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毎日ナナしゃん ~After Story~ (106)

※この記事は重大なネタバレを含みません




「もう三日も帰って来てないです……」

 テーブルに寝そべりながら、モエがそう呟く。
 ジンは念動力を使ってパスタ鍋を混ぜながら、顔だけ振り返って返事をした。
 
「ナナが心配かね」
「どうせしぇんぱいは一人でなんとかしますよ。モエは相手がいなくなって張り合いがないだけです」
「相手?」

 ジンが聞くと、モエはシュッシュッと両手を動かしてパンチングポーズを取る。
 
「ナナしぇんぱいとは、いつもエアボクシング大会とか笑ったら負けゲーム大会をしてるです」
「前者はともかく、後者はナナに勝のは難しいだろう」
「0勝17敗です……勝てる気がしないです」
「そんなところだろうね」

 ジンは茹で上がったパスタを湯切りし、皿に盛り付ける。申し訳程度のプチトマトを付け合わせにし、サプリメントと一緒にテーブルに運んだ。
 
「ジンしぇんぱい、フォークがないです」
「ああ、すまないね」

 ジンがパチンと指を鳴らすと、フォークが三本、どこからともなく飛んでくる。ジンとモエは、それらを一本ずつキャッチした。
 
 最後の一本は、もう一枚の皿の前に、ひとりでに着地した。
 
「ジンしぇんぱいは、ナナしぇんぱいのことが心配ですか?」

 モエは一口目のパスタをすすり終えてから、そう聞いた。
 ジンは無言でパスタを啜る。そうして一人前を食べ終えたところで、口元を拭いてからようやく、こう言った。
 
「ナナのことだ。どうせ一人で何とかするに違いないさ」
 
 
 


つづく

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました