質問をするようです。

(また外へ連れ出されるのね。。。)
再び手錠腰縄で外に連れ出されてマスコミに醜態を晒すことを想像すると目眩が。
しかし、今の私の身分では手錠と腰縄がないとまともに歩くことすらできないのです。

「10時半にここを出ます。少し時間はありますが、準備をしておいてください。」と言って警察官は檻から去っていった。

あまりにも時間がありますが、朝食や身支度など簡単に済ませて数時間が経つと再び警察官が私の檻の前に現れて移送を告げられました。

警察官の手には黒い手錠と青色をした腰縄。
私の額に皺が自然と寄ってしまいました。今の立場では手錠と腰縄をつけなくては部屋からも出られない。
手錠腰縄は今の私にとって、衣服と同じようなものだと考えなくてはならないが拘束される感覚は永遠に慣れそうになかった。
 
そんな中、私は警察官に両手を差し出して、手錠と腰縄を手なれた手つきで繋いでいました。

ガチャリと独特の音がして、実際は軽いのにまるで何キロもあるかのように私の手首へと食い込むのです。
続いて腰縄を付けられると手首と連結して私の両手は前に突き出されたまま動かすことができなくなりました。

「被疑者の手錠、腰縄の施錠を完了、異常なし」
そう言って先輩警察官らしき人へ報告すると、私の尻尾のようにぶら下がっている腰縄を手に巻き付けて私を裁判所へ移送するための連行が始まりました。

幸いにも今日は外へ連れ出された時にマスコミはいなかったので、そのまま護送車に乗せられました。
「まずは一度検察庁へ護送します」と警察官は言って護送車は一度検察庁へ向かった。
到着後、護送車を降りて再び連行されるような形で、庁舎脇の大型エレベーターで地下2階に移動します。
裁判所へ護送される前に、東京地裁に移動する被疑者専用の部屋がありますので、そこで待機することになりました。
そこでも当然手錠を外されることはなく、ここで大人しく待機をすることになりました。

時間になって待合室から外に出ると、他にも3人の若い女性が私と同じように灰色のスウェット姿で整列させられていました。

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