ゾンビランドナナ #015

「そう言えば、バイクはどこに置いてきたんだ?」
「近くのコインパーキングに」
「案外律儀なんだな」
「高い買い物だったのよ」

 最初見たとき、見覚えがある、いや警戒心からかひどく自分とはかけ離れた人間のように感じたが、こうして隣に並ぶと、短く揃えた暗めも髪といい容姿と言い、なかなか様になっている。似合っている、と言っても差し支えないだろう。
 
「今はミチルちゃんと二人で暮らしているのよね?」
「ああ......と言うか」

 なんであんなまどろっこしい演出をしたんだ。
 持っていたのがカッターナイフじゃなかったら、何かの拍子に刺していた可能性だってあるのだ。
 
「でも、こういうのも素敵でしょう?」

 ......と、柊ナナが言うことを見越したのか、遮るようにしてコハルが言った。
 その得意気な顔は少し癪に思えたが、その懐かしい顔にほんの少しのセンチメンタルを感じ、口をつぐんだ。
 
「ここだ」
「知ってるわよ」

 階段を上る。
 一歩先に部屋の前に差し掛かったコハルを、柊ナナは手を伸ばして制した。
 
「床に塗料を塗っている。あまり踏まないように気をつけろ」
「柊が昔と変わってなくて安心したわ」

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました