ゾンビランドナナ #023

「私が……」

 柊ナナは暗殺者だった。いくら引退したとはいえ、無罪放免というわけにはいかないだろう。今でも恐らく、遠くから何者かに監視されているだろう。
 だが――曲がりなりにも島から開放されたのだ。それなりに軍からは信用されていると思っていた。

 コハルの話はこうだ。
 
 鶴岡はじめ軍の人間は、柊ナナを暗殺者として育てるために洗脳を施していた。当然である、いくら能力者殺しの目的があるといえど、人間の形をした動物を殺すのに抵抗が無いわけがない。
 古今東西、洗脳の方法はいくつもある。それまで柊ナナは、両親を失った悲しみ、憎しみを利用されたものだと考えていた。
 
 しかし、それだけではないとしたら?
 能力者が実験動物として扱われているのと同様、柊ナナや真壁モエのような無能力者も、洗脳の効果を試す人体実験の道具として扱われているとしたら?
 
「どこでその話を?」
「秘密よ。でも、信憑性の高い話だとは言っておくわ」

 何らかの薬物を投与されているか、機械を埋め込まれているか、それとも――
 
 コハルはコーヒーを飲み干し、カップを置いた。

「柊、私はあなたを助けたい」

 

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました