見出し画像

毎日ナナしゃん ~After Story~ (124)

※この記事は重大なネタバレを含みません




「なるほど、事情は分かったわ」

 私の淹れた茶を啜りながら、コハルはそう言った。
 テーブルを囲むのは、私とコハルの二人だけ。キョウヤは何やら調べたいことがあると言ってどこかに行ってしまった。ヒヨリとモエは、少し離れたところで紙飛行機飛ばし大会をして遊んでいる。案外、仲が良さそうだ。……ひょっとするとヒヨリが気を遣ってモエに合わせているだけかも知れないが。
 
「やっぱり、驚かないんだな」
「ええ。さっき倉庫でも同じようなことを言ったけど――元から柊のことは少なからず怪しんでいたし、今更といった感じね。それで、橘ジンを助ける手段や作戦、それとも他に何か心当たりはあるのかしら?」
「ない」

 私が躊躇いもなくそう言うと、コハルは拍子抜けしたように溜息をついた。
 
「呆れた。殺人鬼の美少女の名も廃れたものね」
「別に名乗った覚えはないが。それよりも――」

 私はコピーしていた例の資料を差し出す。コハルはきょとんとしながら、それを受け取った。
 
「コハル、私は今から、お前の考えていることを言う」
「あら、お得意の“心を読む能力”かしら?」
「そういうことにしておいてくれ。――『なぜ、大した能力を持たない自分が、真っ先に起こされたのか』だろう?」
「……」
「その答えが、これだ。悔しいが、今の私では、鶴岡やナナオに勝てない。強力な能力者であろうと、ナナオの前では無効化されてしまう。だからコハル、お前の力が必要なんだ。ここで私と、作戦を練ってくれ。そういうのは得意だろう?」

 コハルは受け取った資料をぺらぺらとめくる。一通り目を通した後目の前に置き、茶を飲み干し、不敵に笑みを浮かべながら、言った。

「素敵ね」



つづく

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました