ゾンビランドナナ #010

 夜道に残った足跡を辿る。
 歩幅はやや広い。走っているわけではないが、少し急いでいるようにも見える。

 小走りで先を急ぐ。
 
 街灯の光に小蠅が集る。自販機の明かりが来た道を照らす。
 男の背中は見えない。
 
 恐らく、少し離れた場所に車を駐めているのだろう。徒歩で来れるほど近所から来たとも考えにくいし、移動の利便性を鑑みればアパートのすぐ側に車か何かを駐めておくのが普通だ。あえてそうしないのは、恐らく向こうも警戒しているからだ。
 柊ナナの素性を知っている。
 
 ある程度時間がかかることを考慮して、路駐はせずコインパーキングを利用しているか、誰か別の人物が運転をしているはずだ。だが、後者であれば向こうから迎えに来させれば良いわけで、ここまで距離を歩く意味はない。とすると、恐らく男は一人だ。
 この付近にコインパーキングは多くない。
 
 柊ナナは歩きながらスマホを操作し、コインパーキングを検索する。およそ百メートル先。エンジン音。車のライトが点灯し、そしてすぐに消灯する。
 距離を詰めるのに、およそ十五秒。まだ足は鈍っていない。男がコインパーキングの精算を済ませている間、追いつくには十分な時間だった。
 
 距離を詰め、フロントガラスに向かってスマホを投げつける。

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました