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毎日ナナしゃん ~After Story~ (125)

※この記事は重大なネタバレを含みません




「柊たちに協力するのは構わないわ。ただ、条件を出してもいいかしら」
「条件?」
「ええ。条件と言うよりは、お願い、に近いのだけれど」

 そう前置きをしてからコハルが私に申し出たのは、丸一日の休暇。
 それも、私と一緒に、である。
 
「ヒヨリは一緒じゃなくてよかったのか?」
「今日はね」

 コハル曰く、これは“デート”らしい。
 一応我々は追われる身なので迂闊な行動は避けたいが、コハルが条件として言うなら仕方ない。私は甘んじて受け入れることにした。
 
 まず真っ先に向かったのは、ショッピングモールに入っている服屋だった。
 チョイスを間違えなければ誰が着ても似合いそうな服が大量に並んでいる。そう、平凡であれば平凡であるほど良い。私はそこで、以前ジンとショッピングモールに乗り込んだときとほとんど同じようなシャツ、それと帽子を持ってレジに並ぶ。
 
「……コハル、どうしてお前も全く同じ物を持っている」
「双子コーデよ」
「お前の妹は私ではなくヒヨリだろう?」
「ヒヨリは今モエちゃんと遊んでいるわよ」
「いや、そういうことを聞きたいわけではないんだが」

 暫く待ち、レジの順番になる。私は、コハルが手にしていたシャツと帽子を引ったくり、自分のものと一緒に店員に差し出した。
 
「会計、一緒でお願いします」
「あら、優しいのね」
「ろくに現金も持っていないだろう。今日だけだ」

 レジで値札を外してもらい、試着室で着替えて店を出る。私の一歩前を歩くコハルを見る。確かに、今なら姉妹だと言われても納得する……かもしれない。

「あら? その調子だとミチルちゃんが帰ってきたらヤキモチを焼かれちゃうわよ」
「……そういうのじゃないぞ」



つづく

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました