ゾンビランドナナ #020

 どいつもこいつもナイフを持ち歩きすぎである。
 自分自身もカッターナイフをいくつか忍ばせていることを棚に上げ、柊ナナは憂慮していた。
 
「ふぁ......どなたか、いらっしゃってたんですか?」

 ビールの缶やら皿なんかを片付けていると、ミチルがリビングからひょっこりと顔を出した。
 
「ええ。起こしてしまいましたか?」
「大丈夫です。でも、ナナしゃんこそお疲れではありませんか?」

 そう言って、ミチルは柊ナナの背に抱きついた。
 柔らかくて、ひんやりと冷たくて、ほんのりと温かかった。
 
「たまには、ミチルちゃんも飲みますか?」
「やめておきます。ナナしゃんもあまりお酒強くないでしょう」
「私はもう飲みませんよ」
「本当ですか?」
「......お風呂入ってきます」
「残りの食器、洗っておきますね」

 脱衣所のドアを閉める。
 スマホを取り出すと、メールが一通届いていた。
 
『週末の夕方はどうかしら? ここの喫茶店で待っているわ』

 丁寧に地図が添付されている。
 メールアドレスを教えた覚えは無かったが――まあ、あのコハルならさほど不思議ではない。
 
 手早くシャワーを浴びて、ジャージに着替える。物音はしない。
 食器はシンクに散らばったまま。ミチルはまた、ソファで寝息を立てていた。

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました