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毎日ナナしゃん ~After Story~ (62)

※この記事は重大なネタバレを含みません



 柊ナナという少女を初めて見た時、私は確信した。
 この女の子は、とても優しい人なんだ、と。
 自己紹介の時もそうだ。ナナしゃんは、自分は空気が読めないと言った。けど、それはきっと嘘。誰よりも人の気持ちが分かってしまうから、わざと空気が読めない風を装っているのだ。
 私とは、全然違うタイプの性格の持ち主だった。仲良くなれるか分からなかった。仲良くしてくれるか、分からなかった。
 
 ナナしゃんは、私に優しくしてくれた。クラスの中でからかわれていることを教えてくれた時も。人類の敵から、私を守ってくれた時も。
 私が倒れた後、ナナしゃんの傷を能力で治そうとした時。ナナしゃんは、声を荒げて私を怒った。
 びっくりした。ちょっぴり悲しくなった。
 
 ……でも、私は悪い子だ。ほんの少しだけ、嬉しかった。
 ナナしゃんが、私の前で感情を露にしてくれたことが。
 
 
 
  気がつくと、私はベッドの上にいた。
  窓から差し込む月明かりに手を伸ばす。骨が軋むような感覚に襲われるが、頭の中は鮮明だった。
  私の体は、完全に元の状態に戻っていた。
  そして、これまでの記憶も。小さくなってからの記憶も。全部。全部。
  ただ、私はすぐに違和感に気がつく。
  ここは、ナナしゃんの部屋。私はナナしゃんの傷を能力で癒やし、記憶を取り戻した。
  いないのだ。柊ナナが。部屋の中に。
  時計を見る。時刻は午前四時。どこかに出かけるには、まだ早すぎる時間だ。
  そして、もう一つ。
  
「やあ、お目覚めのようだね。気分はどうだい?」

 目の前に、犬飼ミチルがいた。



つづく

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました