見出し画像

毎日ナナしゃん ~After Story~ (118)

※この記事は重大なネタバレを含みません




 無機質な部屋に並ぶ、いくつもの四角い物体。
 モエは勿論、流石のキョウヤも動揺を隠せない。当たり前だ。私も、決心をするのに時間がかかった。
 そして今も、迷い続けている。
 この地下室に能力者を閉じ込めることは、果たして正しいことなのだろうか、と。

「……成る程。にわかには信じがたいが――つまりお前さんは、あのジンという男と結託し、鶴岡による保護と偽って生徒たちをここに閉じ込めた、と」
「そう捉ええて頂いて構いません」

 キョウヤは置かれた箱のうちの一つに近寄り、こんこんと右手で叩いた。反応は無い。
 私もキョウヤの横から覗き込む。飯島モグオが眠る箱だった。
 
「キョウヤさん、この光景を見て、私やジン先輩のやったことについて追求したいのは重々承知です。ですが、今――」
「急いでいるんだな?」
「……はい」
「確かに俺はお前さんに聞きたいことが山ほどあるが――それは後でもいいだろう」

 その言葉を聞いて、私はほっと胸をなで下ろす
 キョウヤが私の考えに賛同してくれるかはともかくとして、ここでキョウヤが納得してくれるかは未知数だった。だが蓋を開けてみれば、話を聞いてさえキョウヤは涼しい顔をして私の前に立っている。
 
「協力を頼む、と言ったな。誰を起こすかは決めてあるのか? この人数を一斉に起こすのは不可能だし、仮にそうしたところで余計な混乱を生むだけだぞ」
「ええ。分かっています」

 最初に誰を起こすか。私の中の答えは、既に決まっていた。
 この状況下で大きな混乱をせず、頭が切れる人物であればなお良い。おまけに、あのジンも変身能力を媒介して多用するほどの能力者。私には、一人しか心当たりがなかった。
 
 私は大量に置かれた箱の間をぬって進み、そのうちの一つに手を触れる。
 生体認証クリア。生命維持装置停止。
 ――扉が開く。
 
「……私のことが分かるか」

 私が声を掛けると、すぐにその少女は目を覚ました。
 そして毎日眠るベッドから朝身を起こすようにして、ゆっくりと起き上がる。
 
「あら、どうせ起こしてくれるならキスの一つでもしてくれれば良かったのに」
「そんな役回り、私には似合わない。まだお前の方が似合うくらいだぞ、コハル」
 



つづく

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました