ゾンビランドナナ #007
帰路。
サインをもらった報告書を写真に撮り、派遣会社にメールを送った。
アパートからコンビニまで一駅。
行きは電車に乗るが、帰りは歩くことが多い。通り道にあった赤い自販機。冷たいコーラを買う。封を開け、口をつける。甘ったるい液体が、喉の奥で弾けた。
目の前の道を、選挙カーが通り過ぎた。
さほど政治に興味は無い。昔のように暗殺を続けていたら、どうだっただろう。それでもやはり、大して興味は無かった気がする。
暗殺の仕事を辞める直後、大きな政治闘争と政権交代が起きた。
恩のある人も無い人も、恨みのある人も恨みを買った人も、皆いなくなった。
よく暗殺を辞めさせてもらえたものだ。あのまま遣われていれば、きっと柊ナナもミチルも、今頃は獄中の実験動物だ。
ぬるいコーラを鞄にしまう。車の通り過ぎた後に、小石を蹴飛ばした。
「ただいまー」
返事は無い。靴を脱いで上がると、ミチルはソファで居眠りをしていた。ベッドに丸まっているタオルケットを広げ、肩からかける。
時々不安になる。いつか、恨みを買った誰かが、大切なものを壊しにくるのではないかと。
もらってきたカツ丼を温めようと立ち上がった時、左手の指をつかまれる。
振り返ると、やはりミチルは眠ったままだった。
しばらくの間、そうしていた。
ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました