ゾンビランドナナ #018

 ビールを一缶ずつ空け、それまで何を語でもなくコハルは台所に立った。
 
「食器とか......なんか色々勝手に借りるわね」
「ああ」

 包丁、まな板、フライパン、鍋。料理はしないが、一通りは揃っている。ミチルも食べるならと買いそろえてみたものの、そうでもないと知ってからはほぼほぼコンビニ弁当で済ませているためほぼ新品である。
 コハルは冷蔵庫にしまった食材を取り出す。ベーコン、プチトマト、スライスチーズ。適当な大きさにカットして、油を敷いたプライパンに次々と放り込む。
 
「料理は得意なのか?」
「ええ。柊よりはね」

 着火。暫く待つと、ベーコンなんかが焼ける音がする。その間、先月料金を払い忘れていたガスが止められていないことに柊ナナが安堵していたのは秘密である。
 良い香りがする。換気扇を回す。少し寒い。ボロアパートの日常である。
 ちらとリビングの方を見やる。ミチルが起きる様子はない。
 
「さあ、できたわよ」
「ああ........................なんだこれは」

 皿に盛られたのは......トマト......だった何かと黒い物体。泡立った液体がかかっている。
 ぐちゃあ、と頭の中で効果音が鳴った。

「さ、食べましょ」」
「......コハル、料理は得意なのか?」
「ええ。柊よりはね」

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました