ゾンビランドナナ #024
帰り際、柊ナナはコハルから一台のケータイ電話を受け取った。
スマホではなく、ここに来て所謂ガラケーである。
「金持ちというわけではないが、流石にスマホくらい持っているぞ?」
「いくら暗号化して通信しても、柊のスマホは監視されている可能性が高いわ。私との連絡にはそれを使って」
パカッと開く。懐かしい感触だ。時刻と日付、そして――壁紙には、何故か学生時代のミチルの写真が設定されていた。
「……」
「何よ、そんな目で見ないでくれる? 嬉しいでしょ?」
「まあ……」
ケータイをポケットにしまう。
また来るわ、と言ってコハルは店の前に置いてあったバイクにまたがり、エンジンをかけた。
コハルの後ろ姿を見送る。
また会うこともあるだろう。そう考えた時、柊ナナはひとつ、コハルに聞こうと思ってここに来て、すっかりと忘れていたことを思い出した。
妹のヒヨリはどうしているんだ、と。
ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました