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毎日ナナしゃん ~After Story~ (113)

※この記事は重大なネタバレを含みません




 キョウヤは人数分の折りたたみ式自転車を用意していた。
 軽いが、見た感じ頑丈そうだ。かなり良いものなのだろう。キョウヤはエレベーターを降りたすぐそこで、てきぱきと組み立てている。
 
「手伝います」
「ああ、頼む」

 折りたたみ式とはいえ、組み立てるのは少し慣れが必要だ。だが、幸いなことに私はこのての作業は比較的得意としていた。
 モエには念のため部屋の中を調べてもらっている。それほど広い部屋ではないので、自転車の準備ができる頃には降りてくるだろう。
 
 自分でも不思議なほど、キョウヤと話すうちに心が軽くなるのを感じた。罪を感じなくなったわけではない。だが、心境の変化に、キョウヤの存在があったことは間違いなく大きい。
 
「とはいえ――煽るような言い方をしてなんだが、これからどうするつもりだ? あいにくだが俺は詳しい事情は知らない。あのジンという男から、詳しいことは柊から直接聞くようにと言われていてな」
「私のことは、少し落ち着いてからにしましょう。それよりも、いくらキョウヤさんが不死身だといえ、この三人ではとてもではないですが中島さんや鶴岡さんに勝ち目はありません。だとしたら協力者が必要です。能力者を制するには、能力者しかありません。以前、私とジン先輩は、島の能力者たちをある施設に――……キョウヤさん、何を嬉しそうな顔をしているんですか?」
「いや、深い意味はないんだがな。やっとお前さんらしい話し方をするようになったな、と思っただけだ」
「なんですか、それ」

 自転車を組み終わって暫くすると、モエが二階から駆け下りてきた。私は小さく手を振りながら、聞こえるか聞こえないかくらいの声で、呟いた。
 
「それは……キョウヤさんが思い出させてくれたからです。私の使命が、“人類の敵”を倒すことだ、ということを」



つづく

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